第二十六話 大暑の花あしらい「モカラ」
2023.07.23
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。
2023年7月23日から二十四節気は大暑に
大暑(たいしょ)とは、一年でいちばん暑さが厳しく感じられる頃。今年は梅雨時期から強烈な暑さでしたが、日差しの強さや気温の高さ、セミの声から本格的な夏がやってきたのだなとひしひしと感じます。
こんな暑い中でも、街路樹や花壇の花は強くたくましく生きている。そんな姿を見て、植物って本当にすごいなと、しみじみ涼しい部屋で感じる私です。
今回はトロピカルフラワーを代表する「モカラ」をいけてみようと思います。
お手入れも楽で暑さに強い上に、この季節にぴったりのビビットな色合いのモカラ。真夏の生活に取り入れてカラフルな彩りをプラスしましょう。
リゾートのような解放感。水の清涼感も楽しむ
見ているだけでバカンス気分になるカラフルな蘭の一種、モカラ。
カラッとした暑さより、少し湿度のある暑さが似合う気がします。
一年中出回っているモカラですが、暑いこの時期でもお手入れも楽で、日持ちも抜群なのでおすすめです。
モカラは品種も多く出回っていますので、お気に入りの色や形を探すのも楽しいですよ。
今回は本格的な夏を表現するため、ブーゲンビリアのような紫がかったピンク色の品種「ロビン」を選んでみました。
モカラは房状にたくさん花がついているので、水に浸かってしまう部分の花はあらかじめカットします。
取り除いた花も捨てないで!後ほど楽しみ方を紹介しますね。
水の清涼感を感じたくて、観葉植物でもおなじみの「クッカバラ」を水に沈めて、透明感や涼しさを強調しました。
クッカバラを沈めた花瓶にモカラを少し傾けていけましょう。水と緑、そしてピンクのコントラストを楽しみたいのでモカラはあえてまとめています。
全体に小さな花がたくさんついているモカラですが、よく見るときれいに花が見える角度があります。花をくるくるまわしてきれいに見える場所を探してみましょう。
器をかえて変化を楽しむ
クッカバラを沈めてばかりでは息ができずかわいそうなので、器かえて楽しみましょう。
空や海のような水色の陶器やカラフルな色ガラスに入れて変化を楽しみましょう。
印象がかなり変わりましたよね。
涼し気なシダの仲間「アンブレラファーン」がモカラを引き立ています。
水替えのたびに器をかえて、花と器がみせる調和やコントラストを楽しみましょう。
夏らしくビビットに、カラフルにあしらう
シンプルに楽しんだ後は、色を足してより季節感を感じる花あしらいに。
南国の鳥のようなイメージで、カラフルでエネルギッシュな花をプラスしました。
モカラに加えたのはトロピカルフラワーと呼ばれる植物たち。
上の写真で加えたのは、名前の通り針山のように伸びた”めしべ”が特徴的なオレンジ色の「ピンクッション」と、パイナップルの仲間でよく見ると果実の上のクラウンと呼ばれるところにそっくりな黄色の「グズマニア」。そして鳥の飾り羽のようにとがった赤と緑の葉「ドラセナ コンシンネ レインボー」。
こちらの写真はさらにカラフルに、賑やかに。
植物はお好みのもので大丈夫ですが、ポイントは植物が持つイメージやトーン、質感(今回は南国っぽいイメージ、つるつるしたプラスチックのようなテクスチャー)を統一させること。そのイメージがあればたくさんの色を使っても、ごちゃつかずスタイリッシュに仕上がると思います。
いける順番は、まずモカラ、その反対側にグズマニアをいけてベースを作り、間にピンクッション、後ろにドラセナをいけます。最後に繊細で柔らかい「アスチルベ」と「アンブレラファーン」を添えて形を整えましょう。
あまり考えすぎず、カラフルな絵の具で絵を描くように楽しみながらいけてみましょう。
今回使った花は少し重さもあるので、繊細な花は最後に加えて重さでつぶされないように。
一つひとつの花の顔がよく見えるようにチェックしたら出来上がりです。
バスケットには観葉植物をそえて
ハンドルつきのバスケットにコップに入れたモカラと鉢植えのポトスを入れてバスケットセットに。
熱帯地方が原産のものが多い観葉植物とモカラの相性は抜群です。
お手持ちの観葉植物でもぜひお試しくださいね。
器を重ねて少しだけ特別感を
器を3Dに重ねた、少しだけスペシャルなデコレーション。
器を横に並べることはあるけれど、縦方向に並べることはあまりしませんよね。
花瓶でなくても大丈夫。底が平らなグラスなどでもぜひお試しくださいね。
このいけかたであればモカラ2本でもこのぐらいのボリュームに。
折れてしまった「アンブレラファーン」と、蘭の仲間「オンシジューム エンシクリア」も加え、トレーに載せておめかしさせてみました。
モカラはとても丈夫なので、半日ほどでしたら水につけなくてもきれいな花を楽しむことができます。
トレーに花をちらして、高級リゾートホテルのディスプレイのような花あしらいを楽しんでみましょう。
お子様やペットが触れないような場所でぜひ試してほしい、少しだけ特別感を感じる花あしらいです。
水中花で楽しむ
モカラは下から順に咲き進むため、下から徐々に枯れてきます。
そこで、上に残った数輪で楽しむ水中花はいかがですか?
お手入れで取り除いた花でももちろん楽しむことができます。
花を沈めた水は濁りやすいので、毎日新鮮な水に取り換えて透明感を楽しみましょう。
最後まで花を楽しむ
最後に残った2輪をガラスのデザートボールに浮かべ、お皿にアンブレラファーンを敷いて重ねたさりげない花あしらいです。
シンプルだけど涼しげでとても存在感がありますよね。
リゾートでのワーケーションは難しくても、テレワーク中のデスクにさりげなく置いておけば、気分がバケーション!になるかもしれません。
長持ちするモカラを最後まで楽しみつくしましょう。
「モカラ」の基本情報
□出回り時期:通年
□香り:なし
□学名:Mokara
□分類:ラン科モカラ属
□和名:モカラ
□英名:Mokara
□原産地:なし(人工交配した育成種)
□花言葉:「優美」「気品」 など
花毎でご紹介しているモカラのお話
モカラの品種や基本情報
旬花百科 第十九話 「モカラ」
谷中直子
第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。
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