第三十九話 立秋の花あしらい「サンキライ」
2024.08.07
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のデザイナー、志村紀子がご紹介いたします。
2024年8月7日から二十四節気は立秋に
秋のはじまりを表す節気が立秋です。実際の季節感は真夏ですが、暦の上ではここからが秋。少しずつ秋の気配が深まっていくことへのサインともいえる区切りの節気です。
今回は生薬などにも使われてきた、「サンキライ」がテーマ。サンキライはツル性の実もので、5月から10月ごろまでは緑~黄色の実、クリスマスが近づいてくると、落葉して真っ赤な実を付けたものが出回ります。
ここでは、この季節ならではの緑の実と葉が付いたサンキライを使った、花あしらいをご紹介します。
シルエットを活かす
カクカクと曲がりながら伸びたツルと、放射状についた可愛らしい実がサンキライの魅力。さらに、夏前後の枝にはスイカのような丸い葉が付いていて、ボリューム感も満点です。
この美しいシルエットを活かすために、高さのある花器に一枝をあしらいました。
枝葉がテーブルにこぼれ落ちるように生けると、ダイナミックな雰囲気が出ますし、全体も安定します。
サンキライの枝ぶりをよく見て、自然に流れる方向に生けるとうまくいきます。
シルエットの違うサンキライを、足付きの花器にあしらってみました。同じサンキライでも枝の付き方はさまざまなので、雰囲気が違って見えるかと思います。
こちらの花器では、水を少な目にして、花器の中の実も含めて楽しめるような生け方をしました。
黄緑色の「ジニア」を加えてみました。花が主役というよりも、サンキライも花も一体化するようなイメージです。
サンキライが動いてしまうようであれば、この写真のように麻ひもなどを使って、花器に結び付けてしまいましょう。
ジニアを深い紫が美しい「ルリタマアザミ」に変えると、さまざまな丸い形が響きあって、楽し気な雰囲気に。
組み合わせる花を選ぶときには、色に目が行きがちですが、植物の形を意識して選んでみると思いがけない魅力に気づくことがあります。
ユニークな花留め
生花材料として販売している「姫リンゴ」をガラス花器の中に入れて花留めにしました。
見た目より手順は簡単で、水を入れた小さな瓶を入れて、そこにサンキライの枝を挿すだけです。ここでは黄緑色の姫リンゴを使いましたが、クリスマスのシーズンなどであれば、赤い姫リンゴと赤く色づいたサンキライを組み合わせるのも素敵です。
もちろん、こうした方法はサンキライ以外にも使えますので、お好みの花を使ってお試しください。
花の引き立て役に
一輪挿しに生けた花をトレイに集めて、サンキライを足元に置きました。ツル性なのでクルクルと簡単にまとまって、足元を隠すのにもぴったりです。
こうしてセットにしてみると、大きなアレンジメントのように見える効果も。花の本数は少なくても、とても豪華に見える花あしらいです。
意外な花とあわせてみる
サンキライのような実ものとバスケットは好相性ですが、そこに「カスミソウ」を組み合わせてみたら、意外なほどよく似合いました。
カスミソウを使う場合はサンキライと混ぜるよりも、カスミソウだけで束にしてあしらった方がお洒落に見えます。ちなみに、バスケットの中に入れる器は空きびんやバケツなどでもOK。バスケットからはみ出さないものを選びましょう。
小さな一輪を集めて飾る
チーズなどを保存する器にサンキライを閉じ込めてみました。比較的丈夫なサンキライならではのあしらい方です。こうしてガラスの中に閉じ込めると、サンキライの造形的な美しさを色々な方向から楽しむことができます。数時間であれば葉がしおれずに楽しめるかと思いますが、気温が高い場所ではいっきに蒸れてしまいますので、ぜひ涼しい場所でお試しください。
リースにおすすめ
サンキライの特性が活かせる、いちばん簡単な飾り方がリースです。くるっと丸めてフックに掛けるだけで完成!ラフな形が魅力なので、あまり形を整えすぎない方が素敵です。
そのまま掛けておけば自然にドライに変化していきますので、長く楽しめるのもうれしいポイントです。
フルーツと一緒に楽しむ
たくさんフルーツがあるときに、ぜひ試していただきたい花あしらいです。
生花材料として売られている「ミニ洋ナシ」がたくさんありましたので、ガラスのボウルに入れて、小分けにしたサンキライの実やブラックベリーの実、ルリタマアザミなどを飾りました。サンキライの実がフルーツを引き立てて、とても華やか。フルーツがまるで花のように楽しめます。
「サンキライ」の基本情報
□出回り時期:5月~10月 (緑~黄色の実付き)
□学名:Smilax glabra(Smilax china)
□分類:ユリ科(サルトリイバラ科) シオデ属
□和名:山帰来(サンキライ) 猿捕茨(サルトリイバラ)
□原産地:日本、朝鮮半島、中国、台湾など
志村紀子
東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。
Text・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
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