二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第八十話 小満の花絵「薔薇・四季の香」

2021.05.21

life


2021年5月21日から二十四節気は「小満」に

小満は啓蟄、清明と同じ、二十四節気の中で三つだけある、生きものの動きを表した区分です。
江戸時代に書かれた二十四節気の解説書「暦便覧」によると「万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る」とあり、あらゆる生きものがいきいきと成長していく時を表しています。
梅雨の一歩手前、春の花と夏の花が入れ替わる谷間の季節です。


「薔薇」

□開花時期:5月中旬~6月上旬(主な開花期)、6月中旬~11月(品種によって適時開花)
□香り:品種によって異なる
□学名:Rosa
□分類:バラ科バラ属
□和名:薔薇(そうび/しょうび)
□英名:Rose
□原産地:アジア、ヨーロッパ、中近東、北アメリカ、アフリカの一部

古来より世界各国で愛され、現在では約2万品種以上あるともされるバラは咲き方や香りなどさまざまな分類が行われています。ここでは知っていると更にバラが楽しめる、大まかな分類をご紹介します。

■作出時期による分類
・野生種
原種ともいわれる種類で、さまざまなバラのルーツです。北半球に150から200種ほどが存在するとされ、万葉集に登場する「ノイバラ」もこの仲間です。
・モダンローズ
1867年にフランスのギョーが生み出した「ラ・フランス」がモダンローズ第一号です。現在では一般的な「四季咲き」という冬以外に開花する性質があり、当時は画期的な花であり、この花からバラの歴史が変わり、品種改良が進むきっかけとなりました。
・オールドローズ
「ラ・フランス」以前のバラをオールドローズと呼びます。ロマンティックで香り高いタイプのバラです。「一季咲き」という春だけ開花する品種も多くあります。

■咲き方
・平咲き
一重、半八重、八重などさまざまありますが、花びらの中心が高くならず平らに揃います。多くの野生種は一重でこの咲き方をします。
・カップ咲き
横からみた時にティーカップのようなシルエットになる咲き方です。高さがある深いタイプを「ディープカップ」、浅いタイプを「シャロ―カップ」、花芯が見えるタイプを「オープンカップ」というように、細分化して呼ぶこともあります。
・ロゼット咲き
花弁の数が多く、大小の花弁が複雑に重なる咲き方です。更に花の中心部が4つに分かれたものは「クォーターロゼット咲き」と呼ばれます。
・剣弁高芯咲き(けんべんこうしんざき)
花の中心部が高く、花開いてくると外側の花弁が反り返ったようになる咲き方です。モダンローズに多いタイプです。

■香り
・ダマスク
華やかで強い甘さを感じる、オールドローズに多いタイプの香りです。バラの香りの製品の多くはこのタイプです。
・フルーティー
桃や杏といった果物を連想させる香りです。品種によってその香りは大きくことなり、甘いものから爽やかなものまでさまざま。ダマスク(クラシック)とティーを掛け合わせて生まれた香りともいわれています。
・ブルー
甘さの中にもシャープな爽やかさがある香りです。青味を帯びたバラに多くある香りであることから、ブルー系と呼ばれています。
・スパイス
スパイスのクローブ(丁子)を思わせる香りです。日本に古くからあるハマナスもこのタイプです。
・ミルラ
ハーブのアニス似た、甘さの中にスパイスが混ざった独自な香りです。
・ティー
開封したての紅茶と例えられる香りです。ほのかな香りで、東洋のバラに由来する香りで、茶系のバラに多い香りです。


薔薇・四季の香

今回は薔薇のすすめの執筆者であり、バラ育種家の忽滑谷史記(ぬかりや ふみのり)さんが、練馬区光が丘の『四季の香ローズガーデン』のシンボルローズとして作出した『四季の香(しきのかおり)』を水上多摩江さんに描いていただきました。

この春、『四季の香ローズガーデン』のリニューアルオープンと同時に発表されたこのバラは、いくつもあった試作品種の中から選ばれたもの。
木漏れ日のような黄色とピンクの色合いが、光が丘の「光」のイメージとぴったりだったから、と忽滑谷さんは言います。

光の輝きがその時々で違うように、このバラも二つと同じ柄の花は無いのが魅力。
ティーの香りが漂う、このバラを『四季の香ローズガーデン』でお楽しみいただければと思います。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など