庭の中の人

ガーデナーや研究者、植物愛あふれる人たちが伝える、庭にまつわるインサイドストーリー。

第十七話「どんぐり」

2021.11.22

study

公園内の木を剪定する時には一段と気を付けなければいけないことがあります。
それは子どもです。
子どもたちは時に予測不可能な行動をするので、特に安全管理には気を付けながら作業をします。作業する樹木の周辺をバーなどで囲み、木の下には必ず安全確認を行う人や、落ちてきた枝や葉で道をふさがないように片付けをする人がいます。歩行者や遊んでいる子どもが近づいてきたら、早めに作業を止める指示を出します。

ちょうどその日は公園内にある樹木の伐採作業の日でした。事務所のすぐ裏の公園が現場だったため、様子を見に行ってみると、なんと庭師のお兄さんたちが、子どもたち(しかもインターナショナルスクールのキッズたち!)に囲まれているではありませんか。
「おじちゃん、ぼくにもとって」「わたしもそこにある実がほしい」と、なにやら英語でわいわいと楽しそうです。
後で聞いたところ、切っていた樹木のまわりに子どもたちが遊びに来てしまったため、一旦作業を止めて様子をみていた際、たまたま近くにいた子にどんぐりを採ってあげたら、みんなが取り囲むように、「ぼくも、わたしも取ってちょうだいコール」がとまらなくなってしまったのだとか。

庭師×子どもというあまり見慣れない組合せ。
真摯にどんぐりを採ってあげていたのがとても微笑ましく、印象的でした。最後にキッズからのお礼と、「どんぐりのおじちゃん」という名誉ある称号をいただき、やっぱり子どもたちの行動は予測不能だわ、と思いながら陰でにやけていたのでした。

 

今年、近くの公園には、足の踏み場がないほど大量のどんぐりが落ちています。
踏みつけるのが可哀そうなので、摺り足で進まなければならないほどです。
しかもその公園は、よく見る「マテバシイ」や「シラカシ」などの細長いどんぐりではなく、近所ではちょっと珍しい「クヌギ」の実がたくさん落ちているのです。
「クヌギ」の実は丸くてモジャモジャの殻斗*(かくと)のあるどんぐり。しかも今年はぷっくりと大きな実が豊作なのです。
多いときは、1シーズンに1本の木から2~3万個のどんぐりが実るのだとか。

*殻斗(かくと)とは:
ナラ・クヌギ・シイ・クリなどブナ科植物の、実の一部または全部を覆う椀状・まり状のもの。

画面一番上より時計回りに「マテバシイ」「アラカシ」「シラカシ」「ウバメガシ」

ちなみにどんぐりは1年で育つものと、2年にかけて育つものがあるんですよ。
「シラカシ」や「アラカシ」などは1年成(成=せい)、「クヌギ」や「マテバシイ」などのどんぐりは2年成。
毎年当たり前に落ちているどんぐりですが、2年もかかって実になっているなんて、子どものころは知りませんでした。

 

ウバメガシの実も二年かけて育ちます

わたしは昔からどんぐりが大好きで、拾ってきてはどんぐりゴマにしたり、中身をくりぬいて笛にしたり。おままごとにもよく使いました。
ころんと丸い形にかわいい帽子。
あのフォルムがたまらなく好きで、大人になってからもどんぐりをみると可愛いなあと、思わずひろってしまいます。

 

最近では趣味でどんぐりに絵を描いて遊んでいます。
もうすぐクリスマスなので、サンタクロースとツリーを描いてみました。子どもも大人も魅了される、どんぐりです。

 

はつやま さちこ

高校卒業後、英国へ留学。ロンドン郊外にあるOaklands CollegeのFloristry学科に在籍し、イギリスの国家資格を取得。2008年第一園芸株式会社に入社。ネット事業部を経て緑化事業部へ。各国大使館などを担当していたガーデナー。
現在は子育てのため一旦、退職して家庭生活を満喫中。
好きなことは食べ歩き、無計画旅行。昆虫食推進派。