二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第百十五話 清明の花絵「ネモフィラ」

2024.04.04

life


2024年4月4日から二十四節気は「清明」に

季節は早くも晩春に。暦の上での春は清明と次の穀雨を残すのみとなりました。
この清明とは、万物が清らかにいきいきとした気がみなぎる様子を表した節気で、言葉の通り、桜をはじめとした春の花が盛りを迎える美しい時季です。


清明の季節感

春に三日の晴れなし
春の変わりやすい天気を表したことわざです。3月ごろから4月の前半ごろは低気圧と高気圧の入れ替わりが激しく、短い周期で天気が変わることから、こうしたことわざが生まれました。2024年の東京の春もこの通り、3月13日から16日*の4日間、快晴が続いた以外は曇りや雨、または晴れ時々薄曇りなど、天気が入れ替わり不安定な天気が続きました。

*気象庁発表 2024年3月の気象データ(日ごとの値)参照

清明祭
清明の節気期間に行われるのが、沖縄の重要な伝統行事である先祖供養の清明祭(シーミー)です。先祖の墓前に親族が集まって、お花やお線香のみならず重箱に入った料理やお菓子やお酒などをお供えし、そのあとにお墓の前でごちそうをいただくというもの。沖縄では親族間の一大行事として親しまれていて、ピクニックのような感覚で楽しまれているそうです。


「ネモフィラ」

□開花時期:4月~5月
□学名:Nemophila
□分類:ムラサキ科ネモフィラ属
□和名:瑠璃唐草
□英名:Baby blue eyes
□原産地:北アメリカ

名前の由来
ネモフィラは森林の周辺に自生していることが多いため、ギリシア語の「nemos=小さな森」と「phileo=愛する」に由来して名付けられました。英語圏では青い瞳を思わせる花の姿から、「baby blue eyes」と呼ばれることが多いようです。
和名では瑠璃唐草(るりからくさ)と呼ばれますが、こちらは花の色が瑠璃色であることと、葉の形が唐草文様に似ていることに由来しています。

青い花畑
日本では1990年代後半のガーデニングブームのころからガーデニング愛好家に人気の花苗でしたが、一般に知られた存在ではありませんでした。
ブームのきっかけになったのは茨城県の国営ひたち海浜公園などでの植栽です。ネモフィラのまるで空を映し出したような青い花畑が写真映えする場所として徐々に人気に火が付き、SNSのユーザーの増加と比例するように2013年ごろから急速に人気が高まっていきました。


花毎の花言葉・ネモフィラ「縁結び」

ネモフィラの一般的な花言葉は「どこでも成功」「純粋」「可憐」「永遠」などです。
「どこでも成功」は繁茂しやすい性質から、「純粋」「可憐」は花の印象から、「永遠」は青のイメージから付けられたと考えられます。
どれもネモフィラにぴったりな花言葉ですが、花毎では先にご紹介した和名の由来になった瑠璃唐草から花言葉を考えてみました。

この唐草とは特定の植物の名前ではなく、四方八方に絡みあって伸びる葉や蔓の形を指していて、これらを図案化したものがマンガなどにも出てくる風呂敷の柄としても有名な唐草文様と呼ばれるものです。途切れなく、手を取り合うように続く蔓の形が生命力や繁栄を表すことから縁起のよい文様とされてきました。

一面に広がる花に隠れて印象の薄い葉ですが、実は縁起のよい形をしているのは少し意外かもしれません。ネモフィラが広がる景色を見た方々が、なんらかのよきご縁で結ばれることを願って、ネモフィラ=瑠璃唐草には「縁結び」という花毎からの花言葉を贈りたいと思います。


文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など