第六十一話 立秋の花絵「チングルマ」
2020.08.07
暮life
2020年8月7日から二十四節気は「立秋」に
立春・立夏・立秋・立冬「立」という字がつく、四立(しりゅう)は二十四節気の中でも重要な節気のひとつです。
特に2020年は実際の季節感と節気の名が大きくかけ離れた年になりました。
それでも立秋に入れば、暑中見舞いは残暑見舞いとなり、日暮れの時間が早まり、風の向きや強さに秋の気配が漂ってきます。
「チングルマ」
山歩きがお好きな水上さんが、立秋のモチーフにと選ばれたのがこの花です。
8月のお盆の頃になると、チングルマは作品のような赤い綿毛になって、山の秋の訪れの早さを感じると伺いました。
ちなみに、綿毛になる前の姿は全く趣が異なり、7月ごろには白梅を思わせる可憐な花を咲かせ、やがて綿毛が飛んだ後、9月から10月にかけて一面を紅く染める草紅葉へと姿が移ろいます。
チングルマという名前は綿毛の姿が風車に見えることから「稚児車(ちごぐるま)」と呼ばれていたものが、転じて「チングルマ」となったとか。
花毎の花ことば・チングルマ「風を見る」
この花の一般的な花ことばは「可憐」ですが、それは綿毛になる前の白い小花の姿にちなんで名付けられたのでしょう。
しかし、この植物の魅力は花だけではありません。
高山植物のチングルマは短い季節の中で白い小花から、ここに描かれたような思いがけない姿へと変化します。
そして、チングルマの綿毛が揺れると、見えないはずの風が見えるようになるのです。
可憐な花の時よりも、実はこの綿毛の姿のほうが、より心に触れるものなのかもしれません。
人が抱く詩的な気持ちと植物の生態を重ね合わせ、「風を見る」という花ことばをチングルマに添えたいと思います。
文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
水上多摩江
イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など
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