二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第十九話 大雪の花あしらい「アマリリス」  

2022.12.07

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2022年12月7日から二十四節気は大雪に

大雪とは、本格的な冬が始まる頃。「たいせつ」と読むこの季節は読んで字のごとく、たくさんの雪が降る頃という意味ですが、実際の雪のピークは年が明けてから。それでも凛とした空気の冷たさで冬がやって来たことを感じることができます。

寒さとともにいよいよ本格的になってきた街のホリデームードに触発されて、おしゃれをして出かけようか、お部屋をクリスマスデコレーションしようかと、わくわくする季節。

今日はそんなきらきらした季節にふさわしい、特別感を漂わせるゴージャスな花「アマリリス」をいけてみようと思います。
お部屋の中にスペシャルな雰囲気を取り入れて、気分を上げてみましょう。

シンプルにいけて凛とした雰囲気に

今回はクリスマスの特別感を色のコントラストで表現してみたくて、紅白のアマリリスを合わせました。鮮やかな朱赤の「レッドライオン」と白と赤の複色の「カリスマ」という品種です。

アマリリスは切り花の場合、葉はなく太い茎の先に4輪ほど花や蕾を付けた状態で花屋さんに出回ります。冬のイメージがある花ですが、旬は初夏や秋。この時期に出回る花はオランダなどから輸入されたものも多いです。

高級感あふれる見た目通り、高価な花です。大切に扱い、美しく凛とした姿にいけて長く楽しみましょう。

今回合わせたのは、赤い木肌が美しい「サンゴミズキ」。
アマリリスは何種類もの花と合わせるよりも、シンプルな組み合わせでより美しさが際立つように感じます。

アマリリスの美しさを存分に楽しむためにガラスの花器にいけて、まっすぐ力強い茎も楽しみましょう。
いけるときはあまり考えすぎず、いじらず花瓶に入れます。
ポイントは花どうしを近づけすぎないこと。ゆったりといけてみてください。
アマリリスの蕾はだんだんと咲いてくるので、その分のスペースも確保しておきましょう。

花瓶の形にもよりますが、先にサンゴミズキをいけて全体の大きさを決めてから、アマリリスを添える方がいけやすいと思います。
サンゴミズキの枝は固いので、アマリリスの花びらを傷つけないように注意してください。美しい分、傷ついた場所が目立ちます。傷ついてしまうとすごく残念な気分になりますので、ゆっくり慎重に(笑)

コニファーでクリスマス気分をプラスして

シンプルに美しいアマリリスの姿を楽しんだら、クリスマスのアイコンであるコニファーをプラスしてクリスマスらしいシーズナルな花あしらいに。

こちらは最初にご紹介したナチュラルなスタイルとは異なり、あえてアマリリスをブーケのようにぎゅっとまとめ、サンゴミズキと共にトピアリーのようなスタイルに仕上げています。

2枚目は金色に染めた柊を添えてスペシャル感を演出。お手持ちのオーナメントを付けても楽しめると思いますよ。

丈の長いアマリリスが手に入ったら、あまり茎をカットせずに大きなスケールで楽しんでみてください。
ツリーの代りにもなる主役級のオブジェができあがります。

花と茎の美しさをシンプルに楽しむ

すっと伸びた力強い茎と凛とした花をシンプルに楽しみたくて、ころんと丸い色ガラスの花瓶に傾けていけてみました。アマリリスは少ない本数でも、その佇まいから凛とした美しい雰囲気を漂わせてくれます。

花器の丸と茎の直線、そして赤と白のコントラストから引き締まるような緊張感を感じる花あしらいになりました。
クリスマスシーズンにもおすすめですが、お正月のようなフォーマルなシーンにもぴったりです。
年末年始に大活躍してくれそうですね。

グリーンを加えてナチュラルで優しい雰囲気に

同じ花、花器をつかってイメージチェンジ。
長さを変えたアマリリスに、シルバーグリーンの「ユーカリポポラス」を加えてナチュラルに仕上げました。

高低差を花でつけるときは、小さめで薄い花の色の花を高く、ボリュームがあり色の濃い花を低く配置するとバランスよく仕上がりますよ。

今回のようにふわりと優しいグリーンを加えるとナチュラルな印象になりますが、ツデーやドラセナなどトロピカルな印象のグリーンを合わせると高級感がありフォーマルな雰囲気に仕上がります。

ぜひ、飾る環境やお好みに合わせてコーディネートを楽しんでみてくださいね。

高低差をつけてリズミカルに

シンプルな円柱の花器に高低差を付けたアマリリスをいけた、シンプルでスタイリッシュなオブジェのような花あしらい。
花瓶どうしを近づけたり離したり、花の高さを変えたりして変化を楽しんでみましょう。
3つの花を使うときは三角形を意識するとバランスが美しく仕上がりますよ。

食卓では集めて華やかに、デスクやベットサイドにはお気に入りを選んで楽しむなど、一輪挿しならではのフレキシブルな花あしらいをお楽しみください。

オブジェを添えてクリスマス気分を演出

最後の一輪になってしまったら、花を茎の根本からカットしてガラスの器にいけて楽しみましょう。折れてしまった花でもお試しくださいね。

今回は透明なガラスの食器に一輪をいけてみました。水の透明感がアマリリスの美しさをいっそう際立たせてくれます。
トナカイのオブジェや柊を添えて飾れば、クリスマス気分を盛り上げてくれますよ。
花びらに水をつけないよう高さを調整すると、より長く花を楽しむことができます。
色々な角度から眺めて、アマリリスの美しい花を最後まで堪能してみてくださいね。

アマリリスのお手入れの3つのポイント

アマリリスを最後まで美しく楽しむための3つのポイントを紹介します。

アマリリスの茎はとても太く、中が空洞です。さらに裂けやすい性質があるので上手にカットできないと茎が縦に裂けてしまい、水に入れると茎の端からタコさんウィンナーのようにクルクルとめくれあがってしまいます。
これを避けるための裏技を紹介します。

まず、カットしたい茎の水を拭き取り、カットしたい位置にセロハンテープを一周と少し巻きます。次にセロハンテープの上からよく切れるハサミやナイフで茎をカットして、このまま水につけます。
こうすると、テープがめくれを防止するので茎の切り口は裂けず、テープも目立ちません。ガラスなど透明な花器を使う場合には特におすすめです。

次のポイントは花粉を取り除くことです。
花粉はなるべく早めに取り除きます。指が汚れないようにティッシュなどで包んで取りましょう。そのままにしておくと、花びらが花粉で汚れてしまい、せっかくの美しさが半減してしまう上に、服やインテリアを汚してしまう恐れもあります。

最後のポイントは枯れた花の取り除き方です。
変色したり、萎れて枯れてきた花は早めに茎の根本からハサミでカットして取り除きましょう。濃い色の花が枯れた場合、花を触るとインクのような液が出る場合があります。こちらも服やインテリアに着くと落ちにくいので注意しましょう。

とにかくアマリリスはお手入れもデリケート。
お姫様のように大切に扱ってくださいね。

スペシャルなホリデーシーズンを特別な花、アマリリスで楽しみましょう!

「アマリリス」の基本情報

□出回り時期:ほぼ一年中(最盛期は12月)
□香り:なし
□学名:Hippeastrum
□分類:ヒガンバナ科ヒッペアストラム属
□和名:アマリリス
□英名:Amaryllis
□原産地:南米
□花言葉:輝くほどの美しさ など


花毎でご紹介しているアマリリスのお話

水上多摩江さんが描く花の絵
二十四節気の花絵 第百十二話 小寒の花絵「アマリリス」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。