二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第五十八話 雨水の花あしらい「雪柳」

2026.02.19

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを、第一園芸のトップデザイナー・新井光史がご紹介いたします。


2026年2月19日から二十四節気は雨水に

しんと冷えていた大地に、ようやくやわらかな気配が戻りはじめるころが、「雨水(うすい)」の時季です。
空からの雪が雨へと変わり、雪解けがはじまる様子をあらわしています。

そうした雨水の時季にぴったりな花が、春を代表する花木のひとつである「雪柳」です。
名前には「柳」が見えますが、シモツケという落葉低木の仲間で、柳のようなしなやかな枝と、細かな花が雪に見えることからこの名が付きました。

今回は、この雪柳を使って、ひと足早く春を感じる花あしらいをご紹介します。

ダイナミックな姿を活かして

春風の姿を映したような、雪柳ならではののびやかな動きを活かした花あしらいです。
枝が自然に上向く位置を見つけたら、あえて枝を少し寝かせるようにして花器へ挿してみましょう。ゆるやかな弧がうまれ、雪柳の軽やかさがいっそう引き立ちます。

枝の印象を主役にしたいので、花器は小ぶりで重さのあるものがおすすめです。
重みがあることで、枝を横向きに挿しても安定し、動きを大胆に見せることができます。

この写真では、アクセントとして小石を添えました。
石や貝殻などの自然素材をさりげなく添えると、シンプルな花あしらいの中に小さな“景色”が生まれ、より季節の空気が感じられます。

雪柳を生けるコツ

雪柳の枝はとてもしなやかで、枝を〈ためる〉ことができます。
ためる(矯める)とは、写真のように、枝を曲げたい方向へゆっくりと力を加え、自然な曲線をつくる技法のことです。

コツは、焦らず、少しずつ力を入れていくこと。
一度に強い力を加えると枝が折れてしまうため、枝の様子を確かめながら、丁寧に形を整えていきましょう。

しなやかな枝ぶりを生かすことで、雪柳ならではの流れがうまれ、春風のような軽やかな表情をつくることができます。

コンパクトに楽しむ

大ぶりで存在感のある雪柳ですが、飾る場所によっては少し置きづらいこともあります。
そんなときは、枝先を使ってコンパクトに楽しんでみましょう。

雪柳は小枝がいくつも分かれてついているため、その中から好みの表情のひと枝を選び、カットして使います。

ここでは、花が多くついた枝を選びました。
花器は花色になじむ白い一輪挿しに。小さなサイズでも、雪柳ならではの動きのある枝ぶりをしっかり楽しめます。

組み合わせの妙を楽しむ

雪柳の個性ある姿に、ほんの少し別の植物を添えるだけで、新たな景色が生まれます。
この写真では、「ニューサイラン」の葉を合わせました。
葉を少し添えただけでも、全体にみずみずしい表情が加わります。

葉などを組み合わせるときは、あえてイメージの異なる植物を選んでみると、意外な表情が引き出されます。
ここでは、剣のようにまっすぐ上へ伸びるニューサイランと、枝を複雑に伸ばした雪柳との対比を活かしました。

さらに、長さにもコントラストをつけると、それぞれの魅力が際立ち、動きのあるバランスが生まれます。

こちらでは、すらりと伸びた雪柳のひと枝に、ドライフラワーの「蓮の実」を添えました。
潤いと渇き、春と冬──そんな見た目と意味のコントラストをさりげなく表現しています。

小さな、小さな花あしらい

アンティークの小さな水差しに、雪柳の小枝をそっと挿しました。
まるでおままごとの道具のような器を花器として使ってみると、思いがけない可愛らしい表情が生まれます。

繊細な雪柳の小枝には、こんな小さな器がよく似合います。

こちらでは、おままごとセットのように小さな器を並べて飾っています。
小さな花あしらいは、台座になるものを添えることで一体感が生まれ、ささやかな世界観をより印象的に見せてくれます。

台座には、ホームセンターの建築資材売り場で見かける“ピンコロ”と呼ばれるサイコロ状のコンクリートブロックを使用しました。
思いがけない素材が、花あしらいのよき引き立て役になることがあります。

特別な花あしらい

ここからは、フラワーデザイナーならではの、少しユニークな花あしらいをご紹介します。

長方形の陶製花器に、「サンゴミズキ」と「黄金ミズキ」の枝をすき間なく挿し込み、その上に雪柳の小枝を軽やかに添えました。
ミズキのまっすぐに伸びる直線と色のコントラストに、円弧を描く雪柳の動きが加わることで、シンプルながらも印象的な表情が生まれます。

今度は、ミズキを挿した花器の端に、動きのある雪柳の枝を数本添えました。
まっすぐに伸びるミズキの直線と、雪柳のしなやかな曲線。
そこに色のコントラストも重なり、シンプルながら表情豊かな取り合わせになります。

アクセントには、形のきれいな小石を添えて。
さらに、黄金ミズキの間にも小さな石を一つしのばせ、ほんの少しの遊び心を加えました。

最後は、これまでの二つの花あしらいで使った“ミズキを挿したベース”を、さらに華やかに変化させました。
全体に雪柳を挿し込み、ニューサイランと「胡蝶蘭」をアクセントとして合わせています。

ミズキが花留めの役割を果たすため、花を狙った位置にしっかり固定しやすいのも、このアレンジのよいところです。

雪柳は、主役にもなり、全体をまとめる脇役にもなれる、表情豊かな花材。
花が咲いている枝が出回る短い時季を逃さず、素朴でありながら華やかさも併せ持つこの花を、ぜひ楽しんでみてください。

「雪柳」の基本情報

□出回り時期:1月~3月
□香り:あり
□学名:Spiraea thunbergii
□分類:バラ科 シモツケ属
□別名:小米花(こごめばな)、小米柳(こごめやなぎ) 、岩柳(いわやなぎ)、墳雪花(ふんせつか)
□英名:Thunberg Spirea
□原産地:日本、中国
□花ことば:縦横無尽、愛らしさ、静かな思い


花毎でご紹介している雪柳のお話
・二十四節気の花絵 第百二十五話 雨水の花絵「雪柳」


新井光史

神戸生まれ。花の生産者としてブラジルへ移住。その後、サンパウロの花屋で働いた経験から、花で表現することの喜びに目覚める。 2008年ジャパンカップ・フラワーデザイン競技会にて優勝、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝く。2020年Flower Art Awardに保屋松千亜紀(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得、フランス「アート・フローラル国際コンクール」日本代表となる。2022年FLOWERARTIST EXTENSIONで村上功悦(第一園芸)とペアで出場しグランプリ獲得。2025年3月に行われたFlower Art Award2025でも川口太聞(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得した。 コンペティションのみならず、ウェディングやパーティ装飾、オーダーメイドアレンジメントのご依頼や各種イベントに招致される機会も多く、国内外におけるデモンストレーションやワークショップなど、日本を代表するフラワーデザイナーの一人として、幅広く活動している。 著書に『The Eternal Flower』(StichtingKunstboek)、『花の辞典』『花の本』(雷鳥社)『季節の言葉を表現するフラワーデザイン』(誠文堂新光社)などがある。

Text・Photo:第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子