二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第七十六話 春分の花絵「マーガレット」

2021.03.20

life


2021年3月20日から二十四節気は「春分」に

春分は夏至・秋分・冬至の「二至二分(にしにぶん)」という、天象に由来した区切りを表す節気です。

春分の前後3日間は春のお彼岸にあたり、お墓参りをされる方も多いことでしょう。
この頃に花屋に並ぶ、お墓参り用の花束は不思議な色の組み合わせであることにお気づきでしょうか。
これは自然界のあらゆるものが火・水・木・金・土の5種類の元素から成り立っているという、陰陽五行に由来するものと思われます。色に置き換えると〈火=赤、水=黒(紫)、木=青、金=白、土=黄〉となり、この色の花を組み合わせた花束が一般的にお供えの花として出回っています。
ただ、これには明確なしきたりがあるわけではなく、いつの間にかこの5色を使った日持ちの良い花が組み合わされ、こういったスタイルが定着したようです。
こうした花束以外にも、故人がお好きだった花や季節の花を手向けても、ご供養の気持ちが伝わることと思います。

「マーガレット」

□切り花出回り時期:10月~5月
□香り:あり
□学名:Argyranthemum frutescens
□分類:キク科モクシュンギク属
□和名:木春菊(モクシュンギク)
□英名:Marguerite
□原産地:スペイン領カナリア諸島

恋占いの花
ヨーロッパで花びらを「好き」「きらい」と1枚ずつ引き抜いて占う、恋占いの花として親しまれてきたのが、このマーガレットです。これは花びらの数が奇数であることから「好き」で始めれば、必ず「好き」で終わるというもの。「きらい」で始めれば然りの答えが。

マリー・アントワネットの庭
ヴェルサイユ宮殿の離宮の一つで、マリー・アントワネットの私的な宮殿として有名な「プチトリアノン」はアントワネットの好みで、当時最新のスタイルであったイギリス式の庭園が作られました。
作り込まれたフランス式の庭園とは異なり、自然の景色を移したような庭にはマーガレットなどの素朴な草花が植えられていたそうです。ソフィア・コッポラが監督した映画『マリー・アントワネット』の中でも、このプチトリアノンの庭のシーンではマーガレットらしき植物が見て取れます。

マーガレットの名所
香川県三豊市にある『フラワーパーク浦島』では瀬戸内海を望む約1haのマーガレット畑が。見ごろの5月は一面が真っ白の花で埋め尽くされた絶景となり、SNS映えするスポットとして人気です。


花毎の花言葉・マーガレット「未来は謎でいい」

マーガレットの花占いは「好き」「きらい」の二択ですが、長い時間の中で選択肢はこの二つ以外にもあることに気付く時がきます。

占いは時に救いにもなりますが、良いことも忘れたいことも今は知らなくてもいいと思える、そんな心のゆとりが最もたいせつなことではないかと思うのです。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など