二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第二十四話 立夏の花あしらい「カーネーション」

2023.05.06

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2023年5月6日から二十四節気は立夏に

立夏(りっか)とは暦の夏の始まり。澄み渡るような青空に心地よい風が吹いて、こいのぼりが気持ちよさそうに泳いでいる姿はこの季節の風物詩ですね。

私たち花屋業界で5月といえば、母の日です。
この時期は一年で一番多くの花が流通しますが、なかでも5月の花、そして母の日といえばカーネーションを思い浮かべる方も多いですよね。

小さな頃、お小遣いを握りしめてお母さんに贈るカーネーションを買いに行った思い出を持つ方も多いのではないでしょうか。
そういう意味では桜と同じようにカーネーションも日本人の記憶に深く結びついている特別な花だと思います。

今回はそんな母の日のアイコンでもある「カーネーション」をいけてみようと思います。
母の日だけではもったいない魅力あふれるカーネーションを、初夏の暮らしに取り入れてみましょう。

ざっくりナチュラルに投げ入れる

ひらひらと重なる花びらと華奢な茎から繊細な印象を受けるカーネーションですが、実は花屋で扱う花の中でも日持ちはトップクラス。美しさと丈夫さを兼ねそろえたとても優秀な花です。

多くの品種があり、形も色も豊富であることもカーネーションの魅力です。そんなカーネーションには2つのタイプがあります。1本に大きな花を1輪咲かせるスタンダードタイプと枝分かれして小さな花をたくさんつけるスプレータイプです。

今回はスタンダードタイプで細かいフリルのような花びらがかわいらしい「シャララシリーズ」から、淡いピンクに斑が入った「シャララ ピコ」と鮮やかなフューシャピンクの「シャララ ライト」を選びました。

水に浸かる余分な葉は手で取り除いて、いける直前に好みの長さにカットします。
いけるポイントは花瓶全体にふんわりいけること。風通しよくいけることでムレを防止して、より長持ちさせることができますよ。
いけたい場所が決まったら、花の顔をくるくる回しながらきれいに見える角度を探って、全体の形も整えましょう。

紫を加えて初夏を演出

カーネーションをシンプルに楽しんだ後は、彩りをプラスして変化を楽しみましょう。

紫の「サマースイトピー・ブルースプラッシュ」を加えて色の深みを出してみました。青みを帯びたピンクのカーネーションと響きあって、初夏のすがすがしい雰囲気を感じることができます。

少しだけカーネーションを減らして空気が通るようにふんわりといけると、蒸れずに花持ちも良くなりますよ。

花であふれる5月の庭のような華やぎを

5月は庭が一年で一番輝く、ガーデナーにとってもわくわくするような季節です。
まるで庭から摘んできたようなイメージで賑やかな花あしらいを楽しみましょう。

加えたのはウェーブしたピンクの花びらが特徴的な「スプレーバラ・シーアネモネ」と、泡のようなピンクのふわふわの花穂を持つ「アスチルベ」、可憐な白い小花の「八重咲マトリカリア・ダブルラテ」です。

まずカーネーションとサマースイートピーで大体の大きさや形を決めたら、スプレーバラをいけてみましょう。きれいに咲いていたので中央にいけてみました。特によく咲いている花や目立たせたい花は中央の目線が集まりやすい場所にいけると、より美しく仕上がると思います。
アスチルベとマトリカリアを隙間が空いてしまったところに添えて、形を整えましょう。

カーネーションは色々な花と合わせてもケンカしない、とても優秀な花です。
季節の花やお好みの花を合わせて、5月らしい花あしらいを楽しみましょう。

バスケットに入れてナチュラルに

今度はバスケットを合わせてカジュアルに仕上げてみました。
花をいけた花瓶ごとバスケットに入れただけの簡単な着せ替えです。すっぽり器が入るバスケットなどがあれば、お花を変えることなく手軽でがらりと印象が変わるのでおすすめですよ。

こうしたバスケット以外でも、ランドリーバスケットやキッチンバスケット、エコバックなども花瓶のカバーにすると楽しいアレンジが楽しめますので、お試しくださいね。

身近な道具を花器に見立てる

水切りに使うコランダーに水を張ったコップを入れて、短くカットしたカーネーションとアスチルベ、マトリカリア、グリーンのコロニラをいけてみました。
いつもの道具を花器に見立てて花あしらいを楽しんでみましょう。

室温が高くなりがちなキッチンでもカーネーションなら大丈夫。ただし火の近くは避けてあげてくださいね。

母の日にはサプライズでキッチンや食卓にカーネーションを飾ってお母様を驚かせてみませんか?

一輪挿しで花姿を楽しむ

ガラスの花瓶に2本をクロスさせていけてみました。
一輪挿しにいけると花だけでなく、シャープな葉や繊細な茎も楽しむことができます。

じっくりと観察してカーネーションの魅力を楽しんでみましょう。
顔を近づけるとほんのりと優しい香りも楽しむことができますよ。

最後まで花を楽しむ

カーネーションが咲き進んで元気がなくなってきたら、茎を短くカットして、ガラスのデザートカップにいけてみましょう。折れてしまった花にもおすすめですよ。

カットボードにのせて花びらを散らせば、まるでアイスクリームのデザートボードのようなスペシャルプレートのできあがりです!

食器も自由に組み合わせて、楽しく最後までカーネーションを楽しみつくしましょう。

「カーネーション」の基本情報

□出回り時期:通年(旬は4~6月)
□香り:あり
□学名:Dianthus caryophyllus
□分類:ナデシコ科 ナデシコ属(ダイアンサス属)
□和名:和蘭石竹(オランダセキチク)
□英名:Carnation
□原産地:南ヨーロッパ、西アジア
□花言葉:「無垢で深い愛」「女性の愛」など


花毎でご紹介しているカーネーションのお話

カーネーションの由来や色と香り
旬花百科  第三話 「カーネーション」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。