第二十五話 夏至の花あしらい「檸檬色のひまわり」
2023.06.21
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。
2023年6月21日から二十四節気は夏至に
夏至(げし)とは、一年でいちばん昼が長く、夜が短くなる頃。気温はどんどん上がり、暑さも日毎に増していきます。
明るい時間が長いこの季節は不思議とお得な気持ちになるのは私だけは無いはず。
少し遅くまでお出かけしたり、ゆっくりとお散歩を楽しんだりと、夏至の季節を楽しんでいます。
二周目に入った二十四節気の花あしらいのトップバッターはひまわりをいけてみようと思います。
前回は7月中頃の「大暑」に力強い太陽のようなオレンジ色のひまわりを紹介しましたが、今回は6月らしく爽やかな檸檬色のひまわりをいけてみようと思います。
夏のアイコンのひまわりを初夏の暮らしに取り入れてみましょう。
のびのびと太陽に向かう姿を表現
太陽のように元気いっぱいのイメージのひまわり。
たくさんの色や形があるので、季節の進み具合や気分によって品種を選ぶのも楽しいものです。
6月中旬の夏至ということで爽やかな印象の檸檬色のひまわりを選んでみました。
シンプルな一重咲きの「サンリッチ フレッシュレモン」と八重咲きの「レモンオーラ」です。
夏の始まりのこの頃はスイーツやドリンク、お酒でも「檸檬推し」が見られますよね(笑)
真夏の炎天下でも元気に咲いているため丈夫そうに見えるひまわりですが、切り花は少しデリケート。お手入れにはコツがあります。
新鮮なひまわりは葉も青々として美しいですが、すぐに黄ばんできてしまうので少しだけ残して余分な葉は取り除きましょう。茎も水にいける直前に斜めにカットします。
いけるポイントは顔の向きを自然に整えてのびのびといけること。太陽に向かって咲いているようにくるくると回してひまわりの向きを整えましょう。あまり考えすぎず、ざっくり花瓶にいけてみましょう。
花は近づけすぎないように。風通しよくいけることでムレを防止して、より長持ちさせることができます。
すらっと伸びる茎も魅力なので、すっきり見えるよう重なったり交差したりしないように整えましょう。
ざっくりとナチュラルにあしらう
シンプルに楽しんだ後は、シーグラスのバスケットでより季節感を感じる花あしらいに。
花をいけた花瓶ごとバスケットに入れるだけの簡単な着せ替えは、かごバックなど夏のファッションアイテムを使ってぜひお試しくださいね。
ひまわりはまめなお手入れがかかせない少しデリケートな花。
すぐに水が濁ってきてしまうので、毎日の水替えや切り戻しが欠かせません。
面倒に感じるお手入れも、同じ形に戻すのではなくイメージを変えて飾り直すことで億劫さが減るかもしれませんよ。
6月の庭のようなにぎやかさを楽しむ
庭好きにとって、初夏は見どころがたくさんのわくわくする季節。気温が上がるごとに勢いを増す植物たちの成長に心が躍ります。
ひまわりに加えたのは庭から摘んできたような植物たち。
バラなどと合わせるよりも、ナチュラルで主張が少ない花や緑の方が、主役顔のひまわりに合う気がします。
上の写真で加えたのは「半夏生(はんげしょう)」。夏至の末候*、半夏生(はんげしょうず)の頃に葉が部分的に白くなる不思議な植物です。湿地が好きな植物なので、瑞々しい雰囲気を出すことができます。
下の写真は、にぎやかなキッチンガーデンのイメージでいけてみました。
線香花火のような花姿で食欲をそそる美味しそうな香りを放つ「フェンネル(ウイキョウ)」と、細長い筒状の花びらが可愛らしい「ルドベキア ヘンリーアイラーズ」、名前の通り煙のような繊細な姿の「スモークグラス」を加えて、にぎやかにあしらいました。
まず、ひまわりと半夏生で大体の大きさや形を決めたら、フェンネルをいけてみましょう。花が重くて下を向いていますが、それもナチュラルで美しいのであえてそのままで。ルドベキアとスモークグラスは隙間が空いてしまったところに添えて、形を整えましょう。
