二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第十八話 立冬の花あしらい「鈴バラ」

2022.11.07

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2022年11月7日から二十四節気は立冬に

立冬とは、読んで字のごとく冬が始まる頃。冷たい風が木の葉を落としはじめると、街にはイルミネーションが輝きだして、秋から冬に季節が変わったことを感じさせてくれます。

私のこの季節の楽しみは、赤く色づいた木の実を見つけることです。
公園や街路樹などに実る赤い実を見つけては、まるで鳥になった気分で「おいしそうだな」と思って眺めます(笑)
子供の頃に見つけた、近所の河原にあった野生のバラの実は赤くつやつやしていて、宝物を見つけたような気持ちになった事を思い出します。

今日はそんな今が旬の実もの「鈴バラ」をいけてみようと思います。
秋から冬へと移ろう季節にぴったりな、赤く色づく実ものでお部屋の中に季節を取り入れてみましょう。

ざっくりとナチュラルにいける

今回はバラの実の一種である「鈴バラ」を選びましたが、11月上旬は出回る数が減ってきますので、同じくバラの実である「野バラ」もおすすめです。
ご紹介している鈴バラは野バラより実も大ぶりでインパクトがあるので、少ない本数でも華やかな印象に仕上がると思います。

バラに実がなるの?とよく質問されるのですが、全てのバラに実がなる訳ではなく、原種に近い一重のバラは実をつけるものが多い、とお答えしています。
ハーブティーでおなじみのローズヒップもバラの実ですが、鈴バラの実は食べられないのでご注意くださいね。

鈴バラは長い枝の状態で販売されることが多いので、大きな花器があれば、まず枝ぶりを活かしてざっくり大きくいけてみましょう。水に浸ってしまう部分にある実はカットして省きますが、この実は捨てないでください!後ほど活用法をご紹介します。

この時、枝が直立してしまって向きがかわいくない…と思う場合もあると思います。
そんな時は「ため」と呼ばれる技を使って、お好みの形に枝を整えてみましょう。

これが「ため」です。

簡単に言えば、まっすぐな枝や茎を好みの形に曲げていく生け花の手法のひとつです。
漢字で書くと「矯め」ですから、矯正するというニュアンスでしょうか。

曲げたい場所の下をしっかり持って、向けたい方向に力を入れて曲げていくイメージです。
厳密にはもう少し難しいテクニックなのですが、こんな感じで試してみてください。ただし、今回の鈴バラはトゲがありますので、くれぐれもお気をつけて。

まっすぐな枝を曲げたい時にも、逆に曲がった枝をまっすぐに近づけたい時にも使える便利なテクニックですので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

鈴バラをいけるポイントはざっくりナチュラルにいけること。花瓶全体にふんわりいけると大きくなりすぎるので、今回は左から光が入る部屋に合わせて左にやや寄せていけています。

枝ものの良いところは、なんとなくプロっぽく仕上がる雰囲気があるところだと思います。
難しく考えずに、ナチュラルな気持ちでいけてみましょう。

色づいた植物で秋の終わりを表現

シンプルに美しい実や枝ぶりを楽しんだら、色づいた葉や花をプラスして秋の終わりを感じる花あしらいに。

鈴バラには染色した「ユキヤナギ」と「ワックスフラワー」と、花の部分が大きな松ぼっくりのような「リューカデンドロン・ルビーグローブ」、オレンジがかった紅葉が素敵な「チョウジソウ」を合わせて、紅葉のイメージを演出してみました。

鈴バラは左側に寄せ、軽やかなユキヤナギを沿わせてのびのびと。頭の大きなリューカデンドロンは下の方に配置して安定感を出します。反対側にはワックスフラワーを固めてバランスをとり、間をつなぐようにチョウジソウを添えて全体をまとめました。

11月の上旬は立冬といっても現代の日本では、まだまだ秋の気分。
この季節の花屋の店頭では、自然に色付いた葉や染色で紅葉のように仕上げたものなど、様々なカラーリーフが出回っていますので、お好みのものを探してみてくださいね。

