庭の中の人

ガーデナーや研究者、植物愛あふれる人たちが伝える、庭にまつわるインサイドストーリー。

第十一話「ロープワーク」

2021.04.20

study

結び方の中で一番簡単な「止め結び」

新型コロナウイルスによる自粛生活が続き、公園やマンションの敷地で子供と遊ぶ機会が増えました。かれこれ1年以上このような生活が続いているので、自宅にはボール、一輪車、ブレイブボードと、子供の外遊び用遊具がどんどん増えていきます。わたしも運動しない生活が続くので、先日、ふと家族で長なわとびがやりたい!と思い立ち、近所のホームセンターへ。ロープやホース、チェーンなどの資材が量り売りで買えるので、いろいろと物色したのち、摩擦でちぎれないようにと、太さ1.6㎜の綿ロープを5メートル分購入してきました。

さっそく長なわとびのように回してみると1.6㎜のロープというのは意外と重たいんですね。ジャンプに失敗して引っかかると、足が持って行かれてしまうのです。もう少し細いロープにすればよかったかなと思いつつも、近所の子供たちに人気の遊びとなりました。週末は「コロナ太り」に負けないようにロープを回したり、ジャンプしたり、筋トレだと思いながら頑張る日々です。

さて、使い終わって収納するときに、5メートルの太いロープを束ねるのが意外とむずかしかったりします。適当な長さで何度か折り返した縄を「止め結び」するのですが、どうしても幅をとってしまうのです。「なんかスマートじゃない!こんなとき、庭師の人たちはどうやって束ねていたっけ」と思わずインターネットでロープの結び方を調べてしまいました。庭師もよくロープを使います。木に登るときに使う安全帯をはじめ、トラックの荷台に乗せた荷物が崩れないように縛るロープも、使わないときは素敵に束ねてありました。決して絡まった状態で放置されているのを見たことがありませんでした。

クライミングロープに身を任せながら樹木を調べる樹木医さん

また、結び方も特筆すべきことがらです。日本庭園にある生垣などもすべて庭師が結びます。よく使われるのが「棕櫚縄(しゅろなわ)」です。シュロの木の繊維から作られた縄で、赤色と黒色があります。結び方やその文化も地域によってさまざまな種類があり奥が深いのですが、それぞれの方法がとても理にかなっていて感動します。

簡単に結べるのに強度がある結び方、がっちり縛って解けにくいもの、華やかな結び方やお正月などのおめでたいときに使う飾り結びなど、用途に合わせて技法を使い分けます。

黒シュロ縄で「飾りいぼ結び」が施された竹垣

支柱などを結束するのによく使う「男結び」は強度があり解けにくい

最近はキャンプやアウトドアが流行っていることもあり、ロープの結び方、カッコよく言えば「ロープワーク」も注目されるようになってきたみたいですね。確かにハンモックやテントのロープを自在に結んだり、きれいに薪を束ねたり、アウトドアでロープを手際よく扱える人がいたら、かっこいいし、注目されること間違いなしです。ロープというシンプルな道具ゆえ、その使い方を知ればしるほど奥が深く、まさに人間の叡智の結晶です。

そんなことを言っておきながら、たびたび結び方を教えてもらったのにすぐに忘れてしまう残念な私…日常生活でロープを使う機会がないとやっぱり覚えられません。いまこそ、5メートルの長なわとびをスマートに結べる方法を身につけたいと思います。

はつやま さちこ

高校卒業後、英国へ留学。ロンドン郊外にあるOaklands CollegeのFloristry学科に在籍し、イギリスの国家資格を取得。2008年第一園芸株式会社に入社。ネット事業部を経て緑化事業部へ。各国大使館などを担当していたガーデナー。
現在は子育てのため一旦、退職して家庭生活を満喫中。
好きなことは食べ歩き、無計画旅行。昆虫食推進派。