夢の花屋

第一園芸のトップデザイナーが、世界中の絶景や名画、自然現象や物質を花で見立てた、
この世でひとつだけの花をあなたに贈る、夢の花屋の開店です。

第十七話「ルビーに見立てる」

2023.07.14

gift

この世にある美しいものを花で見立てたら──
こんな難問に応えるのは、百戦錬磨のトップデザイナー。
そのままでも美しいものを掛け合わせて魅せる、夢の花屋の第十七話は「ルビー」に見立てたブーケです。手掛けるのはオランダ出身のフローリスト、シェラー・マース。
ここからは花屋の店先でオーダーした花の出来上がりを待つような気持ちでお楽しみください。

ルビーとは

7月の誕生石であり、結婚40周年を記念するルビーは、ダイヤモンド、サファイア、エメラルドと並ぶ世界四大宝石のひとつで、名前は「赤」を意味するラテン語「rubeus(ルベウス)」に由来すると言われています。
その美しさと希少性から宝石の女王とも呼ばれていますが、ダイヤモンドのカッティング技術が確立されるまでは、ルビーは世界各地で最高の宝石とされてきました。
天然ルビーの主な産地はアジアとアフリカですが、ミャンマーで採れる特に濃い赤色の石は「ピジョンブラッド」と呼ばれ、最高級とされています。

花に花言葉があるように宝石にもそれぞれ石言葉があり、ルビーは「情熱」「純愛」「勝利」など。赤い色には不滅の魂が宿るといわれ、不老不死や持ち主を災難や困難から守ると伝えられてきました。

シェラーが本作のために描いたブーケのデッサン


見立ての舞台裏

ルビーをイメージして用意された花々です。夏を感じる植物がたくさん!赤とグリーンのビビッドな組み合わせになりそうです。

いつでもブーケは小さな束づくりから。

今回は同じ種類の花をグルーピングして束ねていくタイプのブーケのようです。

艶やかな赤紫の胡蝶蘭が加わりました。

茶色の葉はシュスラン。ビロード状の葉と葉脈のコントラストが美しい、ジュエル・オーキッドとも呼ばれるランの一種。

くるりと丸まった植物はベアグラスを束ねたもの。

個性的なアマランサスを加えます。

麻ひもで縛って完成!


完成、ルビーに見立てたブーケ

ルビーに見立てたブーケが完成しました。

「ルビーが持つ『情熱』の意味を表現したウェディングブーケです。花や葉はそれぞれ形や質感が違うものを選び、見る角度によって表情が違って見えるように工夫しました」

「このブーケではアマランサスをシンボリックに使いました。アマランサスにはギリシア語でしおれないという意味があり、海外の花言葉では「永遠の生命」とも言われています。南米では重要な穀物なので『豊穣』といった意味も込めました」

「バラはギリシア神話でアドニスの生まれ変わりとされていて、毎年花を咲かせることから『命の再生』を意味すると言われています。更に、神話の中で赤いバラは愛と美の女神、アフロディテの象徴です」

「女神の艶やかな髪のように見えるのは、1本1本はとても細いベアグラスを丸めたものです。リースも同じ考え方ですが、ヨーロッパなどでは円形は永遠を意味しています。」

「胡蝶蘭の花言葉は日本では『幸福が飛んで来る』ですし、英語圏では”Love”や”Beauty”です。たくさん加えたカーネーションは” fascination”(魅力)や”Love”の意味があります」

今回の花材:バラ(ルビーレッド、ブラックビューティー)、カーネーション(ノビオドルチェネロ)、コチョウラン(チェリー)、アマランサス、ダイアンサス(テマリソウ)、ヒペリカム、アジサイ、ツワブキ、アンスリウム(リーフ)、レモンリーフ、(以下3点写真外)ベアグラス、シュスラン、ハラン

7月の誕生石「ルビー」に見立てたブーケはいかがでしたでしょうか。
シェラーは石の特徴や魅力に加え、夏の季節感とそれぞれの植物が持つ花の由来や花言葉を考えながら花を組み合わせて、オリジナリティ溢れるデザインに仕上げました。まさに夏のウェディングにぴったりな、情熱的でロマンティックなブーケです。


「夢の花屋」ではトップデザイナーならではの、鋭い観察眼や丁寧な仕事が形になる様子まで含めて、お伝えしていきたいと思っております。
こんな見立てが見てみたい…というご希望がございましたら、ぜひメッセージフォームからお便りをお寄せください。

第十八話予告
次回は新井光史が担当する夢の花屋。8月18日(金)午前7時に開店予定です。

Gérard Maas シェラー・マース

オランダ出身。STOAS University of Applied Sciences(農業分野での教員を育成する高等専門大学)に進学し、国家ライセンスを取得。祖国オランダをはじめ、ベルギー、フランスで経験をつんだ後、1994年にオランダスタイルのフラワーデザイン学校の講師として招致され来日し、以後5年にわたり教鞭をとる。2003年に再来日。翌年、日本で行われたダニエル・オストのインスタレーションをきっかけに第一園芸に入社。