二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第七十一話 小寒の花絵「胡蝶蘭」

2021.01.05

life


2021年1月5日から二十四節気は「小寒」に

あけましておめでとうございます。

1月5日はまだ松の内ということで、新年のごあいさつからはじめさせていただきました。
この「松の内」は東日本以北は7日、西日本は15日、東海・中部地方は混在といったように、地域によりさまざまです。
花毎のように二十四節気に基づいて物事を動かしておりますと、新暦の1月1日は暦の谷間にあたりますので、季節の変わり目といった印象は薄いように感じる時です。

さて、1月5日の小寒は「寒の入り」の日。
この小寒から大寒の終わりである節分までを「寒の内」といい、一年で最も寒さが厳しい頃ですが、次節気の大寒より小寒の方が寒い地域が多いようです。
小寒の中には農作物の吉凶を占う日があり、寒の入りから四日目(今年は1月8日)にあたる「寒四郎」は晴れなら豊作、雨や雪なら凶作。九日目(1月18日)は「寒九の雨」といい、この日に降る雨は豊作の兆しとされ、喜ばれてきました。

「胡蝶蘭」

□開花期:不定期
□香り:無し
□学名:Phalaenopsis aphrodite
□分類:ラン科コチョウラン属(ファレノプシス属)
□和名:胡蝶蘭
□英名:Orchid
□原産地:台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシアなど

開業祝いなどでずらりと並ぶことでもおなじみ、贈答用の花の代名詞ともいえるのが胡蝶蘭です。
約200年前に発見された胡蝶蘭はイギリスを経て、1900年頃に日本に入ってきました。
当時はたいへん珍しい花で、ごく一部の限られた人々だけのものでした。
その後、1970年代に素焼きの鉢に植えられた素朴な印象であった胡蝶蘭を、鉄線を使って花が正面を向くように仕立て、3株を化粧鉢に寄せ植えした現在の贈答用胡蝶蘭を考案したのが、わたくしども第一園芸であったと伝え聞いています。しかし、この頃は胡蝶蘭の開花サイクルがわからず、通年出回るものではありませんでした。
1980年代になると開花サイクルが判明し、一年中花を咲かせることができるように。
気高く美しい花はもちろんですが、室内で花が楽しめる上に花持ちが良いこと、一年中安定して出回ることから、贈答用の花として現在の地位を確立しました。


花毎の花言葉・胡蝶蘭「夢をかなえる」

一般的な胡蝶蘭の花言葉は「幸福が飛んで来る」などです。
和名の通り、蝶が飛んで来るような姿であることから付けられたと思われる、贈りものにふさわしい、とても素敵な花言葉だと思います。

また、ウエディングの花としても人気で、ヘッドピースとして(アーティフィシャルフラワーではありますが)胡蝶蘭を付けた昭和の大スターの花嫁姿はとても印象的でした。

完璧ともいえる胡蝶蘭の花言葉にもうひとつ言葉を付け加えさせていただけるのであれば、「夢をかなえる」という言葉を捧げたいと思います。

夢がかなう、のではなく「かなえる」

自らの力で夢を取りにいく、そんな願いを込めました。
繊細な印象がある胡蝶蘭ですが、実は水も光も足りない場所でも逞しく育つ、力強さのさる植物です。
そして、この花に魅せられた人々の執念ともいえる熱量が生み出した現在の姿を重ねて、この言葉を花毎の花言葉といたします。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など