第三十話「ニューヨークのクリスマスに見立てる」
2024.12.01
贈gift
この世にある美しいものを花に見立てたら──
こんな難問に応えるのは、百戦錬磨のトップデザイナー。そのままでも美しいものを掛け合わせて魅せるのが夢の花屋です。
第三十話は「ニューヨークのクリスマス」に見立てたアレンジメント。手掛けるのは第一園芸を代表するデザイナーのひとりである、志村紀子。
ここからは花屋の店先でオーダーした花の出来上がりを待つような気持ちでお楽しみください。
ニューヨークのクリスマス
ニューヨークのクリスマスは独創的なイルミネーション、巨大なツリー、ユニークなウィンドウディスプレイなどで街中が幻想的な雰囲気に包まれるときです。
特に象徴的なクリスマスの装飾はロックフェラーセンターの巨大なクリスマスツリーで、1933年から毎年11月下旬から12月上旬に点灯式が行われ、ニューヨークのクリスマスシーズンの幕が開きます。
また、ニューヨークは青森県と緯度がほぼ同じということもあり、12月の平均気温は0度前後と、寒さが厳しく、まれにホワイトクリスマスになることも。
見立ての舞台裏
これまで制作してきたカラフルでビビッドな花材とは打って変わって、今回は白がテーマ。
大きなアレンジメントということもあって、事前にアジサイを挿したベースが準備されていました。
アジサイを積み上げたベースに白バラの「ブルゴーニュ」を次々と挿していきます。
志村が手にしているのは「マッシュルームガム」というユーカリの実を白く塗ったもの。
よく見ると、小さな実がキノコ型をしていることからこの名が付いたとか。
虹色に輝くオーナメントボールも花の間に加えます。
小さなバラは「グリーンアイス」。平たく咲く、八重咲きのスプレータイプのバラです。
シルバーに塗られた糸のような枝は、なんとアプライトという「アスパラガス」の一種。
今回のアレンジメントで白以外に使う唯一の色、深紅の大輪のバラ「サムライ」。花を開きつつ、花弁を折りたたんでいきます。
クリスマスツリーの最上部に付けるトップスターのように、先ほどの赤いバラを挿します。
最後に極細のワイヤーで白い羽をひとつずつ取り付けていきます。
完成、ニューヨークのクリスマスに見立てたアレンジメント
ニューヨークのクリスマスに見立てたアレンジメントが完成しました。
「花で作ったクリスマスツリーです。白とゴールドやシルバーを組み合わせた、豪華で洗練されたデコレーションがニューヨークならではのクリスマスというイメージだったので、今回は色を絞ったデザインで考えました」
「クリスマスツリーには必ずと言っていいほど付けるトップスターの代わりと、全体のアクセントとして真っ赤なバラを加えました。白の中に少しの赤が入ると、とってもドラマティックですし、縁起もよく見えますので(笑)」
白い部分をアップで見てみると、とても表情豊か。写真でははっきり見えませんが、ごく小さなライトも加えられています。
「足元もドラマティックにしたくて、ツリーから零れ落ちたように、オーナメントボールと白い羽を飾りました」
シルバーに塗られたアスパラガスの細い枝が氷柱のように足元へ伸びて、冬の景色を見ているような気分に。
今回の花材:胡蝶蘭、バラ(サムライ、ブルゴーニュ、グリーンアイス)、ユーカリの実(マッシュルームガム(塗り)など)、アジサイ、チューリップ(スーパーパーロット)、アスパラガス(アプライト(塗り))、ダイヤモンドリリー(写真外)
志村の場所に見立てたシリーズ第四弾はニューヨークに。
当初はカラフルなクリスマスをイメージしていたそうですが、今までとは全く違うイメージでデザインしたくなったということで、白が基調のデザインが完成しました。
まず、仕上がった作品を見て思ったのは、アッパー・イーストサイドのホテルや、あのドラマに出てくるシャーロットの家に置いてありそうな既視感でした。
白だけなのにとてもリッチ。そして、よく見てみると、使われている花の贅沢なこと…
白い花は地味に捉えられることもありますが、見せ方次第ではとても華やかなのです。
今回のように、何種類もの白い花を組み合わせてみると、白の中にさまざまな色があることがよくわかります。クリーム色に近かったり、うっすら花の一部がグリーンがかっていたりと、それぞれの花の表情がより伝わるのは他の色にはない効果かもしれません。
ちょっと特別な気分になるクリスマスの季節に、こんな素敵な花のクリスマスツリーが置かれていたら…と、夢心地にさせてくれる作品でした。
「夢の花屋」ではトップデザイナーならではの、鋭い観察眼や丁寧な仕事が形になる様子まで含めて、お伝えしていきたいと思っております。
こんな見立てが見てみたい…というご希望がございましたら、ぜひメッセージフォームからお便りをお寄せください。
第三十一話予告
次回は新井光史が登場。ある名画に見立てます。新春1月1日(水)午前7時に開店予定です!
志村紀子 Noriko Shimura
東京生まれ。国内を代表するホテル、外資系大手ラグジュアリーホテルのウェディングやパーティー装花に携わり、帝国ホテルプラザ店で活躍。現在は第一園芸を代表するデザイナーとして、Noriko Shimuraブランドを展開。他にも社内スタッフ教育部門の講師、対外的なワークショップ講師、各種商品提案、空間装飾のデザインなどを担当している。
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