週末の一輪

週末、自分のために花を飾りましょう。
花を手軽に楽しむコツを第一園芸のフローリストがご紹介します。

vol.2 モカラを主役に──9月の空気に彩りを添える花のかたち

2025.09.11

life

週末に、ちいさな楽しみを。
「週末の一輪」は、日々の暮らしにそっとなじみながら、さりげない存在感を放つ季節の一輪を選び、異なる飾り方で少しずつ表情を変えながら、最後まで楽しみつくすための提案です。
月替わりで登場する第一園芸のデザイナーが、生け方の工夫や花との向き合い方をご紹介。
毎週木曜の夕方、週末の始まりに、暮らしにそっと花を添えるひとときをお届けします。


夏と秋、色の出会いを楽しむ

9月も2週目に入り、空の高さや風の温度に秋の気配が混じり始めています。
それでも日中には強い日差しが残るこの時季にぴったりなのが、色鮮やかで暑さにも強い、「モカラ」です。
洋ランの一種ですが、どこか野趣のある佇まいが、暮らしの中にも自然と溶け込みます。

今回は夏の名残を感じさせる鮮やかな色のモカラに、落ち着いた色合いのシモツケを合わせました。
色のコントラストを活かすように、花器の片側に傾けて生けます。
写真のようにアクセントとして小さな果実を添えると、色彩だけでなく、実りの季節の雰囲気も演出できます。

■ 主役の花材《モカラ・チャックワンピンク》
いくつもの花が付いた、鮮やかな色が特徴のモカラが今回の主役です。
しっかりとした花弁で花持ちも抜群。今回はフューシャピンクが美しい「チャックワンピンク」という品種を選びました。

■ 組み合わせる花材《テマリシモツケ・ディアボロ》
ブロンズのような葉色が美しい「ディアボロ」という品種のテマリシモツケは、鮮やかな花を引き立てる名脇役です。
水が下がりやすいため、使用前にしっかり給水させましょう。

■ 花器について
ここでは、ターコイズブルーが印象的な手吹きガラスの花器を使用しました。
一見難しそうに見える四角い花器ですが、コンパクトで奥行きが浅いタイプは、少ない本数でも生けやすい形です。

また、色付きの花器は花の色を選びそうですが、このような中間色の花器は意外にも幅広い色を受け止めてくれます。

■ 生け方のコツ
最初にテマリシモツケの葉を指します。長い枝は写真のように、2つのパーツに分けて使用することもできますので、花器の高さを考慮してカットしましょう。

水に浸かってしまう葉は取り除き、花器の口から葉が広がるように挿すと、モカラが狙った位置で留まりやすくなります。
仕上がりは、花と花器の高さが一対一になるように生けると、バランスよく見えます。


水に浮かべて楽しむ

花持ちのよいモカラですが、気温が高い時期はなるべく毎日水を替え、茎を少しずつ切り戻しましょう。
下の方の花から終わっていくので、残った花は水に浮かべて楽しむのもおすすめです。

モカラは水に浮かべても花弁がしっかりしているため、傷みにくいのも嬉しいポイントです。

■ もうひとつの花器
花を水に浮かべる場合は、花がよく見えるサラダボウルのような形の器が向いています。
ここでは、直径20cm程度の陶器の花器を使用しました。

モカラの茎はできるだけ短くカットすると、水に浮かべたときに美しく見えます。

テマリシモツケの葉も茎を残さずにカットし、葉を浮かべた後にモカラを置くように浮かべます。

お手入れと長持ちのコツ

モカラのようにタフな花でも、水はできれば毎日替えるのがおすすめです。
水が濁りやすい時季には、ぬめりやにおいが出る前に清潔な状態を保つのがポイント。

その際、茎の先を少しだけ切り戻すことで、水の吸い上げがよくなり、花もちがぐっとよくなります。
日常の手入れには、ワイヤーも切れる園芸用のハサミがひとつあると安心です。

スパッと切れる道具を使うことで、茎の断面がきれいに保たれ、植物への負担も軽減されます。
延命剤をお持ちであれば、最初に使うとより効果的です。水が傷みにくくなり、茎の詰まりやぬめりを防ぎ、清潔な水環境を保ちやすくなります。

こうしたちいさな手間を重ねながら、少しずつ変化していく花の表情を見守る時間も、
暮らしの中のささやかな楽しみになるかもしれません。

9月の担当:江辺 雄亮(第一園芸 フローリスト)
「色も形も少し個性的な花ですが、意外と暮らしになじみます。気温が高くても元気な花なので、気軽に飾ってみてください」

第一園芸 日本橋店

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Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子