夢の花屋

第一園芸のトップデザイナーが、世界中の絶景や名画、自然現象や物質を花で見立てた、
この世でひとつだけの花をあなたに贈る、夢の花屋の開店です。

第二十話「神戸の夜景に見立てる」

2023.12.15

gift

この世にある美しいものを花に見立てたら──
こんな難問に応えるのは、百戦錬磨のトップデザイナー。そのままでも美しいものを掛け合わせて魅せる、夢の花屋の第二十話は「神戸の夜景」に見立てたアレンジメントです。手掛けるのは第一園芸のトップデザイナーであり、フローリスト日本一にも輝いた新井光史。
ここからは花屋の店先でオーダーした花の出来上がりを待つような気持ちでお楽しみください。

神戸の夜景とは

日本には三大夜景と呼ばれる夜景の名所があり、函館、長崎そして神戸が三大夜景と呼ばれています。その神戸の夜景の名所とされる場所は、六甲山地に属する摩耶山(まやさん)にある掬星台*(きくせいだい)から望む神戸市や大阪市の一帯。
海と山に囲まれた神戸には他にもたくさんの夜景スポットがありますが、今回新井がモチーフとして選んだものは古い絵葉書に写ったポートアイランド**やポートタワー***を望む夜景でした。

*掬星台:摩耶山上の標高702mに位置。名称の由来は手を伸ばせば星を掬(すく)えそうなほど美しい星空の場所という意味から付けられた。
**ポートアイランド:神戸港に造られた人工島で1981年に開催された「ポートピア'81」の会場。
***神戸ポートタワー:1963年竣工。神戸開港90周年を記念して建造されたつづみ型のタワーで、神戸のランドマーク的な存在。


見立ての舞台裏

夜景をイメージして用意されたのは、紫色を中心とした花々。

新井が描いた、神戸の夜景に見立てたアレンジメントのためのデッサン。

最初に手に取ったのはダリア「黒蝶」

吸水スポンジを入れた長方形の器に何本ものダリア「黒蝶」を垂直に挿していきます。

ダリアの足もとには茶色のドラセナを添えました。

バンダと濃い紫のカーネーション「ムーンダスト」が加わり、華やかさが増していきます。

スカビオサなどの小花や実ものが入ってより複雑な表情に。

さまざまな白い花を加えていきます。

黒く染めたアスパラペラ、真っ白なカスミソウが加わり雰囲気が一変しました。


完成、神戸の夜景に見立てたアレンジメント

神戸の夜景に見立てたアレンジメントが完成しました。

「今回は『夢の花屋』1stシーズンの大トリということで、自分の故郷である神戸の夜景をテーマにしたデザインで制作しました。小学生のころ遠足で行った六甲山はのんびりとした印象でしたが、ティーンになってから初めて見た夜景は全くの別世界で、あの時の感激は忘れられません。六甲山から見る夜景は神戸っ子にとって、自慢なんです」

裏側はよりキラキラ感が増して、どことなく80年代の華やかさとノスタルジーを感じます。

「数年前に『ラ・ラ・ランド』という映画を観たのですが、一番印象的だったのが夕闇に染まりはじめたグラデーションの空と街の光を背景にしたダンスシーンでした。このシーンが自分の記憶の中にある神戸の夜景と重なって、都会の夜空と街のきらめきを花で表現してみたいと思いました。都会の夜は真っ暗ではなく、いろいろな色が重なった複雑な色だと思います。その色合いをダリアとバンダで表現しています」

「特に冬は空気が澄んで夜景がひと際きれいなんです。大阪湾に続く夜景は宝石を散りばめたように輝いていて、そんなキラキラをカスミソウで表現しました」

乾いて銅のような質感になったハスの実。実は第十八話「夕闇の向日葵畑に見立てる」で使ったハスを乾かし、大切に保存して再利用したものです。

ダリア黒蝶は新井のアイコンとも言える花。真紅でありながら、その名の通り黒を感じる美しい色が魅力です。


夜景のブーケ

今回のアレンジメントのスピンオフとして用意されたブーケです。
バンダ、ダリア、アスパラベラ、コニカルブラックなどの黒を感じる花に、星をイメージしたホワイトスターが印象的なドラマティックなデザインです。

今回の花材:ダリア(黒蝶)、バンダ、スカビオサ、カーネーション(ムーンダスト)、ホワイトスター、カスミソウ、レースフラワー(ダウカス)、チョコレートコスモス、ドラセナ、アスパラぺラ(染)、蓮の実、花トウガラシ(コニカルブラック)

神戸の夜景に見立てたアレンジメントはいかがでしたでしょうか。
実は今回のテーマは冒頭にご紹介した絵はがきそのものがモチーフとなっています。

制作時、さりげなく壁に貼ってあったこの絵はがきについて尋ねると、今は亡きご母堂から届いたものだそうです。
「送られてきた時は深く考えなかったけれど、いま思えば東京で働く自分に〈神戸を忘れないように〉という意味だったのかな」と。

時間とともに絵はがきの色は少し色褪せたのかもしれませんが、神戸は永遠に輝き続ける心の中の宝石箱として、いつも新井とともにあるようです。


「夢の花屋」ではトップデザイナーならではの、鋭い観察眼や丁寧な仕事が形になる様子まで含めて、お伝えしていきたいと思っております。
こんな見立てが見てみたい…というご希望がございましたら、ぜひメッセージフォームからお便りをお寄せください。

第二十一話予告
次回から夢の花屋は2ndシーズンへ! 2024年2月中旬にリニューアルオープン予定です。

新井光史 Koji Arai

神戸生まれ。花の生産者としてブラジルへ移住。その後、サンパウロの花屋で働いた経験から、花で表現することの喜びに目覚める。
2008年ジャパンカップ・フラワーデザイン競技会にて優勝、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝く。2020年Flower Art Awardに保屋松千亜紀(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得、フランス「アート・フローラル国際コンクール」日本代表となる。2022年FLOWERARTIST EXTENSIONで村上功悦(第一園芸)とペアで出場しグランプリ獲得。
コンペティションのみならず、ウェディングやパーティ装飾、オーダーメイドアレンジメントのご依頼や各種イベントに招致される機会も多く、国内外におけるデモンストレーションやワークショップなど、日本を代表するフラワーデザイナーの一人として、幅広く活動している。
著書に『The Eternal Flower』(StichtingKunstboek)、『花の辞典』『花の本』(雷鳥社)『季節の言葉を表現するフラワーデザイン』(誠文堂新光社)などがある。