夢の花屋

第一園芸のトップデザイナーが、世界中の絶景や名画、自然現象や物質を花で見立てた、
この世でひとつだけの花をあなたに贈る、夢の花屋の開店です。

第二十八話「セドナのボルテックスに見立てる」

2024.10.01

gift

この世にある美しいものを花に見立てたら──
こんな難問に応えるのは、百戦錬磨のトップデザイナー。そのままでも美しいものを掛け合わせて魅せるのが夢の花屋です。
第二十八話は「セドナのボルテックス」に見立てたブーケ。手掛けるのは第一園芸を代表するデザイナーのひとりである、志村紀子。
ここからは花屋の店先でオーダーした花の出来上がりを待つような気持ちでお楽しみください。

セドナにある世界4大ボルテックスのひとつ「カセドラル ロック」

セドナとボルテックス

アメリカ南西部のアリゾナ州中北部に位置。州都フェニックスの空港から車で2時間半ほどの距離にある、赤い岩山に囲まれた約50平方キロメートルの小さな街です。
砂漠に囲まれた場所ですが、はっきりとした四季があり、緑豊かな美しい街としても知られています。

地質学的な歴史は古く、3億5千万年前までさかのぼるとされ、有史以前に現在のセドナ周辺に人間が居住し始めたのは紀元前10千年紀といわれています。
また、セドナはネイティブアメリカンと深い関わりのある場所で、儀式を執り行うための聖なる地として崇められています。

近年では地球のパワーが渦巻き、エネルギーを強く感じられる「ボルテックス(Vortex)」がいくつもあることから、世界有数のパワースポットとして世界中にその名が知られるようになりました。


見立ての舞台裏

前回のメキシコとは打って変わって、乾いた大地を思わせる、ユニークな植物がたくさん用意されました。

今回は「ニシキギ」で作ったブーケフレームを使ってブーケを組み立てていきます。

松の葉のような「グレビレア ヨベル」や、表はグリーンで裏がブラウンゴールドの不思議な葉「グレビレア ゴールド」など、珍しい植物が次々と加わります。

志村が手にしているのは「シルバーブルニア」。まるで実のような丸い部分が花です。

オレンジの房は「アマランサス ホットビスケット」

紅茶のような花弁が特徴の新品種「ヒマワリ ダージリン」が加わります。

たくさんの植物が入ったブーケがまもなく完成です。


完成、セドナのボルテックスに見立てたブーケ

セドナのボルテックスに見立てたブーケが完成しました。

「今回はずっと憧れているセドナのイメージでブーケを作りました。褐色の岩や乾いた大地を表現したくて、ネイティブフラワーを中心とした花材を使っています。このままドライフラワーにしても素敵な花ばかりです」

「ターコイズをイメージして、青く染めた『ワックスフラワー』を加えました。ネイティブアメリカンを象徴する石ですし、セドナの赤い岩石に本当によく似合う色だと思うんです」

真上から見たブーケの姿です。うねる石化柳は大地から湧き上がるエネルギーのようです。

「ブーケの上にはシッサス オバータというブドウ科の植物のツルをのせました。乾いた風のイメージです」

自然の中に持ち出してみました。生命力に満ち溢れるようなブーケです。

今回の花材:グレビレア(ヨベル、グレビレア ゴールド)、石化柳、ネベリア(クラスタースター)、シルバーブルニア、ワックスフラワー(ティントブルー)、シッサス オバータ、カレックス(モーニングスター)、ヒマワリ(ダージリン)、ドライアンドラ(フォルモーサ)、エミューファン、細葉マウンテンミント、アマランサス(ホットビスケット)、クロヒエ(チョコラータ)など

志村の名所に見立てたシリーズ第四弾、セドナのボルテックスに見立てたブーケはいかがでしたでしょうか。
セドナはパワースポットに興味がある方でないと、ご存知ない場所かもしれませんが、不思議な赤い岩の山は有名なテーマパークにあるジェットコースターのモデルともいわれています。
それはともあれ、セドナは志村がいつかは行ってみたいパワースポット、というところからこのテーマが決まりました。

パワースポットについては興味の有無があるかとは思いますが、セドナの植物について調べを進めるうちに、ボルテックス(ラテン語で「渦」を意味していて、セドナでは磁場が強い場所がボルテックスと呼ばれています)の近くには「ねじれた木」が多くなるとか。
磁場の力という説や、鉄分を多く含んだ赤土によるという説など所説ありますが、本当の理由ははっきりしません。このブーケでは、赤岩や大地をイメージした花のかたまりから、まるでエネルギーを放出するように見える石化柳がその役を担っているようです。

そして、今回はいつも以上にたくさんの珍しい花材が使われています。どれもが一筋縄ではいかない個性的な姿の植物ばかり。それらをさらりとまとめあげ、洗練された力強さのあるブーケに仕立てた志村の力量に感服した回でした。


「夢の花屋」ではトップデザイナーならではの、鋭い観察眼や丁寧な仕事が形になる様子まで含めて、お伝えしていきたいと思っております。
こんな見立てが見てみたい…というご希望がございましたら、ぜひメッセージフォームからお便りをお寄せください。

第二十九話予告
次回は新井光史が登場。ある日本画に見立てます。11月1日(金)午前7時に開店予定です!

志村紀子 Noriko Shimura

東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。

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