二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第百一話 雨水の花絵

2023.02.19

life


2023年2月19日から二十四節気は「雨水」に

雪が雨に変わって、雪解けがはじまるころを表した節気です。
二十四節気では二番目の節気となり、初春にあたります。


雨水の行事「上巳の節句/桃の節句」
雨水の時季にあたる3月3日は「ひな祭り」として親しまれている「上巳の節句/桃の節句」が行われます。
現在では「桃の節句」や「ひな祭り」の名がなじみ深いですが、かつては旧暦3月最初の巳の日に行っていたことから、本来は「上巳(じょうし、じょうみ)の節句」とされています。

雛人形
雛人形は古来、穢れや災いを避ける願いを込めて形代(人の形をした紙)で体を撫で、その形代を川に流したことに由来する「流し雛」と、平安貴族の子女に流行った「雛遊(ひいなあそび)」という人形遊びが結びついたことが起源だと考えられています。
雛人形を飾るタイミングは雨水に入った日に出し、啓蟄(雨水の次の節気)にしまう、という説もあるようです。
ちなみに女雛と男雛の左右の位置は、全国的に多い関東雛の場合は向かって右にお雛様(女雛)、左側がお内裏様(男雛)となり、京雛はその反対となります。

桃の花
旧暦の3月3日ごろは桃が咲く時季にあわせて「桃の節句」とも呼ばれ、ひな祭りに欠かせない花です。
ただ花が可愛らしいだけではなく、桃は成長が早く、多くの実をつける生命力があることから邪気を祓い、不老長寿を授ける仙木として、女児の健やかな成長への願いを込めて飾られます。

桃と梅の見分け方
ひな祭りのころになると花屋の店先に桃の花が並びますが、露地では梅が咲いていたりと、よく似た桃と梅の花は見分けがつきにくいかもしれません。
違いは開花の時期が梅は1月から4月ごろ、桃は3月下旬から4月上旬。桃は花と葉が同時につきますが、梅は花だけ。花弁の形も違っていて、桃はやや先が尖り、梅は丸いのが特徴です。


花毎の花絵「はじまりの物語」

縦に長い日本では、この雨水の時季は厳しい寒さが続く街もあれば、春真っ盛りの街もあり、季節のグラデーションが現れるころです。

100作目となった前作と対を成す作品である本作は、冬の小道を描いた「はじまりの物語」が、歩みをすすめて春の小道へとつながり「はじまりの物語」になる、そんなイメージを描いていただきました。

季節は確実に春へ向かっています。冬の花から春の花へ、一年でももっとも華やかな季節がもうすぐはじまります。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など