二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第六十二話 芒種の花あしらい「紫陽花」

2026.06.06

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを、第一園芸のトップデザイナー・新井光史がご紹介します。


2026年6月6日から二十四節気は穀雨に

芒種(ぼうしゅ)は、稲や麦などの穀物を育てるための作業が本格化する頃を表す二十四節気です。田んぼに水が張られ、田植えが始まる地域も多く、本格的な夏を前に自然の営みがひときわ活発になる季節です。

この時季の名である「芒種」には、実りへ向かう自然の営みが映し出されています。「芒(のぎ)」とは、稲や麦の穂先から伸びる針のような部分を指し、芒を持つ穀物の種をまく頃に由来するとされ、日本では農作業の大切な節目として受け継がれてきました。

空気には少しずつ湿り気が増し、草木はたっぷりと水を蓄えていきます。そんな芒種のころ、雨の季節を彩る花として親しまれているのが紫陽花(あじさい)です。
今回は、さまざまな紫陽花と、その魅力を引き立てる草花をあわせた花あしらいをご紹介します。

色と姿の魅力を楽しむ

紫陽花はひと枝でも存在感のある花木ですが、ここでは一枝をごく小さな花器に生けました。
あえて花器を小さくすることで、一枝の紫陽花が際立ちます。このとき、大きな葉は取り除くとすっきりと見える上、葉からの蒸散も防ぐことができます。

なお、紫陽花は水をよく吸いますので、花器が小さい場合はこまめに水分量を確認しましょう。

色とりどりの紫陽花を、ひとつの花器にまとめてあしらいました。

梅雨の風景を思わせるようにブルーの色水に挿していますが、もちろん無色の水でも。
一枝の紫陽花も美しいものですが、色柄が豊富な紫陽花を組みあわせて飾るのも、この時季ならではの贅沢な楽しみ方です。

さまざまな草花をあわせて

花が大きな紫陽花は一枝でも印象的ですが、実はさまざまな草花と好相性です。
ここでは、それぞれの紫陽花の雰囲気にあわせた花あしらいをご紹介します。

こちらは、八重咲きの水色の紫陽花に、「白いスプレーバラ」と「ベアグラス」を添えました。シノワズリー風のブルーと白の花器にあしらって、梅雨の気配をイメージした仕上がりに。

組みあわせる花材を選ぶ際は、花の大小のコントラストを付けるとバランスのよい花あしらいになります。

深い紫色の紫陽花には、同系色の「クレマチス」と「木苺」をあわせました。フラスコ型の花器に、縦のラインを活かして上へ伸びるような印象にあしらっています。

紫陽花の深みのある色とボリューム感が、華奢なクレマチスと瑞々しい木苺を受け止め、それぞれの魅力を引き立て合います。

同じ花器を使って、今度は横へと伸びるイメージにあしらいました。
使用した花材は2種の紫陽花とクレマチス、そして「姫リョウブ(コバノズイナ)」です。

自然に伸びた枝の形を活かし、足元の紫陽花と間をつなぐクレマチスで全体のバランスを取りながら、景色をつくるように生けます。
大胆に植物をあしらって、瑞々しい姿を楽しんでみてください。

紫陽花を豪華に

ここからは、紫陽花と同じ時季に見ごろを迎える「スモークツリー」と複数の花器を使って、さまざまに変化を楽しむ花あしらいをご紹介します。

まずは、紫陽花と白、ピンクのスモークツリーだけで幻想的な雰囲気に。
紫陽花もスモークツリーも1本にいくつもの枝が付いていますので、小分けにすると飾りやすく、なおかつボリューム感も活かせます。

さらに、白いスモークツリーを加え、先ほど使用した姫リョウブも添えました。
全体が霧に包まれたような、奥行きのある景色が生まれます。

最後は「フトイ」を加えて、よりドラマティックに。
雨雲のかかった紫陽花の咲く庭に、雨が降り注ぐ──。そんな梅雨ならではの景色を表現した花あしらいです。

「紫陽花」の基本情報

□出回り時期:通年(最盛期は 6 月~9 月上旬)
□香り:なし
□学名:Hydrangea macrophylla
□分類:アジサイ科 アジサイ属
□英名:Hydrangea
□原産地:日本 など
□花ことば:家族、団らん など

※今回、アジサイの「花」と呼んでいる部分は、ガクが変化した「装飾花」を指します。本来の花は装飾花の中心にある「真花」です。蕾は粒状で、開花するとごく小さな花を咲かせます。装飾花に比べて目立ちませんが、紫陽花ならではの繊細な魅力のひとつです。


花毎でご紹介している紫陽花のお話
・二十四節気の花絵 第五十七話 芒種の花絵「額紫陽花」
・二十四節気の花あしらい 第十三話 芒種の花あしらい「アジサイ」 


新井光史

神戸生まれ。花の生産者としてブラジルへ移住。その後、サンパウロの花屋で働いた経験から、花で表現することの喜びに目覚める。 2008年ジャパンカップ・フラワーデザイン競技会にて優勝、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝く。2020年Flower Art Awardに保屋松千亜紀(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得、フランス「アート・フローラル国際コンクール」日本代表となる。2022年FLOWERARTIST EXTENSIONで村上功悦(第一園芸)とペアで出場しグランプリ獲得。2025年3月に行われたFlower Art Award2025でも川口太聞(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得した。 コンペティションのみならず、ウェディングやパーティ装飾、オーダーメイドアレンジメントのご依頼や各種イベントに招致される機会も多く、国内外におけるデモンストレーションやワークショップなど、日本を代表するフラワーデザイナーの一人として、幅広く活動している。 著書に『The Eternal Flower』(StichtingKunstboek)、『花の辞典』『花の本』(雷鳥社)『季節の言葉を表現するフラワーデザイン』(誠文堂新光社)などがある。

Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子