二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第五十一話 大暑の花あしらい「アンスリウム」

2025.07.22

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のデザイナー、志村紀子がご紹介いたします。


2024年7月22日から二十四節気は大暑に

暦の上で、一年でもっとも暑い時季を表す節気が「大暑」です。ひとつ前の「小暑」は暑さの始まりを指し、「大暑」ではその暑さがピークを迎えるとされています。

今回の花あしらいの主役は、トロピカルフラワーの代名詞ともいえる『アンスリウム』。
団扇のような形や鮮やかな赤色のイメージが強い花ですが、実はカラーバリエーションが豊富で、サイズや形もさまざま。ユニークな個性を持つ花です。
また、花のように見える部分は「苞(ほう)」と呼ばれ、中心の突起部分が本来の花にあたります。今回はその中から、涼しげな色合いのアンスリウムを使った、夏にぴったりの花あしらいをご紹介します。

花の個性を楽しむ

クリームイエローのアンスリウムだけを生けました。
微妙な色のグラデーションを活かしてリズミカルに配置すると、彫刻のような面白さが生まれます。
花器は軽やかな花色に合う、マットな白の陶製を選びました。
カンバスに絵を描くような感覚で、好きな色の花を選び、自由に楽しんでみてください。

さまざまな葉と組み合わせる

こちらでは、クリームイエローとイエローグリーンのアンスリウムに『アンブレラファン』を合わせました。
名前のとおり、傘のように広がる葉が特徴的なシダの一種です。一見、生けるのが難しそうですが、葉の中心部にアンスリウムを挿すと、簡単に固定できます。
個性の強い花や葉でも、近い色合いでまとめると、自然と調和の取れた雰囲気に仕上がります。

今度は一転して、しなやかで動きのある『ミスカンサス』を添えました。
硬質な印象のアンスリウムと、やわらかなミスカンサスの組み合わせは意外に感じるかもしれませんが、たっぷり使うことで、双方の魅力が引き立ちます。
ここでは茎も見せるように束ねて生けました。

アンスリウムとミスカンサスは輪ゴムでまとめていますが、茎も美しいので、ガラスの花器でも目立たない工夫をご紹介します。
(1)輪ゴムで束ねたあと、(2)別に取っておいたミスカンサス1本で輪ゴムを隠すように巻きつけ、(3)すっきりと仕上げます。
ぐらつく場合は、(4)セロファン(花を包んでいたものなど)を水の中に入れると、見た目を損なわず、安定して生けることができます。

コンパクトに楽しむ

お手入れで短くなったアンスリウムに、まるでマリモのような『テマリソウ』を添えました。ユニークな形どうしが響き合い、愛らしい花あしらいに。
ここでは微妙に形の異なる花器にそれぞれ生けて3つ並べましたが、もちろん1つだけでも楽しめます。
高さを出しにくい場所にもぴったりの、シンプルながら見ごたえのあるスタイルです。

意外な植物と合わせる

アンスリウムには「チューリップアンスリウム」と呼ばれる、苞が細く、チューリップのようなシルエットのタイプもあります。
ここでは、その中の『サビア』という品種に、枝ものの『シモツケ』を合わせました。
意外な取り合わせに見えますが、高さやボリュームを揃え、それぞれを“固まり”として生けることでバランスよくまとまります。
水あげを兼ねてざっくり生けておけば、まずはこのまま楽しめますし、あとからゆっくり整える余裕も生まれます。

短い花を楽しむ

続いて、別名「ブラシの木」とも呼ばれる「カリステモン」を添えました。
ピンク色のブラシのような花が印象的な枝物で、アンスリウムとはまったく異なる雰囲気ですが、花の色を合わせることで軽やかにまとまります。
たった1本添えるだけでも、表情豊かなアレンジに。

さらに、アンスリウムとカリステモンの花あしらいに、トロピカルフラワーの『モカラ』を加えました。
それぞれが独立したアレンジでも、色合いや雰囲気が近ければ、一緒に飾ってみることで新しい楽しみが生まれます。

最後のひと枝まで楽しむ

短くなった花々を集めて生けました。
ここでは、試験管をつなげた自在に動かせる花器を使い、残った花をぎゅっとまとめています。
アンスリウム、クレマチス、ゴテチア、シモツケ、アンブレラファンなど、ふだんはあまり組み合わせないような花も、無造作に生けてみることで、意外性と存在感のあるアレンジが生まれることも。
最後の一本まで大切に、思いがけない出会いを楽しんでみてください。

「アンスリウム」の基本情報

□出回り時期:通年
□香り:なし
□学名:Anthurium
□分類:サトイモ科 ベニウチワ属(アンスリウム属)
□別名:大紅団扇 (オオベニウチワ)
□英名:Anthurium、Tailflower
□原産地:熱帯アメリカ~西インド諸島
□花言葉:幸運のお守り、情熱、煩悩など


花毎でご紹介しているアンスリウムのお話
・二十四節気の花絵 第八十三話 立秋の花絵「アンスリウム」
・旬花百科 第六話 「アンスリウム」


志村紀子

東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。

第一園芸オンラインショップ「Noriko Shimura」
夢の花屋 第三十六話「サントリーニ島の色彩に見立てる」
夢の花屋 第三十四話「マデイラ島のジャカランダに見立てる」
夢の花屋 第三十二話「ヴェネツィアのカーニバルに見立てる」

Text・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子