二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第百九話 寒露の花絵「金木犀」

2023.10.08

life


2023年10月8日から二十四節気は「寒露」に

寒露(かんろ)とは、野の草花に宿る冷たい露を表した節気です。
「露」の字が付くため9月初旬の白露(はくろ)と似ていますが、白露は昼夜の寒暖差で生まれた朝露を視覚的に捉えたという印象に対して、寒露は秋がより深まり、空気全体が冷えた様子を表現しているようです。

十三夜
月がもっとも美しく見えるのが十五夜(中秋の名月)とされていますが、それに次ぐ名月が「十三夜」です。例年、旧暦の9月13日がこの日にあたりますので、現代の暦では年ごとに日付が異なり2023年は10月27日、2024年は10月15日で寒露の節気に巡ってきます。
月のかたちは十五夜がほぼ満月なのに対し、十三夜は新月から13日目の月となりますので、真ん丸のお月さまになる手前の姿となります。

栗名月
十三夜の別名は「栗名月」と「豆名月」です。この時季に収穫されるのが栗や豆であることから、こうした別名が付けられました。ちなみに十五夜の別名は「芋名月」で、里芋をお供えする習慣があります。


「金木犀」

□開花期:9~10月
□香り:あり
□学名:Osmanthus fragrans var.aurantiacus
□分類:モクセイ科 モクセイ属
□別名:オスマンサス、桂花(けいか)、丹桂(たんけい)、九里香(くりこう)
□英名:Fragrant olive
□原産地:中国

三大芳香木
春の沈丁花、初夏のくちなし、秋の金木犀と香りのよい花が咲く木の三種で三大芳香木と呼ばれます。これに冬の蝋梅を加えて四大芳香木とすることもあるようです。これらは東洋で人気の芳香木ですが、西洋ではキングサリ、マグノリア、ライラック、ネムノキなどが芳香木の代表な存在です。

モクセイ科
金木犀が属するモクセイ科は約29属600種ほどの仲間があるとされています。
ジャスミン類やライラック、シルバープリペットなど香りのよい花を咲かせるものが多くあるのが特徴。オリーブもモクセイ科で、香りは弱いものの、花のサイズや形が金木犀によく似ています。

名前の由来
和名である金木犀は橙黄色の花色を金に例え、牧野富太郎博士が命名。科の総称であるモクセイとは木の肌が動物の「犀(サイ)」に似ていることに由来しています。英名ではFragrant olive(香り高いオリーブ)と呼ばれますが、こちらはオリーブがモクセイ科であることに由来しているのかもしれません。

金も銀も
白い花が咲く「銀木犀」をご存知でしょうか。実は植物学の分類では金木犀は銀木犀の変種とされています。違いは花色だけではなく、葉の周囲が少しギザギザしていて、開花は金木犀より少し遅れて咲きます。香りは似ていますが、金木犀より柔らかな香りです。


花毎の花言葉・金木犀「癒し」

金木犀の一般的な花言葉は、よい香りに比して花が小さいことから「謙虚」、香りに酔いしれる「陶酔」などです。

古今問わず、金木犀の香りは人を魅了していますが、特にここ数年「キンモクセイの香り」または「オスマンサス*の香り」といった化粧品などが増え、この香りの人気が高まっているようです。
ちなみに、金木犀の香りにはリナロールという成分が含まれていて、いら立った気分を静めたり、気持ちを落ち着かせたりするリラックス効果があるとされています。
多くのストレスにさらされる今、この香りが人気なのは知らず知らずのうちに金木犀の香りに癒されているからかもしれません。
どこからともなくやさしい甘い香りを届けてくれる金木犀に「癒し」という花言葉を贈りたいと思います。

*オスマンサス=キンモクセイの学名に由来する名前


文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など