第十三話 芒種の花あしらい「アジサイ」
2022.06.06
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。
2022年6月6日から二十四節気は芒種に
芒種(ぼうしゅ)とは、稲や麦などの穀物の種をまく頃。現在の気候ではもっと早く種まきを行いますよね。古代中国の暦ですから少しはずれてしまうのもうなずけます。
このころから雨が多くなり、梅雨入りはいつ?という天気予報も聞こえてきます。
そして、梅雨といえばだれもが連想する花が「アジサイ」です。春の桜同様、日本人の多くが6月の花としてアジサイを想像するのではないでしょうか。
今日はそんな梅雨を彩るアジサイをいけてみようと思います。お部屋の中に庭を切りとったような季節の風景を取り入れてみましょう。
鉢で成長する花姿を楽しむ
露地では梅雨時の6月に見ごろを迎えるアジサイですが、花屋さんでは4月頃から店頭に並んでいます。
ブーケのようにボリュームがあり、育て方も簡単なので、花瓶に飾る花のかわりとして鉢植えのアジサイをお部屋のインテリアに取り入れてみるのもおすすめです。
春から夏の間は明るく風通しのよい場所に置けば、育ってくれる丈夫なアジサイ。
鉢ならではの楽しみは、小さな蕾が色付いて、やがて大きな花を咲かせたり、新芽が大きくなったりと、成長の様子を楽しむことが出来る事だと思います。
鉢植えのアジサイの上手なスタイリングのコツはバスケットなどに入れて、土の部分を隠すこと。こうするとスタイリッシュで清潔感のある姿を楽しむことが出来ると思います。
鉢植えで楽しんだ後は、まだきれいなうちに花を収穫してみましょう。
収穫した花でスタイリングを楽しむ
鉢植えでアジサイを楽しんだ後は、花がきれいなうちに枝ごとカットして、ガラスの花瓶に涼し気にいけてみましょう。
来年も花を楽しみたい方は、なるべく多くの葉を残してカットしてみてください。収穫した後は室内ではなく室外で育てます。葉を残すことで光合成が行われるので、翌年も花芽が付きやすくなります。
育てる自信がない方は、根本ギリギリでカットして大丈夫です。
*アジサイの詳しい育て方は「お手入れ手帳(ハイドランジア)」をご覧ください
アジサイは小さな花がぎゅっと束ねれられたブーケのようなフォルムですので、いけるのも簡単。花がきれいに見える角度を見極めて深めの水にいけましょう。
鉢からカットした花も、花屋さんで購入した切り花も同じですが、アジサイは特に水の蒸散が早く、ぐったりしやすい花なので、水を吸い上げやすいようになるべく切り口は斜めに広くカットして、余分な葉は落としておきましょう。
香りを添えて季節感をプラス
シンプルにアジサイの涼し気な姿を楽しんだら、季節の小花やグリーンを加えてみましょう。
今回はアジサイをベースに小花がすっと上に伸びていくようなデザインにいけてみました。
アジサイが土台になって小花が固定できるので、いけたい場所に花を配置することができますよ。
加えたのは外にカールした横顔がかわいらしい紫の小花「ベルテッセン」と、「ローズマリー」「アフリカンブルーバジル」「ラムズイヤー」「コリアンダー」などのハーブたち。
白いレースのような花はコリアンダー。別名はタイ料理でおなじみのあの「パクチー」です。繊細で可愛らしい花を咲かせますが、あの香りは漂いますので、お好みで調整してみてくださいね(笑)
お庭やベランダでハーブを育てている方であれば、梅雨から夏にかけて成長するスピードが増すので、お料理の他にもこうして花に添えて楽しむのもススメです。
この時期のハーブはどんどん収穫した方がムレ防止にもなるので、積極的に生活の中に取りいれてみましょう。
一輪挿しを並べてオブジェのように楽しむ
モダンなシルバーの花瓶にアジサイを1本ずついけて並べるだけで、空気が凛とするようなスタイリッシュなオブジェのできあがり。
誰でも簡単に「素敵!」と言わせる花あしらいができてしまう、便利で優秀なアジサイは初心者の方にもおススメです。水をよく吸うので、花瓶の水は多めに入れて、水替えのたびに切り口を新しくすれば、美しい姿を長く楽しむことができますよ。
水中花で涼し気な姿を楽しむ
アジサイには本当に水が似合います。アジサイの英語名である Hydrangea(ハイドランジア)には「水」という意味があるようで、梅雨のない海外の方ともアジサイ=水のイメージを共有できるのが面白いところです。
さて、アジサイが少しくたびれてきたら、こんな水中花にしてみませんか?
くたっとなったアジサイも茎の切り戻しをして全体を水に沈めると、いきいきとした姿に戻ることが多いです。
こうすると2日程度は涼し気な姿を楽しむことが出来ると思います。ただし、花が水につかっていると水が濁りやすくなりますので、こまめに水を替えてあげましょう。
最後の数輪も楽しむ方法
多くの花が枯れてしまっても、数輪はきれいな花が残っている場合があります。そんな時にはお皿に張った水に花を浮かべて最後の数輪もしっかり楽しみましょう。
水面にアジサイを浮かべると、水の揺らぎの中で花が息を吹き返したかのようにいきいきとして、とっても癒されます。テレワークの傍らに置いてひと時のオアシス気分を味わってみてはいかがでしょうか。
クーラーの効いた部屋の乾燥対策で、ベットサイドに飾るのもおススメです。
憂鬱な梅雨の季節も、旬のアジサイを眺めて、余すことなく楽しみながら快適にお過ごしください。
第一園芸の店頭でも「アジサイフェア」を開催中です。ぜひ足を運んでみてくださいね。
「アジサイ」の基本情報
□出回り時期:通年(最盛期は 6 月~9 月上旬)
□香り:なし
□学名:Hydrangea macrophylla
□分類:アジサイ科アジサイ属
□和名:紫陽花
□英名:Hydrangea
□原産地:日本 他
□花言葉:家族、団らん など
※今回、アジサイの「花」と呼んでいる部分は、ガクが変化した「装飾花」を指します。本来の花は装飾花の中心にある「真花」です。蕾は粒状で、開花するとごく小さな花が咲きますが、大半は早々に枯れてしまいます。
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谷中直子
第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。
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