週末の一輪

週末、自分のために花を飾りましょう。
花を手軽に楽しむコツを第一園芸のフローリストがご紹介します。

vol.39 ウスネオイデス ── 気配を生ける

2026.06.04

life

週末に、ちいさな楽しみを。
「週末の一輪」は、日々の暮らしにそっとなじみながら、さりげない存在感を放つ季節の一輪を選び、異なる飾り方で少しずつ表情を変えながら、最後まで楽しみつくすための提案です。
月替わりで登場する第一園芸のデザイナーやフローリストが、生け方の工夫や花との向き合い方をご紹介。
毎週木曜の夕方、週末の始まりに、暮らしにそっと花を添えるひとときをお届けします。


ユニークな植物をアクセサリーのように取り入れて

梅雨入りを前に、空気に少しずつ湿り気が増してくる頃となりました。
紫陽花が色づき始め、木々の緑もいっそう深みを増す季節。晴れの日と雨の日がゆるやかに行き来しながら、景色は初夏から盛夏へ向かう準備を進めています。

この時季は、花そのものの美しさだけでなく、空間に漂う空気感にも目を向けたくなるもの。そこで今回は、独特の存在感をもつ《ウスネオイデス》を主役にした「週末の一輪」をご紹介します。

■ 主役の花材《ウスネオイデス》
ふわりと垂れ下がる銀灰色の姿が印象的なウスネオイデス。
細い糸状の葉を幾重にも伸ばしながら育つ植物で、樹木や岩などに着生して生育します。根を土に張らず、空気中の水分や養分を吸収して生きるため、「エアプランツ(チランジア)」の仲間としても知られています。
その姿はどこか霧や煙のようでもあり、植物でありながら輪郭の曖昧な存在。花束やアレンジメントに加えると、空間に奥行きや軽やかさを生み出してくれます。
花を主役にするというよりも、花のまわりに漂う気配を演出する素材。そんな独特の魅力をもった植物です。

「ウスネオイデス」の基本情報
□ 出回り時期:通年
□ 香り:なし
□ 学名:Tillandsia usneoides
□ 分類:パイナップル科 ハナアナナス属
□ 別名:スパニッシュモス、サルオガセモドキ
□ 英名:Spanish Moss
□ 原産地:北アメリカ南部、中南米
□ 花ことば:不屈 など

■ 組み合わせる花材《姫リョウブ(コバナノズイナ)》
姫リョウブは、初夏に小さな白い花を穂状に咲かせる落葉低木です。
枝先に連なる繊細な花姿には、野の花のような素朴な趣があります。華やかさを競うのではなく、自然体の美しさで空間に季節感を添えてくれる花材です。
銀色を帯びたウスネオイデスと合わせることで、初夏の木陰を思わせる涼やかな表情を楽しめます。

■ 花器について
ウスネオイデスと姫リョウブの涼やかな雰囲気を引き立てる、白いガラスに水色のマーブル模様が入った花器を選びました。
くびれのある花器は、少ない本数でも花材を固定しやすい形です。

■ 生け方のコツ
・ウスネオイデスは基本的に空気中の水分を吸収して育つ植物なので、器に挿すというより添える感覚で使います
・ウスネオイデスは束になっているため、1本ずつに分け、姫リョウブの枝に渡し掛けます
・長く垂らすと動きが出て軽やかな印象になります


涼やかな色合いを楽しむ

ウスネオイデスのもうひとつの魅力は、さまざまな色を引き立ててくれること。
後半は淡いブルーに染色したアスチルベを組み合わせ、シャーベットのような爽やかな色合わせを楽しみました。
ふわりと広がるアスチルベの花穂と、軽やかに揺れるウスネオイデス。異なる質感同士が重なり合うことで、初夏の空気を閉じ込めたようなアレンジに仕上がります。
透明感のある色を添えるだけで、ウスネオイデスの持つ涼やかな魅力がいっそう引き立ちます。

■ 組み合わせる花材《アスチルベ》
アスチルベは、細かな花が集まってふんわりとした花穂をつくる多年草です。
やさしい霞のような質感が特徴で、アレンジメントにほどよいボリューム感を与えてくれます。
白やピンクのほか、近年は染色によるさまざまなカラーバリエーションも流通していますので、季節やテーマに合わせた色遊びも楽しめます。
水が下がりやすい花材のため、葉は取り除き、適宜切り戻すことをおすすめします。

■ 生け方のコツ
・あらかじめ水を入れておいた花器に、ウスネオイデスを垂らすように添えます
・その後、アスチルベを挿します
・バランスよくまとまる、口が細めの花器がおすすめです

■ 長く楽しむコツ
・ウスネオイデスはエアプランツの一種なので、花を飾り終えた後もお手入れ次第で長く楽しむことができます
・エアコンの風が当たらない場所に吊るして管理します
・風が通る(直射日光の当たらない)明るい場所で管理すると状態を保ちやすくなります
・乾燥が苦手な植物なので、気温が高い時期は日が落ちてから、毎日~3日に一度程度、霧吹きで全体を湿らせます(気温が低い時期は頻度を減らし、温かい日中に行います)

6月の担当:吉岡 美季(第一園芸 フローリスト)
梅雨入り前のこの時季は、花そのものだけでなく、空間に漂う空気感まで楽しみたくなります。ウスネオイデスは主張しすぎず、それでいて印象に残る不思議な存在。お気に入りの花にそっと添えるだけで、アレンジメントの表情を変えてくれます。植物をアクセサリーのように取り入れながら、初夏ならではの軽やかなあしらいを楽しんでみてください。


第一園芸 日本橋店

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Text・Photo 第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子