二十四節気の花絵

イラストレーターの
水上多摩江さんが花毎のために描いた、
二十四節気の花々です。

第五十七話 芒種の花絵「額紫陽花」

2020.06.05

life


2020年6月5日から二十四節気は「芒種(ぼうしゅ)」に

立夏から大暑まで6つある夏の節気、3番目にあたる芒種は気象を表した立夏や夏至といった節気と比べると、認知度の低い節気かもしれません。

芒種の「芒」とは「のぎ」とも読み、稲や麦などの穂が出る植物のことで、これらの種を蒔く季節を表したのが芒種となります。
この芒種のように農作業に由来する節気と、立夏や夏至のように天文現象に由来する節気が二十四の節気の輪の中に絶妙に配置されているのは、古(いにしえ)の人々が日々を細やかに感じ取り、記録してきたことの積み重ねであるとも言えます。

「額紫陽花(ガクアジサイ)」

水上さんの描いた額紫陽花は、夜雨が降る暗闇の中で花がパーティーをしているような、不思議な魅力がある作品です。
斜めの点線で表現された雨には、湿り気を帯びた梅雨の夜の肌寒さが伝わってくるようです。

このアジサイは日本原産の花木で、大きく分けて「ガクアジサイ」「西洋アジサイ(ハイドランジア)」「ヤマアジサイ」の3つの系統があります。
なぜ”額”アジサイと呼ばれるのかと言えば、小さな粒状のつぼみが本来の花で(開花すると星のような花に)その周りを「装飾花」とよばれる「がく」が囲むことに由来するから。
一見すると球のように装飾花を付ける西洋アジサイよりも地味に見えますが、実はこのガクアジサイが原種であり、西洋で改良が重ねられたのが現在よく見かける、西洋アジサイなのです。


花毎の花言葉・額紫陽花〈夜空を旅する〉

紫陽花の花言葉は色が変化することから「移り気」などと言われますが、曇り空の下でも色鮮やかに花を咲かせる姿を思うと、とても残念な花言葉ではないかと思います。
水上さんの作品もよく見ると小さな星が描かれているように、ガクアジサイの花はつぼみの時は小さな粒ですが、開花すると星のような形の花を咲かせます。
その花を惑星のような装飾花が囲んで、銀河系を思わせる姿に見えることから〈夜空を旅する〉という言葉を添えました。

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 琵琶湖の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など