第七十話 冬至の花絵「ローズヒップ」
2020.12.21
暮life
2020年12月21日から二十四節気は「冬至」に
冬至は春分、夏至、秋分と共に二至二分(にしにぶん)と呼ばれる、二十四節気の中でも季節を区切る重要な節気です。
一年の中で最も昼が短い日が冬至ですが、日本ではこの日を境に昼が長くなっていくことを「一陽来復(いちようらいふく)」と呼び、冬が去り春(=新年)が来る日として尊ぶとともに、凶事の後に必ず吉事が巡ってくること*、という意味の熟語として使われています。
また同じように北欧では冬至は太陽の力が復活する時と捉え、キリスト教が伝来する以前の時代から冬至祭(ユール)が行われていました。
この時、ユールログと呼ばれる丸太に火を灯しましたが、その名残が丸太の形を模したクリスマスケーキ「ブッシュ・ド・ノエル」のルーツだとも言われています。
国は違えど、はっきりとした冬を感じる地域では寒さがより厳しくなるこの時季に、先に待つ春の喜びを示す希望の星のような日、といった気持ちは同じなのでしょう。
*出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」
「ローズヒップ」
□結実期:10月~12月
□分類:バラ科バラ属
□英名:Rose hip
ローズヒップとはバラの実のこと。正確にはこの赤い実の中に入っている小さな種が果実です。
どのバラでも実るわけではなく、春にだけ咲く一季咲きのノイバラ、ハマナス(ハマナシ)、オールドローズなど野生種系の品種に実が生ります。
花が品種によって色や形が違うように、バラの実も花によって赤、オレンジ、黄など、色も違えば、形もサイズも様々。
秋のバラが終わり、木々の葉も落ちはじめると、この実がひときわ鮮やかに庭を彩ります。
花毎の花言葉・ローズヒップ「時の贈りもの」
バラに実が成ることはあまり知られていないことかもしれません。
一般的なバラのイメージはとても華やかなものですが、実はこういったバラの多くは接ぎ木で育てられ、その台木となるのがこのローズヒップです。
色づいた実から種を取り出し、発芽、成長させたものが、多種多様な美しいバラの台木となるのです。
このローズヒップにも花言葉があり、「無意識の美」「正義感」「誠実」などとされていて、何れも特徴を表した言葉と言えます。
さて、もうひとつ言葉を付け加えるのであれば……
一年に一度だけ咲き、それがなんの花であったか気づかれないまま実りとなり、他の花を咲かせるための支えとなる、密やかな力強さ。
それは時とともに変化する自然界からの贈りもの。
そんな意味を込めて「時の贈りもの」という花言葉をローズヒップに捧げたいと思います。
文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
水上多摩江
イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など
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