ガラスの器と合わせて冬の冷たさを表現

今度はガラスの花器を使って冬の訪れを表現してみました。

氷のような冷たさを感じるガラス素材に、温かみを感じる実ものをあえて合わせるのも素敵です。

枝は半分より少し下で切り分けて、1枝を2本の枝にしています。
鈴バラはやや固い枝なので、花屋さんであらかじめ切ってもらうのもよいと思います。いける器の大きさを伝えれば、おすすめの長さで切ってもらえますよ。

今回は傾いたデザインの花器を使っていますが、直立した器でいける時も枝の柔らかいカーブを活かして、左右どちらかに傾けていけるとナチュラルに仕上がります。

陶器の器と合わせ温かみを感じる花あしらいに

鈴バラを長いままの姿でしばらく楽しんだ後は、枝を短くカットして秋色に紅葉したチョウジソウを合わせて、ほっこりした花あしらいに。
温かみのある陶器と鈴バラはお互いの魅力を引き立て合う組み合わせです。

高低差がある2つの器を使うときは、高い方に軽い印象の花材を、低い方にボリュームのある花材をいけるとバランスよく仕上がりますよ。

大きな枝をいけた際に出た、使わなかった実をローズヒップティーに添えてみました。
バラの特定品種から作られるローズヒップティーはビタミンCがたっぷりで、美容や風邪の予防に昔から飲まれてきたハーブティー。鮮やかな赤い色も見ていると元気が湧いてきますね。
ぜひ視覚と味覚でバラの実(ローズヒップ)を楽しんでみてくださいね。

ボトルに閉じこめてクリスマスオブジェに

薬瓶に鈴バラの実を入れてオブジェにしてみました。
クリスマスが近づいたら、お気に入りのツリーを添えて気分を上げましょう。

花瓶にいける時に取り除いた実は捨てずに、こんな風にディスプレイしてみてはいかがですか?
つやつやした実がだんだんとドライな質感に変わる様子も楽しめますよ。

カビを防止するために、ほんのちょっと蓋を開けておくか、部屋にいない時間は蓋を外しておくとよいでしょう。

オーナメントを飾ってクリスマス気分を演出

鈴バラにお気に入りのオーナメントを飾ってクリスマスデコレーションを楽しみましょう。
定番のクリスマスツリーももちろん素敵ですが、身近な植物にオーナメントをディスプレイして、きらきらした特別な季節を演出するのも素敵です。

オーナメントを使ったディスプレイのコツは、離れて全体のバランスを見てみること。
離れて見てみるとオーナメントが同じ高さや、一か所にかたまって付いていることに気づきます。全体を見渡せる場所でバランスをチェックしてみましょう。
植物に負担になるので重たすぎるオーナメントは避けてくださいね。

スワッグにして楽しむ

鈴バラはドライフラワーにしても鮮やかな色が残るので、スワッグにして壁にかけても素敵です。

枝を好みの長さにカットし、実のつき方や枝の曲がり方などに気を付けてバランスを見て束ねていきます。輪ゴムでも紐でも束ねることができればOK。束ねた場所をお気に入りのリボンで結べば、この季節にぴったりなスワッグの出来上がりです。

玄関のドアにかけておくと、私みたいに赤い実が大好きな鳥が食べに来るかもしれません。
お好みの場所にディスプレイして季節の花あしらいを楽しみましょう。

「鈴バラ」の基本情報

□出回り時期:9月~11月初旬
□香り:なし
□学名:Rosa glauca
□分類:バラ科バラ属
□和名:鈴薔薇
□英名:Redleaf rose等
□原産地:ヨーロッパ
□花言葉:正義感、誠実 など

※鈴バラという品種はなく、大きいバラの実がついた枝の流通名です


花毎でご紹介しているバラの実のお話

水上多摩江さんが描く花の絵
二十四節気の花絵 第七十話 冬至の花絵「ローズヒップ」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。