あまり考えすぎず、ナチュラルな雰囲気を楽しんでいけましょう。いけているうちにひまわりの顔がくるくる回ってそっぽを向いてしまうので、最後に少し離れた場所からチェックしてみましょう。
ひまわりの顔がきれいに見えるように整えれば出来上がりです。
6月は香り高いハーブの旬でもあります。香りも添えて6月らしい花あしらいを楽しみましょう。
*二十四節気を更に細かく分けた七十二候の節気で、2023年は7月2日から7月6日が半夏生です。
ガラスのピッチャーで涼やかに
いつもは食卓でお茶を入れているピッチャーを花器にしてみました。
シンプルな器にいけると茎と花のコントラストが美しく、凛とした雰囲気も味わうことができますよ。
ひまわりは器でとても雰囲気が変わる花だと思います。
水替えのたびに器を変えて楽しんでみてくださいね。
香りと驚きを添えておもてなし仕様に
ひまわりが少し特別になる、パーティーにもおすすめのデコレーション。
レモンの爽やかな香りや瑞々しく美しい断面を使ってゲストにサプライズしてみませんか。
「どうなっているの?」と驚く声が聞こえたら大成功!
まずはサイズ違いのガラスの器を2つ用意して、大きい器に小さい器を入れ込みます。この時、器の大きさにあまり差がない器を選ぶとレモンが中で動かないのでセットが楽です。
両方に水を入れて、器の隙間に薄く切ったレモンの輪切りをお箸などで挟んでいきます。あまりきれいに並べなくても大丈夫です(性格が出そうですね)。お好みのスタイルに並べていきましょう。
こうしておくと後でレモンウォーター等にして飲めたり、レモンも食べられたりして無駄がありませんし、ひまわりとレモンが直接触れないのでひまわりにも影響がありません。
清涼感のある見た目と香りでゲストの方におもてなししましょう。
この状態でも一日はきれいに楽しむことができます。少し儚いですけど「おもてなしのひと時のために時間をかける」ことも、大切なおもてなしの心ですよね。
シンプルにひまわりを楽しむ
高さの異なる一輪挿しにひまわりをシンプルにいけてすっきりとした姿を楽しんでみましょう。
花の向きはきっちり整えずに、少しランダムにするとナチュラルな印象になります。
3本いける時は三角形を意識するとバランスがとりやすくなりますよ。
身近なモノを花器に見立てる
様々なモノを器に見立てて、花あしらいを楽しんでみましょう。
花瓶をたくさん持つ必要はありません。身近な道具を器に見立てることができるのですから。
夏のファッションアイテムの麦わら帽子には、少し低めのコップなどにいけたひまわりとスモークグラスを。
お気に入りの洋書には細めの空き瓶を挟んで一輪のひまわりをいけました。
見立てる時に大切にするのは「さりげなさ」です。
ほんの少しだけ花を添える、そんな感じを心がけて、思いもよらない組み合わせを楽しんでみましょう。
最後まで花を楽しむ
すらっとした茎も魅力のひまわりですが、花は元気でも、突然花の重みで茎が折れてしまう場合があります。
その時はこのように思い切って茎をカットして楽しんでください。
花首だけをカップ&ソーサーにいけたさりげない花あしらい。
花が直接水に着かないようにすると長もちしますよ。
「ひまわり」の基本情報
□出回り時期:通年(最盛期は6月~9月)
□香り:なし
□学名:Helianthus annuus
□分類:キク科ヒマワリ属
□和名:向日葵(ヒマワリ/ヒュウガアオイ)、日輪草など
□英名:Sunflower
□原産地:北アメリカ
□花言葉:「あなただけを見つめる」「憧れ」など
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谷中直子
第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。
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