二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第百四話 小満の花絵「オリーブ」

2023.05.21

life


2023年5月21日から二十四節気は「小満(しょうまん)」に

初夏、二つ目の節気が始まりました。
名の由来については諸説あり、江戸時代に書かれた二十四節気の解説書『暦便覧』では「万物が次第に繁って天地に満ち始める」という解説が記されています。
一方、秋に蒔いた麦などの種が穂をつける頃であることから、農家が一安心する、つまり「小さく満足する」という意味で小満という説もあるようです。


「オリーブ」

□開花時期:5月~6月
□香り:あり
□学名:Olea europaea
□分類:モクセイ科 オリーブ属
□和名:オリーブ
□英名:Olive
□原産地:中近東、地中海沿岸、北アフリカ

歴史
人との関わりが最も古い植物のひとつで、紀元前3000年頃にはシリアやクレタ島などで栽培されていたといわれています。やがて古代ギリシア、そして古代ローマへと伝わり、気候の特性にあった地中海沿岸を代表する作物となりました。

日本との関わり
初めて日本に伝わったのは文久年間で、フランスから取り寄せた苗を横須賀で栽培を始めたという記録があります。しかし、この時はうまくいかず、明治時代になってから三重県以西の数か所で栽培が試みられました。
試験地の中で順調に生育したのは小豆島だけで、以後、小豆島が日本でのオリーブ栽培の中心地になりました。

神話
アテナ(知恵の女神)とポセイドン(海の神)がアテネの守護神を巡って争った際、ポセイドンは馬を作り出しましたが、アテナは地面からオリーブの木を生やし、果実を実らせました。神々はオリーブの方が人間に有益だとして、その土地の守護神としてアテナを選び、やがてギリシア全土でオリーブの栽培が盛んになったとされています。

ノアの方舟
大洪水から方舟に乗って生き延びた青年ノアが陸地を探すために鳩を放ち、その鳩がオリーブの枝をくわえて帰ってきたことから、水が鎮まり再び平和が訪れたことを知るという、聖書の一節にある物語です。このことからオリーブは希望のはじまり、そして平和の象徴とされるようになりました。


花毎の花言葉・オリーブ「豊穣」

さまざまな神話や伝説にもあるように、一般的なオリーブの花言葉は「平和」「知恵」などです。平和はノアの方舟から、そして知恵はギリシア神話に由来するといわれています。
古代ギリシアは果実から作ったオリーブ油で繁栄し、やがてローマ帝国に栽培技術や製法が伝播して、地中海沿岸に広められました。そして、現代の日本ではシンボルツリーなどとして人気の樹に。
ちなみに、オリーブは樹齢が長い樹のひとつであり、世界最古とされる樹はクレタ島にあるOlive tree of Vouvesといわれ、樹齢2000~4000年程度と推測されています。しかもこの樹は今だ実を付けているそうです。

古代から人に実りをもたらし続け、現代でも人を魅了するオリーブに「豊穣」という花言葉を贈りたいと思います。


【ご案内】
「二十四節気の花絵」は次回より毎月前半の節気に移動いたします。
次回は6月6日(火)芒種の午前7時に公開予定です。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など