第八十二話 小暑の花絵「睡蓮」
2021.07.07
暮life
2021年7月7日から二十四節気は「小暑(しょうしょ)」に
この日を前後に梅雨が明けて、本格的な暑気に入るとされる節気です。
しかしながら、現在の気候では日本列島の多くは梅雨の最中であり、二十四節気の中でも意味合いのズレを感じる節気です。
また、小暑が始まる7月7日は七夕ですが、こちらも前出のごとく晴れることの少ない日です。現代のカレンダーからするとと節気の気候はずれているように感じますが、旧暦を使っていた時代の七夕は8月にあたり、梅雨が明けている時季だったことがわかります。
浮世絵にも星空が描かれた作品があり、夜がしっかりと暗く、空が澄んでいた当時は七夕の天の川も見えていたのかもしれません。
「睡蓮(スイレン)」
□開花時期:(熱帯スイレン)7月~10月中旬(温帯スイレン)5月中旬~10月
□香り:あり (主に熱帯スイレン)
□学名:Nymphaea
□分類:スイレン科 スイレン属
□和名:睡蓮
□英名:water lilies、water-lilies、waterlilies
□原産地:(熱帯スイレン)熱帯アフリカ、南米、オーストラリア、熱帯アジアなどの熱帯地域(温帯スイレン)世界の温帯域
温帯スイレンと熱帯スイレン
スイレンには大きく分けて温帯スイレンと熱帯スイレンの2品種が存在します。
一見よく似ていますが、それぞれ特徴が異なります。
□温帯スイレン
暑さ:やや弱い
寒さ:強い
花:水面に浮いて咲く
香り:微香
色:ピンク、赤、白、黄色青系無し、淡色が多い
開花時間:昼咲きのみ
葉:丸
根:ワサビのような形
□熱帯スイレン
暑さ:強い
寒さ:弱い
花:茎が水面から飛び出して咲く
香り:有、強香タイプも有
色:ピンク、赤、赤紫、紫、白、黄色、青など
開花時間:昼咲き、夜咲きの品種あり
葉:ギザギザ(鋸葉)
根:イモ型や球根型
モネと睡蓮
画家と花の関係で最も知られているのがクロード・モネと睡蓮ではないでしょうか。
晩年までの30年間に描かれた約250点の睡蓮の作品は、フランス・ジヴェルニーのモネの自邸に作った「水の庭」を描いたものです。
小川から水を引き込んだ池に、無数の睡蓮が咲く様子を捉えていますが、花が水に浮くように咲いている姿が描かれていますので、ジヴェルニーの気候に合っていた温帯スイレンが植えられていたと思われます。
日本にあるモネの庭
フランス・ジヴェルニーのモネの庭は観光地として一般に公開されていますが、日本でもこのモネの庭をイメージした庭を見ることができます。
高知県・北川村「モネの庭」マルモッタン
モネ財団からジヴェルニーの庭園以外で唯一「モネ」の名を使うことが認められている庭園。
香川県・地中の庭
直島にある地中美術館にはモネが最晩年に描いた5点の睡蓮の作品が展示されており、敷地内の「地中の庭」ではジヴェルニーの庭にある植物と直島の環境に合う植物を植栽した庭園が造られています。
静岡県・浜名湖ガーデンパーク
2004年に開催された浜名湖花博の際に「花の庭」と「水の庭」誕生。水の庭のスイレンは前出の北川村「モネの庭」マルモッタンから株分けされたものだそう。
睡眠する花
朝開き、夕方に閉じる=睡眠する、ことから「睡蓮」と名が付いたとされています。
多くのスイレンはこのサイクルを3日繰り返し、咲き終わると水に沈み、次の花が上がります。一方、スイレンの一種であるヒツジグサ(未草)は未の刻 (午後2時) 頃に花を咲かせることから未草の名が付きましたが、実際には11時ごろから咲き始め、16時ごろにしぼみます。
花毎と睡蓮
二十四節気の花絵で桜と並んで最も多くモチーフになった花が睡蓮です。水上多摩江さんが描いた3作の睡蓮はどれも趣が全く違いますが、今作は夏の始まりを告げるような、熱帯スイレンがある景色です。
花毎の花言葉・睡蓮「めぐり逢い」
エジプト神話やギリシャ神話、そして仏教などに「泥に染まらない花」として登場することから「清純な心」「信頼」「信仰」などといった花言葉が付けられています。
一方、花毎が名付けた睡蓮の花言葉「めぐり逢い」とは、睡蓮の花は開閉を繰り返し、やがて水中に沈んでいくことにちなみました。
閉じた花も、時が来ればまた開く──
そんな未来を待つ気持ちをこの花言葉に込めました。
文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
水上多摩江
イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など
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