二十四節気の花絵

イラストレーターの
水上多摩江さんが花毎のために描いた、
二十四節気の花々

第八十三話 立秋の花絵「アンスリウム」

2021.08.07

life


2021年8月7日から二十四節気は「立秋」に

テレビやラジオでも「暦の上では立秋ですが」という枕詞が頻出する時です。
このような表現だけを取ると、二十四節気は過去に作られた情緒的表現のように思われるかもしれませんが、本来は太陽の動きと日照時間を正確に表した、実用的なタイムテーブルの役割を担うものです。
カレンダーも時計も無かった時代、古の人々はまず日照時間が最も長い「夏至」と短い「冬至」の設定にはじまり、それらを更に半分に分けた昼と夜がほぼ等分になる「春分」と「秋分」と徐々に節気を増やし、使い勝手のよいカレンダーを作っていったのではないでしょうか。
「立秋」とは秋の季節の中心である秋分に向けて、新しい季節が始まる数学的な区切であると考えれば、実際の天候との違いも納得できるかもしれません。


「アンスリウム」

□出回り時期:一年中
□香り:なし
□学名:Anthurium
□分類:サトイモ科 ベニウチワ属(アンスリウム属)
□和名:大紅団扇 (おおべにうちわ)
□英名:Anthurium、Tailflower
□原産地:熱帯アメリカ~西インド諸島

花はどこ?

アンスリウムはカラーやミズバショウと同じサトイモ科の植物で、同じような特徴を持った花です。
最も特徴的な中央の突起部分が「肉穂花序(にくすいがじょ)」で、小さな花が集まっているこの部分が本来の花。花だと思われがちな、ハート型をした大きな部分は葉が変化した「仏炎苞(ぶつえんほう)」です。

発見から品種改良へ

19世紀後半にフランスで造園家として活躍したエドゥワール・アンドレ(Édouard André)が出かけたプランツハンティングの旅で、コロンビアの熱帯雨林に自生していたアンスリウムを発見したといわれています。
その後、イギリス王立植物園「キューガーデン」を経て、ハワイの財務大臣であったサミュエル・ミルズ・デイモン(Samuel Mills Damon)がイギリスからハワイへと苗を持ち込み、自宅の庭で栽培を始めたことをきっかけに、一般にもアンスリウムの人気が広まりました。(ちなみに現在でも栽培されている「ニッタオレンジ」や「オザキ」といった品種は当時の育種家の名です)
特にハワイ島のヒロでは主に日系人の手によって栽培や品種改良が盛んに行われ、「オバケ」や「ミドリ」といった品種が誕生。1970年代まで、ハワイは世界最大の産地でした。

現在の日本ではアンスリウムの切り花の約8割以上が輸入ですが、千葉などで希少な国産アンスリウムの生産が行われており、花のプロフェッショナルも注目する上質な花が産出されています。

恋愛運UP?

ハワイではハート型であることからHeart of Hawaiiと呼ばれ、バレンタインデーのギフトの定番です。
また、風水では赤やピンクのアンスリウムを飾ると、西であれば恋愛運、東南であれば結婚運の運気が上がるといわれています。
花言葉も日本では「情熱」「煩悩」「恋にもだえる心」といった熱量が高い言葉がつけられています。


花毎の花言葉・アンスリウム「ラッキーチャーム」

世界最古のモチーフといわれるハートの起源は古代ギリシャ、古代エジプト時代の今では絶滅した植物の葉であった、という説があります。
愛や生命の象徴になったのは12世紀ごろからといわれ、ジュエリーやアクセサリー、服、身の回りのアイテムなど、さまざまなアイテムにこの形がラッキーチャームとして使われてきました。
古の人が見出したこの形が、長い時を経ても愛され続けている…それこそにこの形が持つ不思議な力を感じるのです。
苞も葉もハート形ですが、ひとつとして同じ形はないアンスリウムに、出会ったその人だけのラッキーチャーム=幸運を呼ぶお守り、という願いを込めた花毎の花言葉を託したいと思います。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 琵琶湖の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など