二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第五十話 夏至の花あしらい「クレマチス」

2025.06.21

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のトップデザイナー、新井光史がご紹介いたします。


2025年6月21日から二十四節気は夏至に

一年で最も昼の時間が長くなる日が夏至です。この日を境に昼は徐々に短くなり、半年後の冬至に向かう、自然の折り返し地点でもあります。
日本では梅雨の時季と重なるので、昼が長い実感は薄いかもしれません。

今回のテーマ「クレマチス」は、つる性植物の女王と呼ばれるほど多彩で美しい花を咲かせる植物です。和名では「鉄線(てっせん)」と呼ばれ、夏の季語としても親しまれています。
重く湿った季節に、一服の清涼剤のような、涼やかなクレマチスの花あしらいをご紹介します。

ユニークな姿を楽しむ

和名「鉄線」の名の通りの細い茎を水差しの細い口に挿しました。クレマチスは切り花でも出回りますが、品種は鉢植えの方が豊富です。
ここでは『こゆき』という品種の鉢植えをカットして使用しました。あちこちに伸びる枝ぶりをそのまま活かして、自然な美しさを楽しみましょう。

相性抜群のトクサとあわせる

純白の花が印象的な『白雪姫』を染付の器に生けました。クレマチスは茎が非常に細く、生けた際に動きやすいので位置が定まりにくいことがあります。
そこで今回は、花器の口にストロー状の『トクサ(砥草)』を詰めて花留めに活用しました。

次の花あしらいでもご紹介しますが、茎に対して口径が大きい器に生ける場合、トクサは素敵なアクセントにもなる、優秀な花留め花材です。

庭の景色を切り取ったような、自然味ある花あしらいです。
左側では、ガラス花器にトクサをぎっしり詰めて、そこに這うように八重咲のクレマチス『ジョセフィーヌ』を生けました。
右側はトクサの量を減らし、花を低く生けて左右非対称の構成に。こちらは器の口径にぴったり合わせて切ったトクサを花留めとして用いています。

ここでは4本のトクサを使用していますが、花が留まれば2本でも問題ありません。自由な発想で花留めに工夫を凝らすと花あしらいの楽しさがぐっと広がります。

クレマチスとトクサは相性抜群の組み合わせです。こちらではクレマチスのしなやかな曲線と、トクサの凛とした直線を活かし、彫刻的な印象の花あしらいに仕上げました。
お手持ちの器に合わせてトクサを曲げれば、唯一無二のデザインが生まれます。

トクサは、茎の内部にワイヤーを通すことで、自在に形を変えることができます。空洞の茎にワイヤーを差し込み(1)、ゆっくりと曲げていくことで(2・3)、シャープなライン(4)を出すことができます。

水を活かす

ガラスの水盤を使って、涼やかな花あしらいに挑戦してみましょう。
水盤の直径に合わせて切ったトクサを見せる花留めにして『こゆき』を生けました。上から見たときの美しさを意識するのがコツです。

先ほどの花あしらいに、淡いグリーンが印象的な八重咲のクレマチス『千の風』を浮かべました。白とグリーンの涼やかな花あしらいです。

さらに紫の『こゆき』を足すと、雰囲気がガラリと変わります。

『ジョセフィーヌ』を加えて、より一層華やかに。鉢植えで育てていると、この時季、次々と花が咲きますので、お手入れで切り取った花も水を張った器に浮かべれば、華やかな花あしらいとして楽しめます。

「クレマチス」の基本情報

□出回り時期(切り花):通年
□開花時期:品種によって異なる(代表的な品種の最盛期は5月~6月が多い)
□香り:品種によって異なる
□学名:Clematis
□分類:キンポウゲ科センニンソウ属(クレマチス属)
□和名:鉄仙/鉄線(てっせん)、風車
□英名:Clematis
□原産地:北半球の各地
□花言葉:「旅人の喜び」「精神の美しさ」「高潔」など


花毎でご紹介しているクレマチスのお話
第九十三話 夏至の花絵「クレマチス」
第三十七話 芒種の花あしらい「クレマチス」


新井光史

神戸生まれ。花の生産者としてブラジルへ移住。その後、サンパウロの花屋で働いた経験から、花で表現することの喜びに目覚める。 2008年ジャパンカップ・フラワーデザイン競技会にて優勝、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝く。2020年Flower Art Awardに保屋松千亜紀(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得、フランス「アート・フローラル国際コンクール」日本代表となる。2022年FLOWERARTIST EXTENSIONで村上功悦(第一園芸)とペアで出場しグランプリ獲得。2025年3月に行われたFlower Art Award2025でも川口太聞(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得した。 コンペティションのみならず、ウェディングやパーティ装飾、オーダーメイドアレンジメントのご依頼や各種イベントに招致される機会も多く、国内外におけるデモンストレーションやワークショップなど、日本を代表するフラワーデザイナーの一人として、幅広く活動している。 著書に『The Eternal Flower』(StichtingKunstboek)、『花の辞典』『花の本』(雷鳥社)『季節の言葉を表現するフラワーデザイン』(誠文堂新光社)などがある。

Text・Photo:第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子