花の旅人

各地のガーデンや知る人ぞ知る花の名所で
思いがけない花との出会いを楽しむ、花の旅のガイド。

〈北海道ガーデン街道 vol.3 初夏編〉第一話 森林浴とお菓子を楽しむ「六花の森」

2019.06.12

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「花を探しに」三度目の北海道は十勝地方と札幌周辺のガーデンを巡ってきました。

到着した日は厚い曇に覆われた空から雨が降り始めて、あいにくのお天気に。
空港から真っ先に向かったのは2018年の初夏にも訪ねた「六花の森」です。

6月初旬のガーデンは、ゴールデンウィーク近くの一回目の花のピークシーズンが過ぎ、降り出した雨が相まって、しっとりと落ち着いた雰囲気の森が広がっていました。

雨の中の散策はためらいがちですが、一歩森の中へ歩き出してみれば水を含んだ植物がいきいきと輝きだし、まさに森林浴といった気分に。これこそ雨天ならではの楽しみです。
多くのガーデナーさんも雨のガーデンが好き、とおっしゃることがやっとわかった気が。

ウッドチップが敷き詰められた歩道は、雨の中でもぬかるむこともなく、足へのあたりが柔らかくてとても歩きやすい道です。

初夏の山野草

もともとは川原だった敷地の中には森の中心部を囲むように美しいせせらぎが流れています。この時季の川べりには〈九輪草〉が見ごろに。

※九輪草(クリンソウ):日本原産のサクラソウ科サクラソウ属の多年草。北海道、本州、四国の山間地の湿地などに時に群生する。開花期は4月から6月。

花の開花期の谷間とはいえ、何かしらその時季にしか出会うことができない花が咲いている……そんな植物こそが、心に残り続けるのかもしれません。
6月初旬に咲いていた花をご紹介します。

「浜風露(ハマフウロ)」
その名のとおり、海岸の砂地や草地に生える多年草。エゾフウロの変種とされ、花びらの付け根が重なっています。開花期は6月から9月。

「蝦夷萱草(エゾカンゾウ)」
学名では「禅庭花(ゼンテイカ)」、一般的には日光黄萓(ニッコウキスゲ)とよばれる花。
朝に咲き、夕方にはしぼむ一日花です。開花期は5月から6月。
よく似た花に「エゾキスゲ」がありますが、こちらは夕方に花が開き、翌日の昼過ぎにはしぼんでしまいます。

「白根葵(シラネアオイ)」
前回訪ねた時には見る事ができなかった、十勝六花のひとつ「白根葵」が一輪だけ、かろうじて咲いていてくれました。
白根葵はキンポウゲ科の植物で、日光の白根山に多く見られ、花の姿がタチアオイに似ていることからこの名が付いたとされています。開花期は5月から6月。

「紅花山芍薬(ベニバナヤマシャクヤク)」
明日にでも開きそうな蕾を発見。この花は日本全土に分布しているものの、とても限られた山地や森の中に自生するので、あまり目にすることのできない多年生の野草です。

「紅花一薬草(ベニバナイチヤクソウ)」
その名の通り傷や虫刺されに効くとされる植物です。日本では北海道、本州中部地方以北に分布。秋には紅葉も。開花期は4月から6月。

「鈴蘭(スズラン)」
坂本直行記念館近くには鈴蘭の群生地があります。例年の見ごろは6月上旬とのことですが、今年は5月に猛暑日があったせいか、見ごろのピークは過ぎていましたが、それでも数輪こうして花が残っていてくれました。

森の中にはクロアチアの民家を移築した、素朴な7つの小さな家が点在しています。それぞれが小さな作品館になっていて、こちらの建物は六花亭の代名詞でもある、坂本直行氏が描いた花柄の包装紙の元になった作品を展示している「花柄包装紙館」。

中に入るとなんと壁一面が包装紙柄に!描いた花を切り取ってレイアウトした、制作過程のレプリカも展示されています。

森を抜けるといっきに視界が開け、美しい芝に覆われた丘が現れます。
丘の上にはロダンの〈考える人〉をモチーフにした彫刻作品が。

丘の上からはもうすぐ花開こうと、力を蓄えている十勝六花のひとつ〈ハマナシ〉の群れが望めます。

その茎を間近で見てみれば、隙間なくびっしりと生えたバラ科ならではの鋭いトゲが。原種ならではのたくましさを感じます。
開花したハマナシについてはこちらからご覧いただけます。

ここだけの味

ガーデンを一周した後は、お待ちかねのおやつタイム!
実はこの場所は六花亭を代表するお菓子「マルセイバターサンド」の工場が隣接していて、出来立て、クリームを挟んだばかりのマルセイバターサンドがいただけるのです。

こちらでしかいただくことができない、出来立てのデザートを集めたのが「六’café(ロッカフェ)」。
マルセイバターサンド以外にも、ヨーグルト(前回もいただいています!)やケーキなどがズラリと並び、セルフスタイルでお菓子を選ぶことができます。
森を眺めながら、とびきり美味しいお菓子をいただくひと時は、六花の森ならではの楽しみのひとつ。
さらにこちらのカフェが素晴らしいのは、その清潔さ。
窓ガラス、床、そして食器やカトラリーまで、全てがピカピカなのです。
そういえば、いままで歩いてきた森の中でも、傷んで見えるものが目に入らなかった……
自然を最大限いかしつつ、至る所に気が配られているのは森もお菓子も同じ。
六花亭のスピリッツを改めて感じながら、この場所を後にしました。


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〈北海道ガーデン街道 vol.1〉第二話 六花亭の包装紙に描かれた山野草の森「六花の森」

六花の森

北海道河西郡中札内村常盤西3線 249-6

http://www.rokkatei.co.jp/facilities/
冬季休業期間があります。営業時間、入館料などの詳細につきましては六花亭の施設案内をご覧ください。