二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第二十七話 処暑の花あしらい「ケイトウ」

2023.08.23

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2023年8月23日から二十四節気は処暑に

処暑(しょしょ)とは、暑さのピークを越えた頃。朝夕感じる涼しさや、夕暮れに聞こえるヒグラシの声を聴くと、もう秋が始まっているのだと感じます。

今年はお盆前から台風が多いですが、例年、台風が多く日本にやってくるのもこの時期といわれています。
体も夏の疲れがどっと出てくる頃。気候が悪いときは家でゆったり花をいけて体調を整えましょう。

今回は秋の始まりにおすすめの「ケイトウ」をいけてみようと思います。
ベルベットのような不思議な質感と個性的なフォルムのケイトウは暑さにも強く、日持ちも良い花です。

初秋の暮らしにケイトウを取り入れて、一足早い秋の彩りを感じましょう。

すらりとした姿をいかしてスタイリッシュに

みなさんはケイトウと聞いて何をイメージしますか?
「鶏頭」の名前の通り、鶏のとさかのような個性的なイメージでしょうか。
それとも真夏の花壇でたくましく咲く、炎のような形の花のイメージでしょうか。

英語でも同じく「Cockscomb(雄鶏のトサカ)」と呼ばれ、学名のセロシアは「燃やした」を意味する言葉です。洋の東西を問わず、花なのにトサカや炎に見えてしまう不思議なフォルムをもつ個性的なケイトウをスタイリッシュにすっきりいけてみましょう。

ケイトウには「鶏冠(とさか)ケイトウ」「久留米ケイトウ」「房ケイトウ」「槍ケイトウ」「紐ケイトウ」などユニークでさまざまな形がありますが、今回はすっきりスタイリッシュにいけてみたくて、トサカケイトウの中でもすっきりと平らなアンティークピンクの石化(せっか)ケイトウを選んでみました。

ケイトウは花瓶に対して少し傾けていけてみましょう。この時意識するのは茎がぐちゃぐちゃにならないようにすらりとスマートにいけること。

茎の美しさを際立たせる事と、お手入れのしやすさから、葉あらかじめバランスを見て取り除いてしまいましょう。ケイトウだけをいける場合は花瓶の水の量は気持ち少な目にすると茎が傷みにくくなります。

茎がきれいに整ったら、今度は花をくるくるまわしてきれいに見える場所を探してみましょう。

秋草を添えて楽しむ

ススキのようなイネ科の植物をみると秋を感じます。
特に秋の夜風になびく姿は風流そのもの。

先ほどのケイトウにススキにも似た細かな花穂が涼やかに揺れる「パニカム」添えてみました。
たった一本だけでもがらりと雰囲気を変えてくれます。

ちなみに2023年の8月31日は最近よく耳にする「スーパームーン」で、しかもこの日は一年の中で満月が一番大きく見える日だそうです!
十五夜のお月見はまだ先ですが、秋の花を飾ってスーパームーン鑑賞を楽しんでみてはいかがでしょうか。

器を変えて風情を楽しむ

長いケイトウが手に入らない場合や、お手入れで短くなってきた時におすすめのシンプルな花あしらいです。
存在感のある器に2~3本のケイトウを短く切って投げ入れましょう。

器の力を借りることで、風情のある佇まいを楽しめます。

和をイメージして竹かごにいける

いつもは小物入れとして使っている竹かごにリネンのクロスを敷き、コップを入れ込んでケイトウをいけてみました。

秋はなぜか和風なものが恋しくなるので(私だけでしょうか?)、こういった和の趣がある花あしらいを飾りたくなります。

この竹かごいっぱいに、秋の恵みの松茸や栗やブドウが入っていたら…などと想像する、花より団子かもしれない私です。

彩りを加えて華やかに

シンプルに楽しんだ後はお好みの花を加えて華やかに。

今回は「夏の終わりと秋の始まりを意識した大人かわいいモダンな花」(長いテーマでごめんなさい笑)を意識して花をチョイスしてみました。

いける順番は、まず大きな「秋色アジサイ」をいけます。となりに黒っぽい葉の「ドラセナ パープルコンパクタ」をいけて全体のベースを作り、秋色アジサイと対極の位置にケイトウをいけます。中央には主役級の個性的な花「アンスリューム テラ」を花の向きを意識していけて、茶色がかったオレンジ色の「カンガルーポー」と「パニカム」でバランスを整えましょう。

