二十四節気の花あしらい

旬の花を最後の一輪まで楽しみつくしませんか?
気軽に季節を感じる「花あしらい」のテクニックをご紹介。

第三十五話 穀雨の花あしらい「アルストロメリア」

2024.04.19

life

日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。


2024年4月19日から二十四節気は穀雨に

穀雨(こくう)とは、穀物を潤す春雨が降るころを表した、春最後の節気です。
早いもので、次はもう夏の節気がやってきます。

4月も中旬になると夏日も珍しくなく、初夏の気分を感じることも。
そんな、春と夏の間をつなぐような穀雨に、フレッシュな印象の「アルストロメリア」をいけてみようと思います。

次の季節をイメージした花を飾って、ひと足早く部屋に初夏の雰囲気を取り入れましょう。

ボリューム感のある花姿を楽しむ

アルストロメリアは一年中出回る花ですが、4月から6月が最盛期。
1本に何輪も花が付くのでボリューム感があって、しかも日持ちのよいお得な花です。花びらの一部に縞模様(スポット)が入るタイプが多く、さまざまなパターンの花が存在しています。

そんな、たくさんのカラーバリエーションがあるアルストロメリアですが、今回選んだのは少し珍しい、小輪で段咲きの「パール」という品種で、スポットが無くその名の通り上品な白い花が特徴です。

すらりとした姿とすっきりした茎を活かしたくて、ガラスの花瓶に斜めにいけてみました。
たくさんの本数に見えますが、花は4本だけしか使っていません。
しかも、花の頭を揃えていけるだけで、丁寧に束ねたブーケのように見えるので、プロっぽい仕上がりに。

アルストロメリアだけでも素敵なのですが、今回は「アルストロメリア・バリエガータ」という、斑入りの美しい葉を楽しむ品種をパールと合わせてみました。
こんな風に少し葉を加えると、よりフレッシュな印象になりますので、いろいろな葉でお試しくださいね。

アルストロメリアはとても水あげのよい花ですが、より長持ちさせるためにも他の花と同じように水を替えるタイミングで少しずつ切り戻しましょう。
そして、お手入れで少し短くなってきたら、器を変えてみませんか?

ここではシリンダータイプの花瓶に変えてざっくりといけてみました。
アルストロメリアのように上部にボリュームがある花は、こうした口が広い器でもバランスが取りやすいです。
少し離れて全体を確認しながら長さを調節して、ベストなバランスを見つけましょう。花の長さに迷った時は、全体で見たときに花と器の高さが1対1程度の長さにするのもおすすめです。

他にもいけかえるタイミングで2枚目の写真のようにアルストロメリアだけにして、小さな花の美しさをじっくり楽しんでみるのも素敵です。

個性的な花に挑戦

珍しい「フリチラリア・インペリアリス」という、ヨウラクユリや王冠ユリとも呼ばれるユリの仲間の花を加えてみました。

小輪タイプのアルストロメリアは花が小さな分、まるで葉もののように個性的な花と合わせてもなじみます。
フリチラリア・インペリアリスは色も形も個性的なので、あえてアシメントリーにいけて、花の個性が活きるように目立たせました。
普段は手を出しにくい花も、組み合わせ次第で意外な発見があるかもしれません。

雰囲気を一瞬で変える

先ほどいけた、アルストロメリアとフリチラリア・インペリアリスを花瓶ごと竹かごに入れました。
たったこれだけでモダンな雰囲気から和の趣がある花あしらいに一気に変身です。
これは花のプロが水を使えない器にいけるテクニックのひとつ。
花あしらいの雰囲気を変えたいと思った時に、水の入った器が隠れるものであれば何でもOKです。身近なものを探して試してみると意外なものが相性ぴったりだったり。
でも、絶対に水に濡れたら困るものは避けてくださいね!

花の色あわせを楽しむ

更に「オンシジューム・エレナ」をプラス。エレナは斑がなく、黄色が淡いのが特徴のオンシジュームです。花あしらいに少し加えるだけでエアリーな雰囲気に。
このように何種類もの花を組み合わせる場合には、色数を少なくすると失敗が少なくなりますよ。

枝ものをプラスして大きく、華やかに

同じ花材を賑やかな柄のガラス花器にいけかえて、黄金の葉が美しい「コデマリ・オーレア」を加えました。
枝ものは1枝でも全体に動きが出て、ボリューム感がアップ。一本一本姿が違う、自然がつくり出した大胆な動きが魅力です。
ここでは、黄金葉のコデマリを使いましたが、この他にも新緑が美しくなる時季なので、お好みの枝を見つけてお試しくださいね。

2枚目の写真は先ほどと同じように、器ごと竹かごに入れています。
大き目の竹かごはボリューム感のある花と相性抜群。とても華やかで、和風洋風問わずに飾れる、おもてなしにぴったりの花あしらいです。

一本を楽しむ

アルストロメリアは一本に何輪も花が付いているので、たった一本でもブーケのような雰囲気が楽しめる花です。

今回選んだパールはすっきりとした雰囲気の花なので、控えめでありながら、個性的な色ガラスの器を合わせています。
シンプルな花をあしらう場合にこそ、個性的な器を選んで、器との組み合わせも楽しんでみてくださいね。

小分けにして楽しむ

放射状に付いている花を小分けにして、小さなガラス瓶にいけました。
そのまま飾るのもかわいらしいのですが、もし、ケーキスタンドがあれば、こんな風に小さな器にいけたアルストロメリアを集めてみると、ドレスアップした雰囲気が演出できます。
ここではケーキスタンドを使いましたが、トレーやお皿などにのせても素敵ですよ。

最後の一輪までも美しく

茎が少し浸かる程度の水を入れたグラスの中にすっぽり収まるように、一輪をいけてみましょう。とってもシンプルですが、まるで水中花のような花あしらいのできあがりです。
たくさんの花の中では気づかなかったアルストロメリアの美しさが発見できるかも。
アルストロメリアは日持ちがよい花なので、きれいな花が残っていることも多いと思います。ぜひ最後の一輪まで楽しみつくしてくださいね!

「アルストロメリア」の基本情報

□出回り時期:通年(旬は4月~6月)
□香り:なし(一部品種あり)
□学名:Alstroemeria
□分類:ユリズイセン科 ユリズイセン属(アルストロメリア属)
□和名:百合水仙(ユリズイセン)、インカの百合
□英名:Alstroemeria / Peruvian lily / Lily of the incas
□原産地:南アメリカ
□花言葉:「献身」「愛着」「幸福」「凛々しさ」など

谷中直子

第一園芸入社前から学生バイトで働く生粋の第一園芸人。百貨店系ショップでいわゆる花屋さんを数年経験後、ホテル店に移動しブライダル関係を十数年経験。店長職を経て本社勤務に。現在は広報としてリリースなどの社外発信を担当。

Text・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子