二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第三十二話 大寒の花あしらい「フリージア」

2024.01.20

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2024年1月20日から二十四節気は大寒に

大寒(だいかん)とは、二十四節気最後の節気。
次の立春から新しい節気の一年が始まります。
また大寒の字の通り、一年で最も寒さが厳しい時期でもあります。

そんな冬の終わりに選んだ花は「フリージア」

春の花でありながら、凛としていて、どこか少し冷たい空気も感じるフリージアは、この季節にふさわしいと花だと思います。

寒さが厳しいこの時期に、香りのよいフリージアを飾って、ひと足はやい春の気配をお部屋に取り入れましょう。

冬の終わりと春の始まりの穏やかさを表現

フリージアの最大の特徴は何といっても香りではないでしょうか。
金木犀(きんもくせい)にも似た、エレガントで甘い香りを漂わせる、すらりとした姿がスタイリッシュな春の花です。

今回選んだ品種は、フリージアと言えばこちら!代表的な品種である黄色の「アラジン」と、花びらが重なり合う白い八重の花「エッセンス」

黄色と白のフリージアを別々の器をつかい、高低差を付けて光の方に傾けていけました。
凛とした冬の寒さの中に感じる、春の穏やかさを表現しています。

フリージアは花の向きがはっきりとしているので、自分がいけたい形にフィットするものや、好みの向きのものを花屋さんで選ぶとプロっぽい仕上がりになると思いますよ。

ざっくりとナチュラルにいける

今度は色の違うフリージアを一つにまとめてざっくりと。

ピッチャーのようなカジュアルな器にいける際は、あまり作りこみ過ぎず、ざっくりいけた方がまとまりやすいと思います。

また、このような非対称の器にいける時は、花も左右対称のバランスでいけるよりも、ハンドルとは逆の方向に花を傾けたほうがバランスよく仕上がりますよ。

色をプラスして冬の終わりの賑わいを表現

冬の終わり、春の始まりに感じるざわざわした賑わいを、彩りをプラスして表現してみました。

ベースにしたのは、雪の結晶のような銀葉が美しい「ダスティーミラー シルバーダスト」。
青とグレーに染めた鮮やかな「スイートピー」で大体の大きさを決めて、フリージアをいけます。フリージアのすらりとしたラインを活かすように、あえて長めにしています。
空間が開いているところに、白い星型の小花「アストランチア」をいけたら、最後にアクセントになる、紫の「ベロニカ」をいけて全体のバランスを整えましょう。

黄色の反対色の青を加えることで、賑わいのある花あしらいになりました。
反対色の組み合わせは、ビビットで夏のような色合わせになりがちですが、くすんだグレーやシルバーの葉を加えることで冬の雰囲気を出しています。

器もガラスとバスケットで全く印象が異なります。器を変えて様々な姿を楽しみましょう。
次も器を変えて印象を変えたフリージアをご紹介しますね。

器を変えて、変わる季節を楽しむ

フリージアは花がとても長持ちするので、水替えの際に器も変えて、雰囲気の変化を楽しみましょう。

ひんやりとした印象のガラスにいけたフリージアは、傾けていけて。冬のかすかな日差しに向かっているようなイメージです。

もうひとつは温かみのある陶器の器で春をイメージした花あしらいです。
いけ方も作りこまずナチュラルにして、春の陽だまりのような暖かさを表現しました。

器が変わると花の傾きも変わるので、花の表情が全く変わります。
変わった花の表情もぜひ楽しんでくださいね。

一輪挿しをトレーでおめかし

フリージアは花や茎、葉のバランスが絶妙!とてもスタイリッシュなので、ぜひ一輪挿しで花姿全体を楽しんでいただきたい花です。

リビングに人が集まる時などは、一輪挿しも一か所に集めてオブジェのように飾ってみてはいかがですか?

トレーにまとめて飾るだけで、少しだけおめかしした花あしらいになります。
ぜひお試しくださいね。

バスケットに入れてカジュアルに楽しむ

あれもこれも花を飾れるかも…という目線で一度おうちの中を眺めてみてください。
普段は果物を入れているバスケットにフリージアをいけてみました。

低めの花瓶やコップに水を入れて、バスケットにセットして花をいけるだけ。
ナチュラルなバスケットに合わせると、ほっこりしたカジュアルな印象の花あしらいになりますよ。

シンプルに一輪で楽しむ

フリージアは下から先端へ向かって順に咲き進んでいきます。
先の方にある固い蕾は咲かせることが難しいのですが、ほころびかけた蕾はだんだんと開いていく様子を楽しむことができると思います。

また最初に咲いた花から萎れていきますので、花の下にある緑のガクのところからハサミでカットするか、花を引き抜いて萎れた花を取り除きましょう。こうすることで美しい花姿をより長く楽しむことができますよ。

お手入れを続けて、花が少なくなってきたら、思いきって茎を短くカットして飾ってみると、器とのバランスがとりやすくなると思います。

フリージアの美しさを楽しむ

短くカットしたフリージアをいけて、しなやかな蕾や葉を丸い器に添わせてみました。

清らかな水のきらめきと、みずみずしいフリージアとのハーモニーがこの季節にふさわしい、小さくて美しい花あしらいです。

体調を崩しやすいこの時期ですが、心や体をフリージアの香りで整えて、もうすぐやってくる春を迎えましょう。

フリージアの花言葉は「希望」。
皆さまの心に希望があふれますように…

「フリージア」の基本情報

□出回り時期:11~3月
□香り:あり
□学名:Freesia
□分類:アヤメ科フリージア属
□和名:香雪蘭(こうせつらん)、浅黄水仙(あさぎすいせん)
□英名:Freesia
□原産地:南アフリカ(主にケープ地方)
□花言葉:「希望」「あどけなさ」「純潔」「親愛の情」など


花毎でご紹介しているフリージアのお話

水上多摩江さんが描いたフリージアの花とその由来
二十四節気の花絵 第九十一話 清明の花絵「フリージア」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。現在は広報としてリリースなどの社外発信を担当。