二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第二十三話 清明の花あしらい「デルフィニウム」

2023.04.05

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2023年4月5日から二十四節気は清明に

清明(せいめい)とは「清浄明潔(しょうじょうめいけつ)」という言葉を略したもので、全てが清らかで生き生きしている頃を表します。
その言葉の通り、心地よい風が吹き、さまざまな花が咲き進む、花粉症の方には少し辛い季節ですが、多くの方が快適に過ごせる季節の始まりなのではないでしょうか。

この頃、寒い冬を温かい東南アジアなどで過ごしていたツバメが、海を渡って日本にやってきます。
私の実家にも必ず毎年やって来て、元気に飛び回る姿を見せてくれます。小さな体で海を渡ってくる、かわいらしいこの渡り鳥の姿をみると本当に春がやってきたのだと実感します。

今回は和名に「燕」の字が入る「デルフィニウム(和名:大飛燕草)」をいけてみようと思います。
ツバメが飛び回る青空のような澄んだ水色が美しいデルフィニウムを春の暮らしに取り入れてみましょう。

枝ぶりを活かしてふんわりいける

今回は透明感のある水色が美しい、スプレー咲きの品種「プラチナブルー」を選びました。

ちなみに、デルフィニウムには大きく3つのタイプがあります。今回使用したスプレーデルフィニウムと呼ばれるシネンセ系、1本立ちデルフィニウムと呼ばれるエラータム系と、その中間のようなベラドンナ系です。
同じ花とは思えないような姿の違いもデルフィニウムの魅力ですが、最大の魅力はブルー系や紫系の豊富な花色だと思います。

今回使ったプラチナブルーは花つきがよく、茎もしっかりしているので、少ない本数でもボリューム良く活けることができるおすすめの品種です。

美しい水色の花を活かすために、グレーの色ガラスの花瓶を合わせて春霞のようなイメージでいけてみました。

スプレーデルフィニウムはたくさん枝分かれしているので、下の枝はカットします。中心の枝は長めに使ってスケールを出し、カットした短い枝で花瓶周りを囲むようにふんわりといけてブーケのように仕上げます。

この時、下の方についている大きめの葉は黄色く変色しやすいので、早めに取り除いておきましょう。

シルバーグレーの葉を添えて大人っぽく

デルフィニウムをシンプルに楽しんだ後は、グリーンをプラスして変化を楽しみましょう。

マットなシルバーグレーのユーカリを添えるといっきに大人っぽい雰囲気に変化します。
ユーカリのシルエットも楽しみたいので、デルフィニウムを少しだけ減らしてエアリーに仕上げましょう。

空気が通るようにふんわりといけると、蒸れずに花持ちも良くなりますよ。

染めたカスミソウをプラスして賑やかに

大人っぽい雰囲気を楽しんだ後は、わくわくするような賑やかな花あしらいを楽しみましょう。

加えたのは大人気の青色に染めた「カスミソウ」と、泡のようなふわふわの花穂を持つ、こちらも水色に染めた「アスチルベ」です。
2枚目はブルーに染めた「アイビー」を垂らしています。

まずデルフィニウムとユーカリで大体の大きさや形を決めたら、カスミソウをいけてみましょう。全体にふんわりいけても良いですが、このように三角形を意識して3点で配置するとバランスがとりやすいですよ。
アスチルベは隙間が空いてしまったところや、ポイントにしたい場所に添えて。アイビーは自然に垂れ下がるようにいけてみました。

今回使用した花材は顔の向きが分かりにくい物ばかりですが、あまり難しく考えなくても素敵に仕上がります。ぜひチャレンジしてみてくださいね。

ガラスの花器で花姿をまるごと楽しむ

枝分かれをしてたくさんの花をつけるデルフィニウム。
ガラスの花器を選べば、しなやかで繊細な茎や、細く切れ込んだ涼し気な葉も存分に楽しむことができます。
これからの季節にぴったりなすがすがしい花姿と水のハーモニーを楽しむ花あしらいです。

くるりとはわせた一輪を楽しむ

ボール状の器に、小さな花を一枝。器のカーブに合わせてしなやかな茎をぐるりとはわせてみました。

水色の花と水が涼し気で凛とした雰囲気を漂わせてくれます。
まるで水に閉じ込めたような爽快感のある花あしらいのできあがりです。

最後の数輪も楽しむ

小さなガラスの器に最後の一枝をいけてみました。
繊細に見えて驚くほど花持ちのよいスプレーデルフィニウム。全体が枯れてきてもきれいな一枝が残っていることも。
最後の最後まで花を楽しみ尽くしましょう!

「デルフィニウム」の基本情報

□出回り時期:通年
□香り:なし
□学名:Delphinium
□分類:キンポウゲ科ヒエンソウ属(デルフィニウム属)
□和名:大飛燕草(オオヒエンソウ)
□英名:Delphinium
□原産地:寒地のシベリアからモンゴル、中国
□花言葉:清明、高貴 など
※スプレーデルフィニウムの情報です

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。