週末の一輪

週末、自分のために花を飾りましょう。
花を手軽に楽しむコツを第一園芸のフローリストがご紹介します。

vol.4 バラを主役に──香りとともに楽しむ、9月の花のかたち

2025.09.25

life

週末に、ちいさな楽しみを。
「週末の一輪」は、日々の暮らしにそっとなじみながら、さりげない存在感を放つ季節の一輪を選び、異なる飾り方で少しずつ表情を変えながら、最後まで楽しみつくすための提案です。
月替わりで登場する第一園芸のデザイナーが、生け方の工夫や花との向き合い方をご紹介。
毎週木曜の夕方、週末の始まりに、暮らしにそっと花を添えるひとときをお届けします。


香りが秋を連れてくる

昼と夜の長さが入れ替わり、秋の夜長の季節がやってきました。
空気は涼しさを増し、感覚のひとつひとつに秋の気配がじわりと広がります。

今回ご紹介するのは、香り高いバラ「イブピアッチェ」。
甘く華やかな香りが空間全体に広がり、飾ったその場の空気までも変えてくれるような存在感があります。
月末の週末、暮らしに香りを取り入れてみませんか?

■ 主役の花材《バラ・イブピアッチェ》
香りのバラの代名詞ともいえる「イブピアッチェ」。
フューシャピンクの大輪の花からは、華やかな香りが漂います。
気温が下がる秋は香りの持ちもよくなるため、まさにこの季節に楽しみたいバラのひとつです。

■ 組み合わせる花材《ローズゼラニウム》
レモンのような香りを放つローズゼラニウムの葉が、今回のイブピアッチェのパートナー。さわやかな緑と香りが、イブピアッチェの魅力を引き立てます。

■ 花器について
厚手のガラス製で、どっしりとした安定感のある花器を使用。
サイズは横約12cm、高さ14cmほど。
口がすぼまった形状は少ない本数でも生けやすく、特に重さのある花材に向いています。
一つあると頼りになる、実用的な花器です。

■ 生け方のコツ
ローズゼラニウムは節の上でカットして2〜3本に分け、水に浸かる部分を意識して処理します。

ローズゼラニウムは、葉が交差するように挿します。こうすることで花留めの役割を果たし、あとから挿すバラが安定しやすくなります。

バラは、花のすぐ下の1〜2枚を残して葉を取り除くことで、水分の蒸散を防ぎ、水揚げが良くなります。


コンパクトに楽しむ

咲き進んだバラは、短くカットして再び楽しみましょう。
一輪でもブーケのように仕立てると、雰囲気ががらりと変わり、華やかさが際立ちます。

■ もうひとつの花器
生け替え用には、高さ13cm・横幅7.5cmほどの小さなガラス花器を選びました。
中央がくびれた形状は、茎が自然と留まりやすく、広がるブーケにも適しています。

ゼラニウムの葉は、黄変したものを取り除き、1枚ずつにカット。
小さなブーケのイメージで束ねた葉に、バラをそっと添えて仕上げます。

ボリュームのある葉と合わせるときは、バラを中心ではなく横に添えると、全体のバランスがとりやすくなります。

お手入れと長持ちのコツ

バラやローズゼラニウムの茎は、よく切れるハサミで斜めにカットすると、水の吸い上げがよくなります。
水替えのたびに茎の先を少し切り戻すと、水揚げ部分が新しくなり、花もちが長く保てます。

こうしたお手入れの際には園芸用のハサミがあると、ワイヤーのような硬い茎でもきれいにカットできるので便利です。

延命剤があれば、最初に使うのがおすすめ。
水の傷みを防ぎ、茎の詰まりやぬめりを抑えることで、清潔な状態を保ちやすくなります。

こうした手間をひとつひとつ重ねることで、花の表情の移ろいをより長く楽しむことができます。

9月の担当:江辺 雄亮(第一園芸 フローリスト)
「香りのある花を飾ると、ふとした瞬間に気持ちが和らぐように思います。特に今回使用した《イブピアッチェ》は数あるバラの中でも特に香り高く、ドラマティックな一輪です」


■ 9月の週末の一輪を通して
季節が夏から秋へとゆっくり移ろう9月。
「週末の一輪」では、その時季ならではの空気や光に寄り添う4つの花をご紹介しました。

凛とした姿が頼もしいマム。
鮮やかな色としなやかさを持つモカラ。
秋の深まりを映すようなダリア。
そして、香りで空間を包み込むイブピアッチェ。

どの花も、それぞれの個性がありながら、日々の暮らしにすっとなじみ、飾り方を変えるたびに新しい表情を見せてくれました。

花と過ごす時間は、気負わずに楽しむほどに、その魅力が自然と見えてくるものかもしれません。
来月もまた、新しい一輪とともに、週末のちいさな楽しみをご提案してまいります。

第一園芸 日本橋店

東京都中央区日本橋3-3-11 第一中央ビル 1階
電話番号 03-6696-8730
営業時間 11:00~19:00
アクセス 日本橋駅 約300m(徒歩約4分)/八重洲地下街出口 約40m(徒歩約1分)

第一園芸 全店舗情報
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Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子