庭の中の人

庭に関わる人々のインサイドストーリー。

第七話 落葉

2020.12.21

study

九品仏浄真寺の枯山水に落ちたイチョウの葉

落ち葉がはらりはらりと散る季節。
庭師にとって、毎年この時期の掃除は大変な作業です。掃いても掃いてもきりがなくて、きれいに掃除しても後ろを振り返ると掃除する前の状態に戻っている…
ひたすら風に舞い続ける落ち葉に心が折れそうになります。
そんな落ち葉を毎日掃除する同僚に、心持はどうしているのかと聞いたことがあります。
みんな口をそろえて言うのはただひとつ。
「振り返らないこと!」
それがポイントなのだそうです。一回掃いたところはもう振り返らない。ひたすら前を向いて進んでいくのだそうです。
毎日落ち葉を集めていれば、いつかはきれいになる。
すべての葉が落ち切るまでただ耐えるのみ、なのだそうです。

横浜・山下公園のイチョウ並木

さて、落ち葉の代表といえば「イチョウ」ではないでしょうか。
寒くなり始めたころ、街並みに黄色い彩りを添える落葉樹です。
イチョウにはオスの木とメスの木があって、銀杏が実るのはメスの木、というのはご存じですか。
木の周りに銀杏がたくさん落ちていたら、その木は女の子なんですね。いや、お母さんとでもいいますか。

銀杏の実には独特のニオイがあるので、苦手な人も多いはず。自分でも知らず知らずのうちに銀杏を踏んづけていて、室内や電車内で「なんかくさい…もしかして私?」と思ったら、靴の裏につぶれた銀杏が引っ付いていて周囲に迷惑をかけていた…なんてことも。
食べると美味しいのですが、ニオイがきついですよね。
街路樹に植える際、なるべくオスの木を選びたいところですが、銀杏が実るのは樹齢30年くらい経ったころから。
オスの木を選別して植えていたつもりが、ある年から銀杏がたわわに実るようになり、実はそれがメスの木だった!なんてこともあり得るのです。

三井倶楽部の庭園に落ちた銀杏の実

この銀杏はイチョウが色づき始める時期にたくさん落ちてきます。
銀杏好きの人はこの実を拾って水が入ったバケツに何日か入れておきます。この時、ニオイがキツイので外に放置。
周りのくさい果肉が腐り、種の状態になるまで水できれいに洗い、乾燥させたら八百屋さんで見かける白い殻に包まれた銀杏になります。
この殻の中にようやく「食べられる銀杏」が入っているのです。
食べるまでの道のりが長いこと!でも手塩に掛けた銀杏をつまみにちょいと晩酌、なんて粋ですよね。
自然の恵みを享受できるのも庭師の素敵な特典です。

落葉樹の剪定は葉が落ち切った冬場に行うのがベストです。特にイチョウは生長が早く、どんどん大きくなっていくので、将来の姿を想像しながら、どの枝を切り、どの枝を残すかを考えて剪定していきます。
そして次の年の紅葉の時期にまた、円錐状にカッコよく整ったイチョウが黄色く色付いていくのです。紅葉の季節にイチョウが列植された公園や並木道を通ると、思わず誰かと手を繋ぎたくなるような、ウキウキした気分になりませんか。
イチョウを健やかに、そして形よく色付かせる、このあたりは庭師の腕の見せどころです。

はつやま さちこ

高校卒業後、英国へ留学。ロンドン郊外にあるOaklands CollegeのFloristry学科に在籍し、イギリスの国家資格を取得。2008年第一園芸株式会社に入社。ネット事業部を経て緑化事業部へ。各国大使館などを担当していたガーデナー。
現在は子育てのため一旦、退職して家庭生活を満喫中。
好きなことは食べ歩き、無計画旅行。昆虫食推進派。