第四十六話 清明の花あしらい「ガーベラ」
2025.04.04
暮life
日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のデザイナー、志村紀子がご紹介いたします。
2024年4月4日から二十四節気は立春に
清明とは、万物が清らかでいきいきとした気がみなぎる様子を表した節気です。
季節はここから晩春に入り、春の節気も終盤に。
今回のテーマ「ガーベラ」は一年を通して出回る人気の花ですが、春は出荷の最盛期にあたります。ここでは、さまざまな色や花のサイズがあるガーベラの中から、清明の季節感にぴったりな、パステルカラーのガーベラを使った花あしらいをご紹介します。
一輪を活かす
ガーベラは花も茎も美しく、オブジェのような存在感がある、一輪で生けても様になる花です。
まずは、シンプルな花器に一輪のガーベラを生けてみましょう。
ここでは、一輪挿しよりも大き目の、高さ約20cm×6cm角のガラス花器に一輪を生けました。そのまま生けると花の位置が定まりませんので、金色のワイヤーをガーベラにゆるく巻きつけて花留めにしました。
わざわざ一輪挿しの花器を用意しなくても花留めを工夫することで、大き目の器でも一輪を楽しむことができます。
今度は、一輪のガーベラに「タマシダ」を添えました。
タマシダと器のシルエットが相まって、立ち上っていくようなイメージの花あしらいになりました。ここでは高さの違う花器を使って、それぞれに生けたものを並べていますが、こうするとより空間が立体的に感じられるようになります。
もちろん、一つだけでも大丈夫。飾る場所にあわせて数を増やしたり、減らしたりできるのが一輪挿しの魅力です。
春ならではの組み合わせを楽しむ
口の細い花器に2、3本のガーベラをあしらいました。
ガーベラは長さや色、花の大きさの組み合わせで表情が変化します。組み合わせに絶対はありませんので、いろいろな組み合わせを楽しみながら工夫してみましょう。
ブーケのように
ガーベラは小輪、中輪、大輪などがあり、表情もさまざまです。
ここでは、ボリューム感のある大輪のガーベラを、一輪挿しの花留めとして使った金色のワイヤーを巻き付けて束ねました。ガーベラは茎が柔らかいので、輪ゴムなどよりもやさしく束ねることができる柔らかな太めのワイヤーが好相性。アクセサリーのように、あえて見えるようなイメージで使ってみても素敵です。
このようにして束ねたガーベラをシャープな長い葉が印象的な「オクラレルカ」と合わせて、ネイビーの水差しに生けました。シルエットや色のコントラストを楽しむ花あしらいです。
上の写真と同じガーベラの束を白い水差しに代えて、アクセントに一本のタマシダを添えました。
ガーベラは器の高さにあわせて、先ほどよりも短めにカットしています。最初は長い姿で楽しむのがおすすめですが、水換えの際に茎を切り戻して徐々に短くなったら、器や添える葉を代えると、同じ花とは思えないほど印象がガラリと変化して、新たな気分で花を楽しめることができるかと思います。
最近ではこの写真のような蕾のガーベラも花材として出始めています。
ここではユニークな姿を活かして、ポップな印象の花器にざっくりと生けました。
珍しい花材を見つけたら、新しい花あしらいのチャンス到来です。ぜひお試しください。
短い花を楽しむ
ガーベラはこまめに切り戻したり、涼しい場所で管理すると、驚くほど長持ちする花です。
お手入れの過程を経て短くなった花は、器や添える植物を変えて、まったく違うイメージで楽しんでみませんか。
大きいガラスのボウルには、花留めを兼ねて「コデマリ」を器に沿うように入れ、そこに短くなったガーベラを生けて、フレッシュなサラダのようなイメージの花あしらいに。
小さな円形の花器には、タマシダを水中に入れて、蕾のガーベラをあしらいました。
短くなった花も、少しの添えものがあれば、最後まで華やかに楽しめます。
こちらでは少し大きな円形の花器に生けたガーベラと、先ほどの蕾とタマシダの花あしらいを組み合わせました。
小さい花あしらいは組み合わせることで、楽しみが無限に広がります。
ガーベラは花がきれいなまま、途中で茎が傷んで折れてしまうことも。
そんな時には、小さな器を使って短い花も楽しみつくしましょう。ここでは小さな家のような花器を街のように並べました。ポップなガーベラは楽しい雰囲気の花あしらいがよく似合います。花は最後の最後まで、楽しい工夫で楽しみつくしましょう。
「ガーベラ」の基本情報
□出回り時期:通年
□香り:なし
□学名:Gerbera jamesonii Hybrid
□分類:キク科ガーベラ属
□和名:大千本槍(オオセンボンヤリ)、花車(ハナグルマ)
□英名:Gerbera
□原産地:南アフリカ
□花言葉:「希望」「前向き」「常に前進」 など
※ガーベラを生ける際は、水は浅めがおすすめです。
茎に水が触れる部分を少なくして、お手入れの度に切り口を新しくすると、花持ちがよくなります。
花毎でご紹介しているガーベラのお話
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志村紀子
東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。
第一園芸オンラインショップ「Noriko Shimura」
夢の花屋 第三十四話「マデイラ島のジャカランダに見立てる」
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Text・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
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