二十四節気の花絵

イラストレーターの
水上多摩江さんが花毎のために描いた、
二十四節気の花々です。

第五十八話 夏至の花絵「チュベローズ」

2020.06.21

life


2020年6月21日から二十四節気は「夏至」に

二十四節気では二至二分(にしにぶん)と呼ばれる、一年を四分割する重要な節気のひとつが夏至です。
一年の中で最も昼が長い日であり、この日から本格的な夏に至るという意味でこの名が付きました。ちなみに二十四節気を円形に配置した時、夏至の対角線上にあるのが冬至。この二至の発見から二十四節気が生まれたとも言われています。

「チュベローズ」

水上さんが今回描いたチュベローズは、緻密な線を重ねて描かれた背景の暗闇に浮かび上がるような白い花のコントラストが魅力。
濃厚な甘い香りまでも感じるような作品です。

このチュベローズは月夜の晩に最も香るといわれることから、月下香(げっかこう)という美しい別名も。
原産地はメキシコで、テキーラなどの原料となるリュウゼツランの仲間。
日本には江戸時代後期に伝わり、当時はオランダ水仙と呼ばれていたそうです。
現在では香水の原料としても栽培されていて、チュベローズの名前が付いた香水も多数あるので、この花の姿を知らずとも、香りをご存知の方は多いかもしれません。


花毎の花言葉・チュベローズ〈夏の夜の夢〉

一般的なチュベローズの代表的な花言葉は「危険な楽しみ」などといわれています。
好みが分かれる、強く甘い香り故にこうした花言葉が付けられたのでしょう。
すっきりとしたシルエットの花と香りは夏のプレゼントにぴったりなのに、このような花言葉では贈りづらい……

そこで今回はシェイクスピアの喜劇〈夏の夜の夢〉のタイトルをこの花のために拝借しました。
このお話の季節はちょうど夏至のころ。さまざまな花の描写があり、夢とも幻ともつかない物語にはずっと花の香りが漂っているような印象があります。
チュベローズが登場する訳ではありませんが、夏の夜、そして夢と幻のようなこのお話に漂う花の香りこそ、チュベローズの甘い香りが似合うように思うのです。

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 琵琶湖の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など