庭の中の人

ガーデナーや研究者、植物愛あふれる人たちが伝える、庭にまつわるインサイドストーリー。

第十六話「寒い日」

2022.01.20

study

外で仕事をするときは、夏の暑さもさることながら、冬の寒さがかなり身に応えます。
朝、作業着に着替える時、欠かさずに使っていたのは使い捨てカイロ。
おなかに一枚、背中に二枚、靴の中にそれぞれ一枚ずつ。ズボンの下にはスパッツを履いて、ズボンの上からさらにラップスカートをまく。靴下は二重。あったか肌着の上にシャツやセーターを着こみ、作業ジャンパーを羽織り、ニットの帽子をかぶったら「着ぶくれ玉ねぎガーデナー」の出来上がりです。
これでなんとか寒さを凌いでいましたが、それでも寒いときは寒い。芯から冷えると手がかじかんで、その日の報告書に字が書けないくらいです。

庭師はもっと過酷です。身動きが取れなくなるので着こみすることができない上に、木に登る際は足袋を履くので普通の靴下を二重に履くことも、足用カイロを使うこともかなり難しく、みんな寒さに耐え忍びながら木に登っておりました。
特に松の剪定を行うのは12月~2月の厳寒期。身を切るような冷たい風が吹く中、松の木の上で手が凍りそうになるのを我慢して細かな手入れを行わなければなりません。
こうした毎年の過酷な作業があって、松の景観が保たれます。

まるでシャッターを長く開いて撮影した天体写真のような、水面の枯れ松葉

冬はかぶり物にも特徴が現れます。夏は汗をかくので、手ぬぐいやタオルを頭に巻く人が多かったのですが、冬になると防寒のために、おのおのセンスが光る帽子をかぶり、一気に頭上がカラフルに。
一年中、手ぬぐいをかぶっている人もいましたが、キャップや、ニット帽、中にはレゲエ帽をかぶる人も。冬の花壇を彩るビオラのごとく、個性豊かな帽子が寒空に咲いていました。

そして、お茶の時間になると、温かい飲み物で一息つきます。
新年には現場で作った甘酒が配られるなんてことも。オフィスで仕事をしているとまず出会わない光景ですよね。何とも風情がある、季節感を大切にする仕事ならではの習慣です。
甘酒以外にも、ガーデナーには自動販売機で売っている缶のお汁粉が人気。寒さと疲れを癒すために冬場に大量消費する人も。
私は残念ながらその甘党境地まで達することはできませんでしたが、さまざまなメーカー各社からお汁粉缶が販売されているところをみると、お汁粉好きの人をはじめ、外仕事の方にも人気の商品なんだと思います。

詰所では、ほかにもハンドドリップで入れたコーヒー片手に休む人や、スープや肉まんを温めて食べる人、みんながお茶の時間に暖を取りながら至福のひと時を過ごします。
でも、詰所のない現場では自動販売機で購入した温かい飲み物が頼りです。手を温めながら飲む甘い缶コーヒーやお汁粉をお供に談笑していると、次第に体力も気力も回復してきます。温まるって大事!
そして冷え切った一日の締めくくりには、温かなお風呂が格別なのでした。

 

はつやま さちこ

高校卒業後、英国へ留学。ロンドン郊外にあるOaklands CollegeのFloristry学科に在籍し、イギリスの国家資格を取得。2008年第一園芸株式会社に入社。ネット事業部を経て緑化事業部へ。各国大使館などを担当していたガーデナー。
現在は子育てのため一旦、退職して家庭生活を満喫中。
好きなことは食べ歩き、無計画旅行。昆虫食推進派。