二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第六十八話 小雪の花絵「パンジー」

2020.11.22

life


2020年11月22日から二十四節気は「小雪(しょうせつ)」に

 

小雪とは寒さが増すけれど、まだ大雪にはならず、わずかに雪が降り始めるころ、といった気象を表した節気です。
しかしながら、2020年の東京の気候は小雪とはほど遠く、初秋を思わせるような気候が戻ってきてしまいました。
それでも植物は着々と歩みを進め、都内は紅葉が見ごろを迎えています。

あまり一般的ではないようですが、桜に開花日があるように、紅葉にも「紅葉日」と「落葉日」というものがあります。
緑の葉がほとんど見えなくなった日が「紅葉日」で、落葉樹の8割の葉が落ちた日が「落葉日」。毎年気象庁がカエデの観測データを発表していて、2019年は11月27日が紅葉日で12月13日が落葉日でした。
今年は関東地方に大きな台風が上陸しなかったこともあり、例年より紅葉が美しく感じられます。


「パンジー」

□開花期:10月下旬~5月中旬
□香り:あり
□学名:Viola × Wittrockiana
□分類:スミレ科スミレ属
□和名:三色菫 (さんしょくすみれ)
□英名:Pansy
□原産地:ヨーロッパ

花が少なくなる晩秋から冬にかけて、カラフルな花を次から次へとたくさん咲かせるのがパンジーです。
和名である「三色菫」の通り、スミレがこの花のルーツ。
昭和の時代には紫、黄、白とその名の通り、三色ほどしかカラーバリエーションは無かったそうですが、現在では交配が進み、多種多様な花色と形の花が毎年登場しています。
今作では寒さの中で身を引き締めるように咲く姿をイメージされたという、クラッシックなタイプのパンジーを描いていただきました。
これから向かえる冬をたくましく乗り切る、そんな小さな強さを感じる作品です。


花毎の花言葉・パンジー「冬の宝石」

少しうつむくように咲く姿や顔のような花を例えて、フランス語で「もの思い」という意味のパンセからパンジーの名が付きました。
一般的な花言葉も同じく「もの思い」や「私を思って」とされています。

この花言葉が付けられた時代からパンジーはさまざまに交配され、もの思いといったイメージから、彩りの乏しい冬の景色の中で宝石を見つけたような気分にさせてくれる、可愛らしく華やかな花へと進化。
アメシスト、サファイア、アクアマリン、ローズクォーツ、ガーネット、トパーズ……
宝石のような色合いがあるパンジーは、花色が固定しないものも多く、気温などによって微妙な色の変化が現れるのも、二つと同じものが無い、宝石のようです。

唯一無二ともいえるパンジーの花の色を宝石に例えて、花毎の花言葉を「冬の宝石」としました。
ただ繊細なだけではなく、一輪の小さな花が個性を主張する、それが現代のパンジーです。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など