第五十四話 霜降の花あしらい「スターチス」
2025.10.23
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを、第一園芸のデザイナー・志村紀子がご紹介します。
2025年10月23日から二十四節気は霜降に
「霜降(そうこう)」は、朝晩の冷え込みが増し、霜が降り始める頃を表す節気です。
晩秋を迎え、秋の最後の節気でもあるこの時期は、冬へと向かう季節の移ろいを感じさせてくれます。空気は澄み、景色もどこか静けさを帯びてきます。
今回ご紹介するのは、そんな霜降の季節に寄り添う花「スターチス」。
ドライフラワーとしても人気のあるスターチスは、色褪せにくく、長く楽しめるのが魅力です。
小さな花が集まって咲く姿は可憐で、落ち着いた色合いが過ぎゆく秋の情景にそっと寄り添います。
この季節にぴったりな、スターチスを使った花あしらいをご紹介します。
ざっくりとボリューム感を楽しむ
スターチスには、大きく分けて〈スターチス・シヌアータ〉〈宿根スターチス〉〈ハイブリッドスターチス〉の3種類があります。
今回は、長く親しまれてきたスターチス・シヌアータを使い、ニュアンスカラーのくすんだピンクとクリーム色をたっぷりと、ざっくりとあしらいました。
スターチスには実にさまざまな色があり、ピンクとひと口に言っても、写真のようなくすんだ色味から鮮やかなものまで、まるで口紅のように豊富なバリエーションが揃っています。
ぜひ、お好みの色を組み合わせて、自分らしい花あしらいを楽しんでみてください。
そのままドライフラワーにも
今度は、水色とクリーム色のスターチスをそれぞれ束にして、陶器の花器にあしらいました。
さらに束の数を増やして、バスケットにも入れてみました。
スターチスは、買ってすぐにバスケットなどに無造作に入れておくだけでも、きれいなドライフラワーになります。
水が苦手な器や、水を使いたくない場所でも気軽に楽しめる、扱いやすい花です。
麻ひもを使って
お気に入りの色を何色か組み合わせて束ねるのもおすすめです。
束ねる際には、見えても気にならない麻ひもを使うと自然な仕上がりに。
麻ひもは茎を傷めにくく、ひとつ持っていると何かと便利なアイテムです。
小さな枝のあしらいかた
スターチスは、1本の茎から複数の枝に分かれて咲くスプレー咲きの花です。
束ねる際に余った枝は、小さな花器に分けて飾ると、また違った表情が楽しめます。
色ごとに大・中・小のサイズで分けてみるなど、遊び心を取り入れて自由にアレンジしてみてください。
宿根スターチスを楽しむ
こちらではタイプの異なる〈宿根スターチス〉をバスケットにあしらいました。
細かな花がふんわりと咲く姿は、どこかカスミソウを思わせる繊細な印象です。
代表的な品種に「ブルーファンタジア」があり、この名前で呼ばれることも。
そのまま飾っておくだけで、自然とドライフラワーになりますので、秋の終わりにぴったりな、おだやかな彩りを楽しんでみてください。
宿根スターチスは、他の花との相性も抜群です。
ここでは、秋色アジサイと組み合わせてみました。
落ち着いた色合いが、秋の終わりの空気によくなじみます。
もちろん水に浸けて飾ることもできるので、お好みの花と自由に組み合わせて楽しんでみてください。
「スターチス」の基本情報
□出回り時期:通年
□香り:あり(一部品種)
□学名:Limonium
□分類:イソマツ科 イソマツ属
□別名:ハナハマサジ、リモニウム、チース
□英名:Statice、Limonium、Sea Lavender
□原産地:ヨーロッパ、地中海沿岸
□花言葉:変わらぬ心、永久不変
花毎でご紹介しているスターチスのお話
・旬花百科 第十六話 「スターチス」
志村紀子
東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。
第一園芸オンラインショップ「Noriko Shimura」
夢の花屋 第四十話「トルコの色彩に見立てる」
夢の花屋 第三十八話「バンコクの色彩に見立てる」
夢の花屋 第三十六話「サントリーニ島の色彩に見立てる」
Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
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