第六十話 穀雨の花あしらい「スカビオサ」
2026.04.20
暮life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを、第一園芸のトップデザイナー・新井光史がご紹介します。
2026年4月20日から二十四節気は穀雨に
穀物を潤す雨、という意味を持つ節気が「穀雨(こくう)」です。
穀雨は春最後の節気でもあり、暦の上では春と初夏をつなぐような季節とされています。
初夏の手前、一年でもっとも過ごしやすい時季によく似合うのが、軽やかな色合いと繊細な姿が印象的な「スカビオサ」。
切り花として一年を通して出回りますが、春と秋が最盛期です。花弁の大小や色など、バリエーションが豊富な花として親しまれています。
今回は、このスカビオサの魅力を引き出す花あしらいをご紹介します。

繊細な姿を活かす
スカビオサのすらりとした姿を活かした花あしらいです。
柔らかな花を支える繊細な茎も、この花の見どころのひとつ。この花あしらいでは一輪の花のように見えますが、実は3本のスカビオサを編むようにして、一輪の花のように生けています。

赤いスカビオサに「ゼンマイ」を組み合わせました。
ユニークなシルエットのゼンマイの深い茶色の茎が、スカビオサの複雑な赤い花色を引き立てます。

紫のスカビオサに「麦」や、マメ科の「コロニラ」を組み合わせた、穀雨の季節にぴったりな花あしらいです。
スカビオサは草ものとの相性も抜群。花色によって印象が大きく変わるので、組み合わせを変えて楽しんでみてください。

スカビオサを生けるコツ
スカビオサの茎は細さが魅力ですが、それゆえに1本では花器の中でうまく固定できない場合があります。また、茎が細すぎて花器とのバランスが合わないことも。
そのようなときには、写真のように茎を編むようにまとめてから生けると、狙った位置に生けやすくなります。

さらに、よりしっかりと茎を固定したい場合は、中が空洞になっている茎に差し込んでひとつにまとめる方法もあります(ここでは麦の茎を使用しています)。
茎の扱いに戸惑うことがあれば、ぜひ試していただきたいテクニックです。

組み合わせの妙を楽しむ
色の異なるスカビオサに「カランコエ」を一輪添えた花あしらいです。
スカビオサだけでも十分に魅力的ですが、色や形のつながりを意識して異なる植物を加えることで、相乗効果が生まれます。
この写真のように、それぞれの形がはっきりと分かる生け方の場合は、形を整えすぎず、あえてバランスを崩すように生けると魅力が引き立ちます。

スカビオサは野趣のある花材とも好相性です。
「ルピナス」や「エンドウ豆の花」など、素朴な雰囲気の草花と組み合わせて、初夏の気配を楽しみましょう。
軽やかな色のトーンで揃えると、これからの季節によく似合う花あしらいになります。

スカビオサは花色によって、雰囲気ががらりと変わります。
ここでは淡い紫の花とワインレッドの花に、「アストランティア」「ワスレナグサ」「グリーンベル」などを添え、ナチュラルでロマンティックな小さなブーケ風にしてあしらいました。

こちらは、淡い紫のスカビオサに、ニュアンスカラーの「バラ」や「アスチルベ」を合わせ、砂糖菓子のような雰囲気に仕上げています。
ほんの少し加えた「ユーカリ」の、すりガラスのようなグリーンがアクセントです。

特別な花あしらい
ここからは、新井光史ならではの、スカビオサを使った特別な花あしらいをご紹介します。
今回使用した花々を組み合わせた、ナチュラルでありながら華やかなアレンジメントです。
紫の濃淡のスカビオサを引き立てるのは、同系色の「デルフィニウム」「リューココリーネ」「フロックス」などの花々や、麦、ユーカリ、エンドウ豆の蔓といった草もの。
まるでイングリッシュガーデンに咲いているかのような、伸びやかな表情に仕上げています。

こちらは、淡い紫のスカビオサをワインレッドのスカビオサに替えたものです。
一部の花を置き換えただけで、雰囲気が一変しました。
先ほどのアレンジメントが朝のイメージであるとすれば、こちらは夕暮れを思わせるデザインです。

「スカビオサ」の基本情報
□出回り時期:一年中
□香り:なし
□学名:Scabiosa
□分類:スイカズラ科 マツムシソウ属
□別名:松虫草 (まつむしそう)
□英名:Scabiosa
□原産地:地中海沿岸、アジアほか
□花ことば:明日は違う日、風情
花毎でご紹介しているスカビオサのお話
・二十四節気の花絵 第八十四話 白露の花絵「スカビオサ」

新井光史
神戸生まれ。花の生産者としてブラジルへ移住。その後、サンパウロの花屋で働いた経験から、花で表現することの喜びに目覚める。 2008年ジャパンカップ・フラワーデザイン競技会にて優勝、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝く。2020年Flower Art Awardに保屋松千亜紀(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得、フランス「アート・フローラル国際コンクール」日本代表となる。2022年FLOWERARTIST EXTENSIONで村上功悦(第一園芸)とペアで出場しグランプリ獲得。2025年3月に行われたFlower Art Award2025でも川口太聞(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得した。 コンペティションのみならず、ウェディングやパーティ装飾、オーダーメイドアレンジメントのご依頼や各種イベントに招致される機会も多く、国内外におけるデモンストレーションやワークショップなど、日本を代表するフラワーデザイナーの一人として、幅広く活動している。 著書に『The Eternal Flower』(StichtingKunstboek)、『花の辞典』『花の本』(雷鳥社)『季節の言葉を表現するフラワーデザイン』(誠文堂新光社)などがある。
Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
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