いけ終わったら全体を見まわして、ひとつひとつの花の顔がよく見えるようにチェックしたら出来上がりです。
たくさんの種類を入れる場合は植物の持つ色のトーンや雰囲気を合わせるとうまくまとまると思いますよ。
さらに、テーマを作ると花を選びやすく、いけやすくなると思います。

器をかえて雰囲気をチェンジ!

前に紹介した花あしらいに槍ケイトウの「セルウェイホワイト」を加えて、鮮やかな色ガラスの花器と、竹籠にいけてみました。

器でがらりと印象が変わりますよね。
洋から和への早着替えのようで、とてもはっとする変化を見せてくれます。

ちょっぴり面倒な気持ちになる水替えのお手入れのタイミングで、こんな風に気分が変わる花あしらいを試してみると、楽しく花と向き合うことができます。これも花を最後まで味わい尽くす秘訣です。

一輪挿しで花姿を楽しむ

お手入れでケイトウが短くなってきたら一輪挿しを使って楽しみましょう。

個性的な花姿に負けないように、花瓶も個性的なものを合わせてみました。
カッティングボードにのせて、少しおめかしをしたケイトウのユニークな姿を楽しみましょう。

存在感のある花を楽しむ

ケイトウはとても丈夫で長持ちする花ですが、花はまだ元気なのに茎の途中から折れてしまう場合があります。

そんなときは茎を思い切り短くカットして、茎が見えない陶器のような花器にいけ、花の重さを器の淵で支えてあげましょう。

まだまだきれいに花を楽しむことができますよ。

ドライフラワーにして最後まで楽しむ

先ほどもお伝えしましたが花*はきれいなのに茎が枯れてしまう場合も。

そんな時はケイトウの花だけをカットして、お気に入りのお皿に入れてみましょう。
水は張らずに、このままで色や質感の変化を楽しみます。(霧吹きなども不要です)

不思議な形なので「これは何?」と聞かれる、素敵なオブジェになりますよ。
ぜひお試しくださいね。

*花のように色づいた部分は「花序(かじょ)」とよばれ、その根元には花びらが退化した小さな花がたくさん付いています。花に種ができていることも多いので観察してみると楽しいですよ!

スワッグにして楽しむ

ドライフラワーとしても楽しむことができるケイトウをスワッグにしてみました。
少しもったいないのですがドライフラワーにする場合はある程度きれいなうちにドライにする作業を行いましょう。

葉をなるべく取り除き、花が蒸れないようにゆとりをもって束ねたものを直射日光に当たらない風通しの良い場所に逆さにしてぶら下げておくと、一週間ほどで色鮮やかなケイトウのドライフラワーができあがります。

フレッシュな時とは違う渋めの色合いや風合いの差を楽しんでくださいね。

「ケイトウ」の基本情報

□出回り時期:7~11月
□香り:なし
□学名:Celosia argentea
□分類:ヒユ科 ケイトウ属(セロシア属)
□和名:鶏頭(けいとう)、鶏冠花(けいかんか)
□英名:Cockscomb
□原産地:インド、熱帯アジア
□花言葉:「おしゃれ」「色あせぬ恋」 など


花毎でご紹介しているケイトウのお話

水上多摩江さんが描く花の絵
二十四節気の花絵 第六十二話 処暑の花絵「ケイトウ」

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。
百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。
現在は広報担当としてリリースなどの社外発信を担当。