二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第六十七話 立冬の花絵「欅」

2020.11.07

life


2020年11月7日から二十四節気は「立冬」に

冬という字が入った季節がやってきました。
二十四節気における冬のはじまりです。

東京では木々が色づきはじめ、やっと秋を実感する頃です。
まだまだ冬には気候も気持ちも追いつきませんが、二十四節気ではこの立冬から立春(2021年は2月3日)の前日までが冬となります。
ちなみに、現在広く使用されている新暦(太陽暦)の冬は12月から2月であり、天文学的な冬は冬至(12月21日)から春分(3月20日)とされています。

とはいえ、南北に長い日本では、北国や高地は二十四節気の季節感を表すように初雪が舞い、南国ではまだ紅葉が真っ盛りといったように、場所によって全く異なる気候となる、季節の変わり目です。


「欅(けやき)」

□落葉期:10月~11月
□学名:Zelkova serrata
□分類:ニレ科ケヤキ属
□和名:槻(ツキ)
□英名:Japanese zelkova
□原産地:東アジア、日本

日本の代表的落葉広葉樹がケヤキです。
大きく枝を広げて育つケヤキは強風から家屋を守り、夏は茂った葉が日光を遮り、冬は落葉して日当たりをよくすることから屋敷林として長く親しまれてきました。
姿も美しく、葉が茂る時季はもちろん、水上さんが描かれた枝だけの姿もまた一興です。
このようなことから並木としても多く使われていて、埼玉県には「日本一長いけやき並木」と呼ばれる、17kmにわたって2000本以上のケヤキが植えられた場所も。
また、成長が早く、寿命が長いので巨樹となり、大切に保存されている大ケヤキも各地に存在しています。


花毎の花言葉・欅「ずっとそばに」

樹木ではありますが、ケヤキには意外にも花言葉が付けられていて、一般的には幸運、健康、長寿といわれています。
前出の通り、寿命が長いことなどからこのような言葉が付けられたのでしょう。
また、この木は古くは「槻(つき)」と呼ばれていましたが、これは「強き木」に由来したとされています。

幼いころに見た大木が、人生の折り返し地点を過ぎても同じ場所に佇んでいる──
時の短さ、長さと無縁な逞しい変わらぬ姿に、包み込むようなあたたかな力をもらうような気がするのです。
まるで心の実家であるような欅には「ずっとそばに」という花毎の花言葉を添えたいと思います。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など