週末の一輪

週末、自分のために花を飾りましょう。
花を手軽に楽しむコツを第一園芸のフローリストがご紹介します。

vol.13 ドリコスルビー ──初冬の気配を色と形で楽しむ

2025.11.27

life

週末に、ちいさな楽しみを。
「週末の一輪」は、日々の暮らしにそっとなじみながら、さりげない存在感を放つ季節の一輪を選び、異なる飾り方で少しずつ表情を変えながら、最後まで楽しみつくすための提案です。
月替わりで登場する第一園芸のデザイナーが、生け方の工夫や花との向き合い方をご紹介。
毎週木曜の夕方、週末の始まりに、暮らしにそっと花を添えるひとときをお届けします。


冬の始まりにシックな彩りを

11月も終わりに近づき、街の景色は冬の静けさを帯びながらも、秋の名残を感じる色がまだ残っています。
そんな初冬の週末に、艶やかな紫の豆が印象的な「ドリコスルビー」を主役に、前半はその美しさをシンプルに楽しみ、後半は「コニカルブラック」を加えて、質感のコントラストを生かしたアレンジをご紹介します。

ドリコスルビーは、光沢のある紫の豆としなやかなつるが特徴。
豆の質感と色合いが、初冬の空間に落ち着いた華やぎを添えてくれます。
シンプルな花器に生けるだけで、アーティスティックな雰囲気が漂う、印象的な花材です。

「ドリコスルビー」の基本情報
□出回り時期:夏~秋
□学名:Lablab purpureus
□分類:マメ科 フジマメ属
□別名:フジマメ
□英名:Hyacinth bean
□原産地:熱帯アジア・アフリカ

まず最初はドリコスルビーのシルエットを活かして生けます。
つるのユニークな動きを意識して配置することで、シンプルながら存在感のあるアレンジに仕上がります。

■ 花器について
リブの入ったガラスを階段状に積み上げたような、個性的な花器を使用しました。
段差の部分に枝がとまりやすく、生けやすいデザインです。

■ 生け方のコツ
・ドリコスルビーに限らず、植物の切り口は斜めにカットすると水を吸う面が増え、水揚げが良くなります。
・切り口を斜めにすることで、花器との接地面が増え、植物が安定しやすくなります。
・実の多いものは短めに、少ないものは長めに使うと、バランスよく見えます。


色と形を間近で楽しむ

後半は、深い黒の質感が印象的な「コニカルブラック」を加えます。
ドリコスルビーの艶やかな紫と、コニカルブラックのマットな黒が響き合い、モダンで洗練された雰囲気に仕上がります。

■ 花器を替えて、もうひとつの楽しみ方
後半では、同じデザインの花器を3つ組み合わせて使用しました。
手吹きガラスの丸い一輪挿し(縦横約9cm)は、手作りならではの微妙な形や色の違いが魅力です。
同じタイプの花器でも複数持っていると、アレンジの幅が広がります。

■ 組み合わせる花材《コニカルブラック》
コニカルブラックは、深い黒の質感と独特のフォルムが印象的な花材です。
マットな黒がドリコスルビーの艶やかな紫と響き合い、アレンジにモダンで洗練された雰囲気を与えてくれます。
色彩のコントラストを楽しみたいときにおすすめの花材です。

■ 生け方のコツ
・口が狭い花器には、細いノズルの水差しを使うと便利です。写真のようなジョウロは水量の調整がしやすく、屋内での水やりにも適しています。
・ 複数の花器を組み合わせる場合は、生ける花材の量に変化をつけるとリズム感が生まれます。今回の例では、右奥の花器に大きめの枝や目立つ実ものを挿し、その他の花器には小枝をあしらっています。

■ お手入れと長持ちのコツ
・リコスルビーは水をよく吸うため、こまめな水替えを心がけましょう。
・コニカルブラックも同様に、茎を斜めにカットして水揚げを良くします。

11月の担当:山口 愛(第一園芸 フローリスト)
「今回は、初冬の空間に艶やかな彩りを添える花材を選びました。
前半はドリコスルビーだけでシンプルに、後半はコニカルブラックを加えて、質感のコントラストを楽しむアレンジに仕上げています。
週末のひとときに、季節の移ろいを感じるしつらえを試してみてください」


■ 11月の週末の一輪を通して

秋から冬へと季節が移ろい、空気に冷たさと静けさが漂いはじめる11月。
「週末の一輪」では、枝ものや実ものを中心に、深まる秋と初冬のニュアンスを楽しめる4つの花をご紹介しました。

ニュアンスで季節をしつらえる《ライスフラワー》
線の美しさを際立たせる《ドラゴン柳》
色とりどりの実りでアクセントを添える《パニカム》
艶やかな紫が印象的な《ドリコスルビー》

それぞれの花材が持つ質感やフォルムが、季節の空気と響き合いながら、週末の空間に豊かな表情をもたらしてくれました。
花を少し変えるだけで、空間の雰囲気がふっと変わる──そんな楽しみを感じていただけたなら嬉しく思います。
来月もまた、新しい一輪とともに、暮らしに寄り添う小さな提案をお届けしてまいります。

第一園芸 日本橋店

東京都中央区日本橋3-3-11 第一中央ビル 1階
電話番号 03-6696-8730
営業時間 11:00~19:00
アクセス 日本橋駅 約300m(徒歩約4分)/八重洲地下街出口 約40m(徒歩約1分)

第一園芸 全店舗情報
https://www.daiichi-engei.jp/shoplist/
第一園芸 オンラインショップ
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Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子