二十四節気の花絵

イラストレーターの水上多摩江さんが描いた季節の花に合わせた、
二十四節気のお話と花毎だけの花言葉。

第八十七話 大雪の花絵「クリスマスローズ」

2021.12.07

life

2021年12月7日から二十四節気は「大雪(たいせつ)」に

雪が盛んに降り出すころを表した言葉ですが、これは特定の場所を指すわけではなく、標高の高い山では雪が積もっていることから大雪とされる節気です。

さて、大雪を他の視点で見てみると、季節は仲冬に入り、二十四節気を更に細分化した七十二候は「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」といった冬の様子が表されています。

年中行事では12月8日は「事八日(ことようか)」にあたり、地域によって異なりますが、事の対象が神さまであれば、年神さまを迎える準備を始める「事始め」、農作業を指す場合は一年の作業の終わりである「事納め」となります。
続く13日は囲炉裏が家にあったころの名残りから「煤払い(すすはらい)」と呼ばれる年神さまを迎えるために行う大掃除があり、同日には「松迎え」という門松のための松や、おせち料理を作るための薪を山に採りに行く習慣があります。

年々、寒さの到来が遅く、日本の年中行事も忘れがちですが、それでも大雪の時季ともなると、冷え込みも気ぜわしさも同時にやってくるようです。


「クリスマスローズ」

□学名:Helleborus
□分類:キンポウゲ科 / クリスマスローズ属(ヘレボルス属)
□和名:寒芍薬 (カンシャクヤク)
□別名:ヘレボルス、 ヘレボラス
□英名:Hellebore、Christmas rose
□原産地: ヨーロッパ、地中海沿岸、西アジア

クリスマスの頃にバラに似た花を咲かせることから、この名が付いた花です。本来は「ヘレボルス・ニゲル」という品種を指しますが、日本の園芸市場では花色が豊富で早春から春に咲く「レンテンローズ」(学名:ヘレボルス・オリエンタリス)もクリスマスローズと総称されています。

ちなみにレンテンローズはLenten=四旬節(しじゅんせつ)のバラという意味。この四旬節はイースター*(復活祭)前の46日前に行われるキリスト教の行事ですので、おおよそ2月下旬ごろに咲くことを表した名前といえます。

日本には明治期に渡来し、和名である「寒芍薬」の名で茶室の花として趣味人に好まれていたそうです。うつむいて咲く姿や、きものを思わせる色の花は当時の人にも魅力的に映ったことでしょう。

*イースターは教派や年により日付が変動します。

原種と交配種

種から育てたクリスマスローズは同じ親の種でも花の色や形、柄に個体差があり、全て微妙に異なるという特徴がこの花の魅力ともいえます。
原種はおおよそ20種類。そこから交配が進んで、一重咲き、八重咲き、アネモネ咲き、などの咲き方の違いに加え、白、ピンク、ワインレッド、ベージュ、黄色、紫、黒などの花色の違い、更にスポット(点状の柄)や覆輪(縁に色が入る)などの要素が混ざり、無数の花姿が生まれています。

ちなみにクリスマスローズは株分けで増やすことはできても、挿し芽はできません。そのため、種から育てる以外の方法はありませんでしたが、メリクロン(生長点を培養する)技術の発達で、親の特徴を引き継いだメリクロン苗も多く出回るようになりました。


花毎の花言葉・クリスマスローズ「個性を慈しむ」

 

クリスマスローズの花言葉を調べてみると「中傷」「私の心配を救ってください」といった言葉が付けられています。
「中傷」は全草に(特に根茎)毒性があることに由来しており、一方の「私の心配を…」には古代ギリシャ・ローマ時代に精神薬のような使われた方をしていたことに由来するようです。
学名のヘレボルスにはギリシャ語で〈死に至らしめる食べもの〉という意味があり、こうした花言葉の裏付けになってはいますが、クリスマスローズの魅力を伝えているようには思い難い言葉です。

現代におけるこの花の魅力は種から育った花に同じ花がなく、自分好みの花を探す楽しみがあり、そして開花するまでどんな花が咲くかわからないということではないでしょうか。
更に日陰にも寒さにも強く、草花の少ない時季から花を咲かせる強健さ。

多様性が求められる時代にふさわしいこの花に「個性を慈しむ」という花言葉を託したいと思います。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 琵琶湖の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など