庭の中の人

庭に関わる人々のインサイドストーリー。

第五話 雨の日

2020.10.23

study

雨の日、庭師やガーデナーは何をしているのでしょうか。もちろん、お休みではありません。
雨の日は木やはしごが濡れて、滑ると大変危ないので、高いところには登りません。どうしても進めなければいけない草刈りや掃除などの作業があるときは合羽をきて作業します。ですが、雨が強すぎると使用する機械も壊れてしまうのでそこはお天気と相談しながら進めます。

雨が降ると予定が崩れて仕事が後ろ倒しになってしまうし、合羽を着ての作業も快適とは言えないので、どうしてもため息が出てしまうことがありますが、雨でうれしいこともあります。それは植物に水やりをしなくてもいいことです。夏場は特に、花壇に植えてある植物などは水やりをさぼってしまうとすぐにしなしなになって枯れてしまうものもあります。雨が降ると、この水やりの作業をスキップできるのです。もちろん降水量にもよりますが、土の中まで浸透してくれる量の雨が朝方に降ってくれたときなんかは最高です。水やり作業の時間を別のことに充てられるのです。

切れ味抜群。常にぴかぴかに研がれたハサミ。

一日中雨が降っている場合は、庭師の命でもあるハサミなどの刃物を研いだり、機械のメンテナンスをしたりする時間ができます。よく使うハサミはみんなピカピカに研いでいるので、切れ味抜群。うちのキッチン包丁も研いでほしいくらいみなさん研ぐのが上手です。そして作業場や現場詰所も念入りに掃除します。仕事ができる庭師がいる現場はとにかく作業場や倉庫などがキレイなんです。おいしいラーメン屋さんの厨房がキレイなのと一緒ですね。

さて、最近では類を見ないほど強烈な台風が日本を襲うことがあります。倒木して道路や線路が寸断されたり、大きな枝が折れて建物が損傷したり。成熟しきった街路樹や、手入れがされていない木々が折れて大きな被害がでたりします。なので台風がくる前日には安全点検が欠かせません。
倒れそうな植木鉢を安全なところへ移動したり、飛ばされそうなものを頑丈なものに結わえたり。いかにも折れそうな木や枝はあらかじめ伐採しておくこともありますし、倒木の危険がある木を健全な木々と太いロープでつないで倒木を防ぐ処置がとられることもあります。

このところ、地球温暖化による異常気象で倒木も増えました。樹齢数百年以上の立派なご神木に被害が出る場合もあります。どんなに手を尽くしても、やはり自然の脅威にはかないません。台風が過ぎ去った後に、管理している庭の被害を見に行くのはいつもドキドキです。大きな枝が折れて駐輪場の屋根がぺちゃんこになっていることもありました。二人がかりでないと持ち上がらない庭園のベンチが風の勢いで10mくらい先の池の真ん中に吹き飛ばされていることもありました。あっけなく折られている木々を前に、畏怖の念を抱くとともに、自然に対する人間の非力さに、なんとも切ない気持ちになります。

台風前夜は、いつも天気予報をみながら「どうか木々たちが無事でありますように」と空を見上げて祈るばかりです。最後はもう神頼みです。

はつやま さちこ

高校卒業後、英国へ留学。ロンドン郊外にあるOaklands CollegeのFloristry学科に在籍し、イギリスの国家資格を取得。2008年第一園芸株式会社に入社。ネット事業部を経て緑化事業部へ。各国大使館などを担当していたガーデナー。
現在は子育てのため一旦、退職して家庭生活を満喫中。
好きなことは食べ歩き、無計画旅行。昆虫食推進派。