二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第五十四話 穀雨の花絵「勿忘草」

2020.04.19

life


2020年4月19日から二十四節気は「穀雨(こくう)」に

穀雨とは春最後の節気で、百穀(さまざまな穀物)を潤す春雨を表したことばです。
畑は種まきの季節となり、この時季の雨が植物の生長を促します。


「勿忘草(わすれなぐさ)」

「忘れな草」とも表記されるこの花はネモフィラなどと同じムラサキ科の一年草で「藍微塵(あいみじん)」という、色と姿を表した美しい別名も付けられています。
原産地のヨーロッパや日本の冷涼地では二年生~宿根草として夏越しも可能ですが、暑さには弱く、春から初夏が見ごろの植物です。

伝説と花言葉

勿忘草の名前の由来にはいくつもの伝説があります。
ドイツではドナウ川の水辺に咲くこの花を摘もうとして足をさらわれてしまい、摘んだ花を「私を忘れないで」と岸辺の恋人に投げ、水にのまれたという伝説が。

他にもアダムが楽園の植物全てに名を付けた時、神がそれぞれの植物に名前を覚えているかと確認して回ったところ”Myosotis”という覚えにくい名を付けられた青い花が、自分の名前を忘れてしまい、憐れんだ神に「名を忘れたことは気にするな、でも神を忘れてはいけない」と改めて”Forget-me-not”という名前を青い花に与えたという伝説もあります。

花言葉もその名の通り「私を忘れないで」や「真実の愛」といった伝説に基づいた言葉が選ばれています。


花毎の花言葉・勿忘草「星を拾う」

花毎の花言葉が「星を拾う」と表現したのは、この花の中心には鮮やかで黄色い小さな斑点があることに由来します。
宵の明星のごとく、いつも空を見上げている人だけが気づくような、小さく輝く星。
この花を贈り、贈られ、育てた人に小さな運が向く──
そんな願いを込めて、この花言葉を付けました。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など