二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第百四十一話 夏至の花絵「ブルースター」

2026.06.21

life


6月21日から二十四節気は「夏至(げし)」に

一年のうちで昼の時間が最も長くなるのが、夏至です。
二十四節気の中では、一年に四つある「二至二分*」の節気のひとつであり、季節を分ける重要な節気とされています。

夏至は日本に限らず、世界各地でも太陽の力が最も強まる特別な日とされ、とりわけ北欧では盛大な祭りが行われます。
とはいえ日本では、ちょうど梅雨の時季に重なるため、眩しい夏空というよりも、夕方の光の長さに季節の移ろいを感じる頃でもあります。
盛夏へ向かう途中にある、静かな季節の境目です。

*二至二分:春分・夏至・秋分・冬至を指す


夏至の季節感

■ 夏越の祓
毎年6月30日に各地の神社で行われるのが、「夏越の祓(なごしのはらえ)」です。
一年の折り返しにあたるこの日に、神社の境内に設けられた茅(ちがや)で編んだ輪を、左・右・左と八の字を描くようにくぐり、本殿に参拝します。

また、人の形をした紙「人形(ひとがた)」に自分や家族の名前を書き、体をなでて息を吹きかけることで穢れを移し、それを神社に納めます。
前述の夏至祭とは趣の異なる、日本ならではの季節の節目の風習です。

■ 水無月
「水が無い月」と書くため真夏の渇水を思わせますが、実際には田に水を引く時季であることから、「水の月」が転じたとする説が広く知られています。

旧暦の六月は現在よりやや季節が遅く、田植えを終えた田には水が満ちていました。
雨に潤う景色とも重なり、「水無月」という名には日本の農耕文化と結びついた季節感が映し出されています。

また、六月晦日の「夏越の祓」の頃に食べられる和菓子にも「水無月」の名があります。
外郎(ういろう)生地の上に小豆をのせ、三角形に切り分けた京都の伝統菓子で、宮中で暑気払いとして食べられていた氷を模したともいわれています。

小豆には邪気を祓う意味があるとされ、半年の無病息災を願って口にする、六月ならではの歳時菓子です。

■ 雑節・半夏生
夏至からおよそ十一日後には、二十四節気には含まれない雑節(ざつせつ)「半夏生(はんげしょう)」を迎えます。
かつては田植えを終える目安とされ、この日を過ぎると農作業を一区切りとする地域もありました。

関西では、稲の根がしっかり張るよう願いを込めて、タコを食べる風習も知られています。
季節の節目を食とともに迎える、日本らしい習わしのひとつです。

夏至は、梅雨の水気に包まれる水無月の頃であり、同時に「ジューンブライド」という祝福のイメージをあわせ持つ季節でもあります。
しっとりとした雨の気配と、光に満ちた未来への願い――その両方をやさしく結ぶ色として思い浮かぶのが、透明感のある水色です。
今回の花絵では、そんな季節の重なりを映す存在として、幸せを告げる花「ブルースター」を選びました。


「幸せを告げる花」 ─ ブルースター

□出回り時期:通年
□香り:なし
□学名:Oxypetalum coeruleum
□分類:キョウチクトウ科 ルリトウワタ属(旧トゥイーディア属)
□別名:瑠璃唐綿(るりとうわた)、オキシペタラム
□英名:Southern star、Tweedia
□原産地:ブラジル、ウルグアイ

淡い水色の花が星のような形に開くブルースター。
日本ではその名で広く親しまれていますが、英語圏では属名に由来する「Tweedia(トゥイーディア)」と呼ばれることが一般的です。

自然界において水色の花は多くはなく、ブルースターの染色ではない本来のやわらかな青は、ひときわ印象的な存在です。
その色合いには幅があり、淡い青からやや紫みを帯びた青まで、品種によって表情が異なります。

■ 名前の由来
「ブルースター」という名は、美しい青色と星形の花姿に由来しています。
和名の「瑠璃唐綿」は、瑠璃色の花と、近縁種である唐綿に似た実をつけることにちなみます。
また、学名の Oxypetalum(オキシペタラム)は、ギリシア語に由来し、「鋭い花弁」を意味するとされ、花の繊細な造形を表しています。

■ 文化史
ブルースターが日本で広く流通し始めたのは比較的新しく、切り花として親しまれるようになったのは昭和後期以降とされています。
欧米では「幸福な愛」「信じ合う心」を象徴する花とされ、花嫁が青いものを身につけると幸せになれるという「Something Blue」の風習とも結びつき、ウェディングブーケなどに用いられることの多い花です。

日本でもブライダル需要の高まりとともに普及し、現在では水色の花を代表する存在として定着しています。


花毎の花ことば・ブルースター「静かな祝福」

やわらかな水色の花が、星のように咲くブルースター。
咲き始めの淡い青は、時を重ねるにつれて少しずつ深みを増し、その表情を静かに変えていきます。
その姿は、誰かの幸せを高らかに祝うのではなく、穏やかに見守るまなざしにも似ています。

目立たなくても、変わらずそこにいてくれること。
その静かな優しさは、深い安心感をもたらしてくれるようでもあります。

ブルースターにはそんな佇まいを表した「静かな祝福」という花ことばを添えました。


花毎でご紹介しているブルースターのお話
・第五十五話 小雪の花あしらい「オキシペタラム」


文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など

「銅版画で愉しむ 二十四節気の花ことば 英訳付き」

『二十四節気の花絵』が書籍になりました。
これまでの連載の中から、二十四節気にまつわるお話と、それぞれの節気に合わせて選りすぐった3つの花絵を収録。合計72の花絵と花ことばを、一冊にまとめました。
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