二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第六十五話 寒露の花絵「すすき」

2020.10.08

life


2020年10月8日から二十四節気は「寒露」に

寒露とはこの時季に野の花に宿る露という意味で、秋の節気5番目にあたり、ここから本格的な秋が始まる頃です。
秋の花々が咲き始め、木々には紅葉の気配が。
自然がつくり出す、濃厚な色合いに包まれる時季のはじまりです。

さて、秋の彩を楽しむのが日中なら、空気が澄むこの時季の夜は輝く月が望める頃です。
2020年の寒露が始まる10月8日の頃の月は夜更けに昇ることから「更待月(ふけまちつき)」と呼ばれ、節気が終わる10月22日頃は西側が明るく輝く「上弦の月」に近づき、こちらは夜更けに沈んでいきます。
この時季、いにしえの人々が名付けた風雅な月を見上げてみるのも一興ではないでしょうか。


「すすき」

□開花期:9月~10月
□学名:Miscanthus sinensis
□分類:イネ科ススキ属
□和名:芒、薄、尾花
□英名:(Japanese) pampas grass
□原産地:中国、朝鮮半島、日本列島、台湾

各地のすすきが見ごろ、とのニュースを目にする時季です。
関東では箱根にある「仙石原すすき草原」がすすきの名所として名高い場所。
こちらの土壌は穀物を育てるには適さなかったため、屋根葺き用としてすすきを栽培した萱場(かやば)だったことに由来するとか。
一面のすすきは刻々と表情を変え、穂が出始めの9月はまだ緑色の葉とのコントラストが美しく、10月は白銀の穂に、そして見ごろが終盤の11月には黄金に輝くすすきに出会うことができます。


花毎の花言葉・すすき「光の花束」

すすきは荒れた土地でも育つ、生命力あふれる植物。
そのことから一般的な花言葉は「活力」などとされています。
確かに、群生して育ち2m近くまでなる草丈は迫力満点です。

しかしながら、すすき最大の魅力は光輝く穂。
秋の強い日差しを受け、風にそよぎ輝く穂は白金や黄金の波のようです。

そこで、花毎の花言葉は「光の花束」としました。
季節と植物と光がつくる、一瞬の奇跡。
誰のものでもないけれど、心に届いた贈りもの……
そんな思いを込めた花言葉です。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など